「名前ちゃん! 今日うちにご飯食べにこない?」
 学校が終わって、バイトも終わって、さぁ帰ろうと思っていたら、千石さんに捕まりました。
「えっ今からですか?」
「うん♪ だめかな?」
 出ました! 千石スマイル!
 この笑顔を向けられると嫌とは言えなくなってしまう。千石さん可愛すぎるんだもん。とてもうちの親と同じ世代だとは思えないよ。
「い、行きますともっ」
 気づいたら口から出ていた。
「よかった、こないだ話した時からいつにしようか狙ってたのよね、うふ」
 ……本当に可愛い。
 て、ことで千石さん家に到着した。綺麗な一軒家で、なんかぽいなー。花壇とかあるし、さりげなく野菜とか育てちゃってるし、流石です。
「まぁゆっくりしてって」
 リビングに通されました。やっぱり飾ってある絵とか人形とか全部が千石さんっぽい。
「お邪魔します」
「堅苦しくしなくても、大丈夫よ。パパは今日帰り遅いし、息子もまだ帰ってないはずだから」
 そっそうじゃん! 千石さん家って息子さんいるんだよね、しかも同い年で、山吹高校に通ってる……。ちょっと気まずいかも。でも、まだ帰ってないみたいだし、ひとまず安心。
「で、名前ちゃん、なにかあった?」
 淹れてもらった紅茶を飲んでいると、千石さんが切り出した。
 気づかれてたんだ。私の様子が変なこと。
 今までも千石さんは何かあるとすぐに気づいてくれた。私は普通にしてるつもりでも、千石さんにはバレバレなのだ。
「あは、やっぱ分かっちゃいます?」
 だから私も千石さんには正直に話すようにしている。
「分かるわよ! 名前ちゃんの事だもの」
 千石さんの笑顔は本当に素敵。あったかい。
「実は……」
「ただいいまー!!」
 なにやら元気な声が玄関から聞こえてきた。
「もう、お邪魔なのが帰ってきちゃったみたいね」
 千石さん、なにげ酷いな。
「母さん? 帰ってないの?」
 息子さん? がリビングに入ってきた。
 流石、千石さん息子さんというか、何というか……。明るいの髪の毛がとてもよく似合っている明るそうな男の子だ。
「名前ちゃん、これがうちのちゃらんぽらん息子の清純よ」
「ひどいよ、母ちゃん、ちゃらんぽらんだなんてさ。これ以上いい息子が何処にいるって言うのさ!」
 確かに……ちょっとちゃらんぽらんかもしれない。
「だまんなさい、清純。で、こっちは私のバイト仲間の苗字名前ちゃんよ」
 千石さんがなんかさっきからちょっと黒いような気がするけど気にしないことにしましょう。
「お邪魔してます」
「あっ君が名前ちゃん! 母さんからよく話は聞いてるよー」
 えっ千石さん、どんな話してるんだろ。
「でも、本当に母さんの言ってた通り可愛い子だね」
「えっ」
 可愛いなんて言われたのいつぶりって感じだよ。しかも男の子に。
「こらっ清純! 名前ちゃん固まっちゃったじゃないの、まったく。可愛いからってすぐに攻めすぎよ」
 いやいや、千石さんそれ追い打ちかけてますから……。
「とにかく、清純はお風呂入っちゃいなさい。名前ちゃんも夕飯待ってるんだから」
「はいはーい、わかりましたよー」
 息子さんは忙しなく去って行った。
「で、さっきの続きは?」
 息子さんが去って行くのを確認すると千石さんが言った。
 ありがたいな。私の為にいったん追い出してくれたんだろな。
 ちゃんと話してみよう。今の気持ちを。
「実は、今日学校で忍足君のことをほかの人から聞いたんですけど、そのなんか遠いなって……思って」
「……」
 千石さんは黙って私の話を聞いてくれている。
「こないだ遊んだりして、友達だと私は思ってたんですけど、よくよく考えれば私何も知らなかったんです」
 そう、友達だなんて言えなかったんだ、乾君に聞かれた時に。
「いいじゃない」
 千石さんが言い切った。
「最初から友達なんてありえないもの。友達ってなるものなのよ?」
「えっ」
「名前ちゃんは本人から聞きたかったんだよね、全部。でも他の人から聞いちゃって遠く感じちゃった。でも、それって仕方ないじゃない?」
「……」
「だってまだ、知り合ったばかりでしょ? これからよ、これから! 別に自分のこと隠すつもりなんてなかったと思うな、彼」
 千石さんはそうでしょ? と私に同意を求めてきた。
 確かにそうかもしれない。話してくれなかったけど、私から聞いた訳でもないし。
 いきなり凄い情報を聞かされて圧倒されちゃったんだな、私。
「はい、これからです」
 はっきりと私は答えることができた。
 その後、息子さんがお風呂から上がって、一緒に夕飯を食べた。
 千石さんもいい人だけど、息子さんもいい人だった。話しやすいし、千石さんそっくり。
 話してくうちに、お互いに名前で呼び合うようになっていた。最初はちょっと抵抗があったんだけど、千石じゃ母さんと被るでしょ? と押し切られてしまったのだ。
 そして、私はまた一緒に食事する約束をして千石さん家を後にした。


 忍足君、こんど会ったらいっぱい聞きたい事があるよ。それで、友達になってほしい。