貴方と私をつなぐ赤い糸

本日は、日本では女の子が心躍るバレンタインデーと言うイベントがある。
昔は、製菓会社の売り上げの為にイベント化されたとか何とか。
征陸さんに聞いたイベントだったりする。
まさか、イベントを気にしない私が作ってるだなんて思いもしないんだろうな。
せっせと作った甘さ控えめのフォンダンショコラをオーブンに入れる。
温めた時に中のチョコレートが溶けるように、そんな願いを込めて焼きあがったフォンダンショコラを冷ます。
お菓子の他にも、去年には渡せなかった誕生日プレゼントを紙袋に入れる。
当日には用意出来ないし、仕事も忙しいしで苛立っていたけど一番苛立ったのは自分の立場
潜在犯ながら執行官になれた事はラッキーだと思うけど、時として潜在犯と言う立場は邪魔だ。
欲しい物に対して中々許可が下りない事に朱ちゃんに相談した。
朱ちゃんは優しいから私が頼んだ物を買ってくれて、私にも対となるそれをくれた。
私の髪で揺れるそれは、霜月ちゃんにはいい顔をされなかったけど志恩や弥生は褒めてくれた。
きっと、征陸さんや狡噛、縢も褒めてくれる。
勿論、私の大好きな伸元にも褒めてもらえた。
十分に冷めたフォンダンショコラを箱に入れて時間を確認する。
午後3時前…。
少し慌てたけど、伸元の部屋に歩いて行く。

「伸元ー、入ってもいいー?」

一応聞いているけれど、体はもう部屋に入っている。

「俺の返事も聞かずにもう入ってるだろ」

呆れたように笑いながら言う伸元に、てへ、っと笑う。
頭を撫でてくれるその手は、多くの者を失ったあの事件からずっと右腕と決まっている。
伸元のそんな気遣いに、心の中がほっこりと暖かくなる。

「あのね、バレンタインデーだからお菓子作ってきたの。
 ブランデーが合うと思う」

伸元にソファで座っているよう勧め、私は一人準備をする。
伸元のお酒が集められた棚から、私が置いたブランデーとグラスを出す。
電子レンジで温めたフォンダンショコラをお皿に乗せて、お盆にフォークとブランデーとグラスを載せて持つ。
ソファに座っている伸元の隣に腰を下ろしてお皿をお盆から伸元へ差し出す。
渡したフォークで切り分けられたフォンダンショコラの中からはとろりとチョコレートが溶け出す。
我ながら美味しそうだ。
なんて自画自賛をしてみたり。
縢のように美味しいご飯は作れないけど、お菓子なら作れるから。
っと、本題はもう一つあったのだ。

「伸元、最近髪の毛伸びたでしょ?」

私の言葉に一旦お皿をテーブルに置いて、自分の髪に触れる。

「そうだな、長くなった」

いそいそと紙袋から伸元の誕生日プレゼントを取り出す。

「これ、去年の誕生日プレゼント。
 遅くなっちゃったけど…」

するりとリボンを解いて行く手を見る。
喜んでくれるといいなぁ。

「組紐…?」

「そうなの。
 朱ちゃんに頼んで買ってもらった奴でね、私のと対なの!」

伸元の手には私のと対になってる濃紺の組紐
私のは、青色なんだけどね。

「髪の毛、鬱陶しそうにしてたから、…嫌だった?」

何も言わない伸元に心配になって、不安が心に湧き上がる。
突然の浮遊感に驚く。
ぱちぱちと瞬きをすれば、端正な伸元の顔が目の前にある。

「嬉しいよ、名前」


the red thread that connects you and me


まえ / つぎ
モドル?