水の都
顧客は世界政府を始め海軍、商船、客船に限らず、世間を騒がせる海賊をも相手にする。船を作るのが仕事。ならば、船に乗る者全てが客なのだ。
故に、荒事も日常茶飯事なわけで。この島の人間は、割と海賊に慣れていたりする。今日もまた一つの海賊団が騒ぎの発端となりそうだ。
「ちょっと困りますよお客さん。ここは関係者以外立ち入り禁止です。作業の妨げになりますから」
ガレーラカンパニー。W7を造船の島と位置付けた、確かな腕を持つ職人たちが働いている造船会社である。
ここは1番ドック。7番まであるドックの中でも指折りの技術を誇る。本社の隣にドックがあるため、船の注文や解体、修繕などといった依頼をする場合には必ず目にするだろう。
腕は確かな分費用が高く、それなりに懐が温かくなければ頼めないのがこの一番ドックであるj。
通常ドック内には関係者しか入れないのだが、今は1週間ほど前に船の修繕を依頼してきたバルーン海賊団が占拠していた。
「いやいやァ、お仕事ご苦労。おれたちの船を直してくれてありがとうよ。礼を言いに来たんだ」
「はあ、そりゃどうも。それが私たちの仕事なんで」
「その通りだ。だがな、ちょいと高すぎるんじゃないかと思ってな」
「ですが、契約ではそのように同意していただけたのでは?」
「おれたちは海賊だぞ? 契約なんてのはデイビージョーンズとしか結ばねェのさ。ということでだな。おれたちの船を奪って今日出航することにしたんだ」
手にはピストル、カットラス。頭には風船を模した帽子。海賊たちはいやらしく口角を上げ、下品な笑い声をあげる。
船長と思しき男が、葉巻を吸う船大工に詰め寄った。
「社長にはお前から言っといてくれよ。『大変お世話になりました』ってなあ! さあ、殺されたくなきゃさっさとおれたちの船を出せ!!」
カットラスを向けられた男は眉根をひそめ、煙を吐き出す。ながったらしく吐き出された煙はゆらゆらと空気に溶けて消えた。
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地面に投げ出された男二人は、困惑したようにシルヴィを見上げかみついた。
「こっちは総勢50人だぞ! たかが船大工に何ができるってんだ!」
「」