ありがとう

クリスマスが終わって街中はあっという間にお正月の雰囲気に包まれていた。
高校も無事に冬休みを迎えたので、1週間ちょっとはなーんにも考えなくていいお休みの期間なのです!…まぁ、課題がわんさか出てるからコツコツとやっていかなくちゃいけないんだけどねー。
そう思って教科書とノートを開いたんだけど、これまたさっぱりわからない。授業はちゃんと聞いてた方だと思うんだけど、どうしても数学と英語は苦手なんだ。どんなに考えてもわからないんだけど、…これ、どうしよう。

「…あ、今日って12月27日か」

頭を抱えながら見上げたカレンダーのとある日に赤丸がついているのが視界に入った。それだけ印をつけてるのに今まで忘れてた私って、ものすごく馬鹿だと思うんです。今日は幼なじみである彼らの誕生日だ。
そうだ、誕生日を祝うついでにわからない所を教えてもらっちゃおう!





「なまえ?」
「どうしたんだよ、お前」
「やっほー、雪男!燐!かなり出遅れちゃったけどハッピーバースデー!!」

善は急げ、とばかりに勉強道具と、あらかじめ用意していたプレゼントを抱えて2人がいるはずの旧男子寮に急いだのです。先に連絡をしておけば良かったんだけど、一切頭になかったのでアポなしですいなかったらなんて考えていないのです。でもこうやって会えたんだから結果オーライだよね!
にこにこしながらもう一度、ハッピーバースデーと告げれば2人して「ああそういえば…」って顔になったんだけど。うん、ある程度は予想していたけどやっぱり誕生日だってこと忘れてたんかい、あんたら。同じようにさっきまで忘れてた私が言うことでもないけれども。

「そーいや、誕生日か…」
「すっかり忘れてた。なまえに言われなかったらいつも通り過ごす所だったよ」
「それはもったいないなぁ。てか、皆からおめでとうメールとかきてないの?」
「あー…誕生日教えてねーし」

あらそうなの?でもまぁ、聞かれない限りは教えることもないもんね。自分から誕生日を言ったら祝ってほしいアピールになっちゃって、あまりよろしくない気もする。
…でもそれは逆を言えば、私だけがこの双子の誕生日を知っていて祝うことが出来る、ってことなのよね?わ、それは特別っぽくていい感じかも!皆でわいわいお祝いするのも楽しいかもしれないけど、3人で静かに祝うのもいいよねー。
けど、こんなことならケーキでも買ってくれば良かったかも。ごちそうは無理でもケーキくらいは用意してあげたかったな。
ボソリとそう呟けば、雪男も燐も祝ってくれただけで十分だと言ってくれた。

「おめでとうって、…誰かに言われんのってこんなに嬉しいもんなんだなー」
「何よ、急に。毎年言ってるじゃんか」
「まぁ、そうなんだけどよー…」

…ああそうか。燐は自分がサタンの落胤だと知って、皆に知られて、とても大変で悲しい思いをしたんだもんね。他人からすれば生まれなければ良かったのに、と思う程のことなんだろうしね。あの時の皆の反応を見れば、そんなこと容易に想像がつくもの。

「ねぇ、燐ー雪男ー」
「あ?」
「どうしたの?」
「…、ありがとう」

生まれてきてくれて、出会ってくれて…本当にありがとう。

「なまえ…」
「大変な思いをこれからもたくさんすると思うけど、でも私は2人が生まれてきてくれて良かったって思うよ」

全ての人に受け入れてもらえないと思う。時には憎まれることも、厭わしいと思われることもあると思うんだ。でも、でもね?頼りないかもしれないけど、私はいつだって2人の一番の味方でいたいって小さい頃からずーっと思ってるの。
どんなに辛くて投げ出したくなっても、そんな風に思ってる奴もいるんだってこと忘れないでいてね。



(あ、これプレゼントねー)
(えっプレゼントまであんのか?!)
(こんなに気を遣わなくても良かったのに…)