バスケと本とバニラシェイク。
それが彼の好きな物、だと私は理解している。逆に言えば、それ以外に彼に好きな物があったとしても私は知らないということなんだけど。
もうすぐ1月も終わる。今月のラスト、31日は彼氏であるテツの誕生日なのです。それなのにプレゼントが決まらなくて、いまだに頭を悩ませていたりする。
順兄の時はケーキにしよう、と決めていたからそう悩むこともなかったんだけど、どうしてだかテツのプレゼントは悩んでしまっているんだ。あまりに悩み過ぎて順兄とリコ姉にボソリ、と言ってみたら、本気で好きだから悩むんじゃないのかってお言葉を頂きました。確かに彼のことは本気で好きだけど、それはつまり私は順兄のことを好きじゃないと言っているようなものじゃないのかしら…?
当の本人は好きのベクトルが違うんだからそういうもんだろ、とあっさりしていたけれど。
「もう、…本当にどうしよう〜」
「みょうじがんなに悩むとは思わなかった。中学ん時からの付き合いなんだろ?」
「そうだけど、…あの子にあげる物だけはいっつも悩んじゃってギリギリまでかかっちゃうのよ」
「今までは何あげたんだ?」
火神くんの言葉に今まであげたプレゼントを思い返す。
ええっと、…初めての誕生日は彼の好きな作家さんの文庫本で、その次はブックカバーと栞。その次は―――…ああそうだ、彼と距離を置いていて誕生日をお祝いしてあげていないんだ。
私も彼も、色々とあった頃だから仕方ないと言えば仕方ないんだけど。去年の分も含めて、きちんとお祝いしてあげたいな。
「つーかよ、黒子だったら何でも喜ぶんじゃね?特にみょうじからだったら」
「降旗くん達にも、先輩方にも同じようなこと言われた…でもその何でも、っていうのが悩むんだって気が付いて火神くん」
「いや、俺に訴えられても……むしろ、お前をあげちまえばいいんじゃねぇの?」
思わぬ発言に飲んでいたジュースを吹き出しそうになった。でも変なとこに入って噎せちゃったけど。ゲホゲホ咳き込む私を見て火神くんは慌てた様子を見せる。というか、この子は何で急にそんな爆弾発言をしてくるのかなぁ?それ以前にちゃんと意味をわかって言ってる?……いや、彼のことだからわかってないような気もする。
そう解釈、…というか自己完結した瞬間に、彼への怒りは鎮まっていった。だってきっと怒っても理解してもらえないだろうし、無駄な体力使うのは勘弁だからね。私だって。
はぁ、と溜息を1つ吐いて私は読んでいた雑誌に視線を戻した。タイミング良く「彼へ渡したい誕生日プレゼント!」っていう特集が組まれたその雑誌をくまなく読んではみるものの、何だかどれもテツには合わない気がしてしまって参考にはならない。読み物としてはとても面白いと思うけれど。
「…この際、バニラシェイクかな…」
「それはどうなんだよ」
「だってもう浮かばないんだもの。バスケに関するものは今、足りてるみたいだし」
「ああ、ボールもシューズも買い替えたばっかりだったしな」
アクセサリーもいいかな、と思ったけど、でもあの子はそういうものつけるようなタイプじゃないし。洋服はサイズがさすがにわからないから却下するしかなかったの、一番いい案だと思ったんだけどね。
「なまえがそんな雑誌を読んでるなんて珍しいですね」
「うお?!黒子っ?!」
「―――ッ!!」
「どうも。何だか2人で楽しそうに話してましたが」
「あ?そうか?」
「はい。何を話してたんですか?」
び、…ビックリしたぁ……!
いつもはテツの気配に気が付かないってことはないのに、今日はどうやら真剣に雑誌を読んでいたらしく全く気が付かなかったわ。
バクバクうるさい心臓を抑えていると、火神くんが私と話していたことをバカ正直に話してくれていました。もう、何で人が内緒にしておきたいことを本人に話しちゃうのかなぁ!がっくりうなだれているとようやく話してはいけなかったことに気が付いたらしく、慌てて口を塞いでいたけれど…おバカさん、手遅れよ。
「…バカガミ。」
「悪かったって、みょうじ!」
「なまえ」
「なぁに?テツ」
「まだ僕へのプレゼントが決まっていないのなら、1つだけねだってもいいですか?」
珍しい一言に迷うことなく頷いた。驚かせてあげたかったけど、ここまで決まらないんなら本人の欲しい物を渡すのが一番いいものね。
だけど、彼が欲しがった物を聞いた瞬間。一気に顔が熱くなってしまったのはどうしたらいいのかしら。
―――なまえが欲しいです。僕の誕生日の日、キミの時間をもらえませんか?