持ち物調査


それはまた唐突にやって来はりました。


「持ち物調査?検査やのうて?」
「広報に載せるんだってさ。で、今回は神楽と勝呂の番」
「ふぅん…そんなものがあんねや」


やれ、と言われたんならやりますけど。何が入ってたかな〜と鞄をひっくり返せば、もうちょい静かにやれと小突かれた。せやけど、これが私の性格やしなぁ。
私の隣ではタツが同じように鞄の中身を出して、机の上に広げていた。…何故か、塾生勢揃いの前で。


「神楽ってあんまり鞄の中にいれてないんだな」
「必要最低限やねぇ」


持ち歩いとるんは、手帳と携帯と財布とお菓子と常備薬をいれたポーチ。あと暇つぶし用の小説とペットの水とアルバムくらいやろか。
ポーチはルームメイトがくれたヤツ。何や雑誌の付録だったらしいんやけど、自分は使わんからーって。財布はおば様が買ってくれたんやっけな…誕生日のお祝いに、って。私らしくあらへんけど、可愛くてお気に入りなんよ。


「ポーチん中って何入ってんの?」
「開けても構わんよ〜」
「えーと…薬?」
「おん。鎮痛剤と胃薬やったかな?あと風邪薬」
「勝呂、神楽って体弱いの?」
「そんなことあらへん」
「坊と一緒で偏頭痛持ちなんですよ、神楽さんは。常備薬持ち歩いてるんも昔からですよね」
「あれば安心やから」


胃薬とかはあんま使わんのやけど。


「あ、本も入ってるんだね。さすが神楽ちゃん。見てもいい?」
「ええよ」

―――パラ…ッ

「…恋愛小説?ちょっと意外かも」
「そ?本はジャンル関係なく、何でも読むからなぁ。そういうんも読むし、ファンタジーとかも読むで?」
「へえ…!私も読んでみたい!」
「ほな、今度何冊か見繕ってこよか」
「ありがとう!」


しえにはどんなんがええかなぁ…難しいもんより、スラスラ読める方がええよね。せやったら、小説よりエッセイの方がええかも。
鞄の中に常備しとるお菓子を食べながらそんなことを考えとった。


「相変わらず手帳はシンプルやな。何処ぞの会社員か」
「せやけど、使いやすいんよ?このタイプの方が」
「否定はせんけど…」


塾の予定とか、あと訓練生に上がってからは簡単な任務も来るようになっとるし、ぎょーさん書き込める方が楽なんよね。一応特進科やから小テストもあるし、そういうんも書き込んどる。何だかんだ言うて、メモすることが多いんよなぁ。


「神楽さん、これ何ですか?」
「うん?…あぁ、アルバムや。こっちで撮った写真とか、京都で撮った写真とか…見てもええで」


こっちに引っ越してくる時、持ってきたんは本当に最低限のモノだけで。…まぁ、私もタツも大反対されとったからなー…正十字学園に通うんのは。お互いに無理矢理出てきてしもた感じやね。
だけど…京都の皆が嫌いなわけやないし、いずれはあっちに戻りたい。やから、このアルバムだけは置いてくることが出来んくて。見れば淋しくなるような気ィもしてん。せやけど、これは私がおるっちゅー証やから。


「あ、これ勝呂達の小さい頃?」
「せや。5歳くらいかなぁ」
「神楽ちゃん達可愛いー!」
「…勝呂も志摩も髪、黒い」
「当たり前やろ!」
「高校入る時に染めはりましたからねぇ。俺も坊も」


真ん中だけ金色と、ピンクに近い茶色の髪した子供なんて嫌やわ。
私の持ち物調査は終ったらしく、次はタツの番。この子もそんなに珍しモンは持ってるわけやないんやけどね。んーと…暗記用のノートが数冊、付箋がぎょーさんついた手帳、いつもつけとるネックレスとピアスのスペア、タオル、数珠、音楽プレーヤー、頭痛薬、リップクリーム、フリスク…


「…タツ、何でカッターなんか持っとるん?いよいよ廉を刺すんか?」
「どうなってそういう結論になったんや、お前」
「てかお嬢!いよいよ、って何やの?!そんなに俺が嫌いでっか?!」
「時々うっとうしい」
「ひどっ!!!」


廉のせいで話が逸れてしもた。


「あれ?この音楽プレーヤー、神楽も色違いのやつ持ってなかったか?今日はなかったけど…」
「前に誕生日に子猫達からもろたんや。俺ら誕生日が近いから」
「学校ではあんまり使わんから、たまにしか持ち歩かんのよ。寮の部屋ではよう聴いとるけど」


寮は相部屋やから、集中したい時はほんまに便利!パソコン持っとらんから曲が増やせんのが、ちょぉ残念なんやけどなぁ。せやから、京都でいれた曲をエンドレスで聴いとる。


「坊、また暗記ノートの数増えました?」
「そうでもあらへん」
「あ、これ…それぞれ分けてはるんや。読みやすうてええな…」
「本当だ。綺麗に纏めてあるんだね」
「ええなぁ、これ。ちょーだい」
「やるか阿呆」


ちぇー。タツのケチ。どうせもう覚えてはるんやろうから、もろたってええと思うんやけどなぁ。私も大分覚えてきた方やと思うけど…どうしてもタツには勝てん。暗記に関しては昔っから勝てた記憶がない。1回くらいは勝ちたいなぁ。私かて詠唱騎士希望しとるし。
…ん?ノートの下に何かある。何やろ。ノートを持ちあげてみれば、そこにあったのは飴の袋。それも未開封。そしていちごミルク味。タツってミント系が好きやったはずやんね?甘いの苦手なはずなのに、何でこんなんが入っとるんやろ。


「神楽?ボーッとしてどないしたん」
「え?あ、これ…気になっとった」


これ、といちごミルク味の飴の袋を指差した。それを見てねこと廉が「あー」って顔して、タツは顔が赤うなってて…余計、なん?って感じになってしもて。


「坊がお嬢が好きそうやって買ったんよ〜」
「っ…志摩!!」
「そういや神楽っていちごミルク好きだよな」
「いつも飲んでるもんね」
「おん、好き〜。タツ、これもろてええん?」
「…っ勝手にしぃ」


ぷいっと顔を逸らしはったタツは、耳まで赤うなっとって何やかいらしなぁ。タツは時々、こうやってころころと表情が変わるから、見てて飽きん。…そんなこと行ったらど突かれるやろから言わへんけど、それがかいらしくて、可笑しゅうて、顔が勝手に笑ってまうんや。
そんでタツに笑ってんのがバレて、何笑てんのやって怒られて、またそれが楽しゅうて笑いが込み上げてきて…その繰り返し。昔っから、その繰り返しなんよ。私らの関係は。


「神楽ちゃん何か楽しそう」
「ほーか?…あぁ、いちごミルクの飴食べとるからちゃう?」
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