突然のこんにちは


とある日の休日。部活を終えて家に帰ると、見慣れない…というか、明らかに家族の誰のでもない靴が玄関にありました。あれですかね、最近の泥棒さんはきちんと靴を脱いでから家の中を物色するんですかね?しかも、鍵までかけて。
…いやいや、いくら何でもそれはないよねー。だってゆーちゃんの靴も隣にあったもん、きっとゆーちゃんのお友達が来てるんだよ。ムラケンくんとか。


「ただいまー。ゆーちゃーん、誰か来てる、の……」
「えっと、…こんにちは…?」


リビングに繋がるドアを開ければ、そこには爽やか好青年の外人さんが立っていらっしゃいました。更に言えば、バスタオルで髪をわしわし拭いてらっしゃいます、お風呂でも入ったんですかね?…そして何よりもびっくりなのは、上半身裸なこと。
男兄弟がいる私にとっては見慣れているものなので叫んだりはしないけど、突然、見知らぬ人の裸を見ちゃったらそりゃびっくりするよ絶句するよ目をまん丸くするよ!!!でも凝視もする。筋肉フェチなのかついじーっと見ちゃうんだよね、変態かっつーの。
彼のこんにちは、には一切反応を返さずに延々と筋肉を凝視してたら、ゆーちゃんの声が聞こえました。あ、2階にいたんだね。


「コンラッドー、勝利ので悪いけどコレ着て…って、朱里?帰ってきてたんだ、おかえり」
「うん、ただいまゆーちゃん。……ところでこの細マッチョで爽やか好青年な外人さんはどなた?」
「本人を前にしてそのおかしな聞き方やめて?!」


だってそれ以外に表現の仕方なかったんだもん。…あ、このお兄さん誰?って聞けば良かったのか。
変な呼ばれ方をしたお兄さんは苦笑を浮かべつつ、ゆーちゃんが持ってきたしょーちゃんのシャツを着ています。ああ残念、綺麗な筋肉隠しちゃうのね…!ゆーちゃんも鍛えてるから腹筋割れてる方だと思うけど、このお兄さんは綺麗に割れてたなぁ腹筋。それはもう素晴らしい筋肉でした。出来ればもう一度、拝ませて頂きたいくらい。

まぁ、それはさておき。お兄さんの名前はコンラート・ウェラーというそうな。ゆーちゃんはコンラッドって呼んでるらしいです。何やらその方が耳に馴染みやすいから呼びやすいんだってさ。うん、確かにコンラートってよりは全然呼びやすいかもしれない。
…ん?コンラッド、って…前に聞いたような気がする名前だなぁ。誰から聞いたんだろ、…しょーちゃんは絶対違うし、パパとママからも聞いたことなかったような気がする。そうすると消去法でゆーちゃんからってことになるんだけど、いつ聞いたんだっけ?んーーーー………あ。


「もしかして、…ゆーちゃんの名付け親でウチのママとタンデムした人?」
「タンデム?!」
「タクシー相乗りさせてくれた人がいる、って聞いたことあるよ?その時、ママが言ってた」
「はは、ジェニファーは面白い表現をしてるんですね。そうですよ」


やっぱりそっかぁ。少し前にゆーちゃんが話してくれたんだよね、名付け親さんのことや眞魔国のこととか。突拍子もないファンタジーな世界の話だなぁ、と思ったけど、でもゆーちゃんはそんな嘘言わないだろうし、何より話してくれた時の目が真剣だったからきっと本当なんだと思う。


「改めて初めまして。コンラート・ウェラーといいます」
「あっえと、渋谷朱里です!ゆーちゃんの双子の姉です」
「双子、…成程。それでユーリとそっくりなんですね」
「髪の長さくらいだよな、違うの」
「あと背の高さね。そこは男の子のゆーちゃんには敵わなかったなぁ」


男の子の成長期ってすごいよね。ちょっと前までは私と変わらない背丈だったのに、気が付いたら追い抜かされちゃってるんだもん。それでもゆーちゃんはもっと身長が欲しい、っていつも言ってるけど。だけどね?それを言いたいのはむしろ私の方ですよ!私だってせめて160は欲しかった…!ゆーちゃんは170近くあるんだからいーじゃん、男の子の平均よりは少し低めかもしんないけどさっ!!
…あ、何か話が逸れてきちゃったよ。何の話してたんだっけ?あれだ、私とゆーちゃんが似てるねー、って話だ。多分、きっと恐らく。
しょーちゃんとゆーちゃんも似てると思うけど、まぁ私と彼は双子だからね。男女の双子にしては似てる、ってよく言われるかも。けど、まず髪の長さが違うし、やっぱり声の高さも違うから親族や友達は見分けつけやすいみたい。これで同性だったら見分けつかなかったのかなぁ。


「あ、朱里。今日、親父もお袋も勝利も遅くなるって。夕飯は適当に食ってってさ」
「わかった。何か作る?それとも食べに行く?」
「コンラッドいるし、家のがくつろげんじゃね?」


ふむ、それもそうか。そうと決まれば冷蔵庫の中身をはいけーん!って、此処自分の家だけどね。なーにがあったかなぁ………卵くらいしかないな。野菜は何かないのかな、…あ、玉ねぎ発見。
卵と玉ねぎか…鶏肉を買ってくればオムライスが作れるね。ケチャップはまだあるし。


「ゆーちゃーん、お買い物!」
「え?俺?」
「うん。別に3人で行ってもいいけど…」


チラリ、とコンラッドさんを見上げてみる。うん、外人さんだし、見目麗しいし、これはきっと目立つと思うなぁ?近くのスーパーに行ったら。
そんな意図を込めてゆーちゃんに視線を移せば、察してくれたのか少しだけ遠い目。そして素直にいってきます、のお言葉頂きましたー!うん、やっぱり素直で可愛い弟だなぁゆーちゃんは。
お金とエコバッグを渡してお見送り。そして玄関のドアが閉まるのと同時に、さっき出会ったばかりのコンラッドさんと2人きりになる、という事実にようやく気が付きました。…しまった、これは完全に私が行っていれば良かったパターンだ…!
別段、人見知りというわけではないんだけど、むしろ人懐っこい方だから話せないとかじゃないんだけど、…あのー、イケメンさんとお近づきになることってあまりないわけですよ生まれてこの方。更にぶっちゃければ、年齢=彼氏いない歴+好きな人いない歴なんです。初恋すらまだなんです。だから、というわけではないけど…家族ではない男の人と2人きりってめっちゃ緊張するよねイケメンさんなら尚更だよねってことなんですよはい。


「えっと、…とりあえずリビングに戻りましょっか。お茶でも淹れますね」
「ありがとう」


そう言ってにっこり笑ったコンラッドさんはやっぱり爽やか好青年だ。
ゆーちゃんやしょーちゃん、パパ、それからクラスメートや学校の先輩方とは違うタイプで何だかドキドキする…しばらく我が家にいるのか、それとも他に泊まる場所があるのかはわからないけれど、もっと…仲良くなれたりするのかな。
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