それは必然
別離は突然やってくる。
けれど、それならば―――――再会も、突然なのである。
「んー…!ひっさしぶりに戻って来たなぁ…」
私の生まれ育った町。故郷である米花町。
わけあってしばらく離れていたんだが、久しぶりに戻って来たわけなんだ。2年ぶり、くらいか?こうやって言葉にしてみると、長いような短いような…変な感じだ。
…あぁ、でも。やっぱり町並みは結構変わってるなぁ。あの頃はなかったはずのお店や、逆によく行っていたお店がなくなってしまったりしてる。
まぁ、仕方のないことなのかもなぁ。世の中には需要・供給っていうものが存在していて、要らなくなったものはバッサリ切り捨てられてしまうものだし。それも悲しいとは思えど、どうにもならないことなんだろう。
「(切り捨てる方も辛いんだろうし、ね)」
少しだけ感傷に浸りながら懐かしい商店街をブラブラしていると、少し先に人だかりを見つけた。
何だ?何かイベントとかやってるのか?…にしては、何だか様子がおかしいな。何つーか…怒号?とか悲鳴?が聞こえてる気がするんだけど。
おいおい…まっさか商店街のど真ん中で喧嘩かぁ?
人だかりには突っ込まず、少し遠くから覗いてみると…私の予想通り、喧嘩…というわけではなく、どうやらナイフを持った男が暴れているらしかった。しかも女性を人質にとって。
そりゃ人だかりもできるわ…こんな状態じゃあ、先に進むことも出来ないからな。
だが、こんな騒ぎになってるのに警察が来てないなんておかしくないか?普通なら誰かが通報して、すっ飛んできてるはずなんだが…と、思ってたら。遠目に警官の姿をはっけーん。
…あぁ、成程。あの男が人質の女性の首筋にナイフを当ててるから、下手に動けないんだな。確かに怪我、下手すりゃ殺されることだって有り得るんだから。
「(でもこれは、ちょーっとよくない展開だなぁ…)」
ふむ、どうしたものか。
警官が男を説得しようとしてるものの、頭に血が昇っているらしく聞く耳もたんし。このままの状態が長く続くと、あの女性の精神状態にも何かしら支障が生じるだろう…その前に助けてあげないと。
とりあえず、男に気付かれずにあのナイフを叩き落とすことが出来ればいいんだけど、何か良いものはないかねぇ?ゴソゴソとカバンの中を漁ってみるものの、良さそうなものは皆無。
それでも諦めきれずに周りをキョロキョロと見渡せば、ジュースの空き缶を見つけた。お、あれなら投げつければナイフを叩き落とせるかも!
人混みを掻き分け、空き缶に手を伸ばそうとした瞬間―――"何か"に弾き飛ばされた空き缶が、ナイフを持っている男の手に命中。
そのナイフはカラカラと音を立てて、私の足元へと転がって来て。男の手が伸びてくる前に、それを拾い上げた。
けど、激昂している男はそれで落ち着くこともなく…ものすごい形相で掴みかかろうとする始末。
「全く…いい加減、諦めろよな」
「お姉さん危ないっ!!」
胸倉を掴もうとした男の手を掴んで捻り上げれば、あっさりと男は痛みに顔を歪ませた。ま、痛いよな。捻り上げられたら誰だって。
そのまま男の腕を背中に回し、グッと力を入れれば、ついに男の口から苦痛に耐える声が上がった。
「いでででででっ!!!」
「そりゃ捻ってるからなぁ…けど、あんたが人質にしてた女性の痛みや恐怖はこんなもんじゃないと思うがね?」
男を警官に引き渡し、さっきの女性と警官にお礼を言われ離れようとした時、野次馬となっていた人達に囲まれた…いや、何だこの状況?!
とは言え、邪険にするわけにいかんしなぁ…愛想笑いを浮かべながら、テキトーに言葉を返していると、懐かしい声で名前を呼ばれたような気がした。
振り返れば。そこに立っていたのは、2年ぶりに会う幼なじみの蘭だ。
あぁ、やっぱりな。懐かしい声で私の名前を呼んでくれたのは…君だったんだね。
「嘘、本当に咲羅ちゃん?!」
「おー、久しぶりだね蘭。ずいぶんと綺麗になっちゃって」
「もう!そういう所は相変わらずなんだから…!」
ほんのりと頬を赤く染めた蘭は、私の記憶に残っている彼女の姿とあまり変わりがない。
でもやっぱり、すごく綺麗になってんなぁ…あの時、この子は中学生だったはず。ってことは、今は高校2年生か。そりゃ綺麗にもなるわな。
ふと、いつも蘭の傍にいたもう一人の幼なじみのことを思い出した。
その辺りにいるのだろうか、とキョロキョロと視線を彷徨わせてみても見知った姿は見当たらない。その代わりに見つけたのは、小さな男の子。
眼鏡をかけてるから何とも言えないけど、どことなく…アイツに似ている、気が、しないでも、ない…?
「…蘭。いつの間に弟が生まれてたんだ?」
「えっ?…あ、コナンくんのこと?違うよ、弟じゃなくてウチで預かってる子なの」
「ふぅん…」
「あ、の、…は、初めまして!ボク、江戸川コナン!」
「コナン、ね。私は伊勢谷咲羅、よろしくな」
にっこり笑った江戸川コナンという少年。その子の履いているスニーカーに何故か見覚えがあった。
会ったのは今が初めてのはずなのに………あ、もしかしてさっきの男の手に命中した空き缶って。
「な、なに?お姉さん…」
「さっき空き缶を蹴飛ばしたのって、…君かい?」
「う、うん…あのお姉さんが危なかったし、当たるかなぁって思って…」
「すごいな。ひょっとしてサッカー得意なの?」
「得意っていうか、…好きだけど」
「ふふっサッカーしてる時のコナンくん、すっごく楽しそうだもんね!でもさっきの咲羅ちゃんだってすごかったよ?」
「あっそうだよ!あっという間に犯人捕まえちゃったじゃない!!お姉さんカッコ良かった!」
にっこり笑顔で褒め称えてくれた2人にお礼を言う。
…んん、それにしてもなんだろーな?このコナンくんに感じる違和感は。昔から知っているような気がしてならないんだ。
だけど、子供と知り合った記憶はないし…蘭も園子も一人っ子だったはずだよなぁ。
見れば見る程、…この子はアイツ…工藤新一にそっくりだ。
うーん…だけど、新一にも弟がいたって話は聞いてないし、コナンくんはどう見ても7歳くらい。だから、私がこの町を離れている間に生まれた子ってわけでもないよな。
親戚の子、って線もあるが…それだと蘭の家に世話になってるっていうのも変な話。親戚なら新一の家に世話になりゃあいいし。
「ねぇ咲羅ちゃん!この後、何か用事ある?」
「へ?いや、特には…阿笠博士の所へ行こうかな、って思ってたくらいで」
「じゃあお茶でもしない?ゆっくり話したいもの!コナンくんも一緒に!」
「えっボ、ボクはいいよ!蘭姉ちゃんとお姉さんだけで…」
「まぁ、いいじゃんかコナンくんや。せっかく出会ったんだし…ね?」
「え、あ、…うん」
不思議な感じがする少年の正体を私が知るのは、もう少し後の話。
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