鈍感お姉さん


2年ぶりに米花町に戻って来た私。これまた久しぶりに幼なじみの蘭と再会し、毛利家で預かっているというコナンくんという少年に出会った。
そんなこんなで、私は今、近くのカフェでお茶してます。コナンくんと、蘭が呼んだ園子も一緒に。園子も久しぶりに会うなぁ。


「咲羅さん久しぶりっ!あいっかわらず綺麗だよねぇ…」
「久しぶり、園子。おだてても何も出ないぞー」
「別にそういうつもりじゃないし、お世辞でもないわよ!そういう謙虚な所も相変わらずね」


ふふっと笑う園子はあの頃と同じ、とてもサバサバしてて、元気で、明るい女の子だ。
うーん…でもやっぱり2人共、すごく綺麗になったなぁ。あの頃はまだ幼さが残ってたし、どっちかと言うと可愛いって感じだったから。
でもそうだよなぁ、もう高校生なんだもんなぁ…蘭に再会した瞬間も思ったけど、そりゃ綺麗にもなるよ。色気が出てくる頃だよなぁ。
…変な男に引っかかったりしないといいけど。

コーヒーを飲みながら、そんなことを考えていれば。園子が大きなため息をついて、窓の外へと視線を向けた。
んん?一体、どうしたんだ?さっきまで楽しそうに笑っていたのに。悩み事か?


「まーったく、あの推理バカってば…綺麗な愛しの彼女が戻って来たっつーのに、一体何処で何してんだか」
「本当だよね…事件が忙しいのはわかるけど、」


推理バカ、…私達の間でそう呼ばれていたのは、他の誰でもない。アイツ、工藤新一ただ1人だけ。
…うん。それはまぁいいとして…色々とツッコミ所があるんだが、どこからツッコめばいいんだ?


「咲羅ちゃん?頭抱えてどうしたの?」
「えーと…蘭、園子。…新一、って…今、どうしてるんだ?」
「へ?…あ、そっか咲羅さん知らないんだ」


園子の話に耳を傾けてみれば、どうやら新一は事件の調査で遠くに行っているらしく、あの家にも帰っていないし、学校もずっと休んでるらしい。
時々、蘭に電話がかかってくるらしいが…それも月に1回あるか、ないか…くらいのペースみたいだな。
確かに新一は探偵になりたい、と幼い時から言っていたし、この町を出た後も時々、新聞やニュースでアイツの活躍を耳にしていた。高校生探偵となった新一を、純粋にすごいなぁと思ったのを覚えてる。
…そういえば、ある時を境にぱったりと名前を耳にしなくなったな。まさか、この町にいないとは思っていなかったけど。

そうか、…いないんだな。新一は。

じわりじわり、と這い上がって来る淋しさに、自然と眉間にシワが寄ってしまう。
この町に帰ってくれば、当たり前のように新一と蘭と園子に会えると思っていたから、尚更…いない、という事実が胸に深く突き刺さって来た。


「咲羅姉ちゃん…?」
「ん?なんだい、コナンくん」
「あ、ううん…何だか辛そうな顔してたから」
「……何でもないよ、大丈夫」


こんな小さな子に心配されるようじゃ、私もまだまだだな。
アイツに会えないくらいでガッカリしたり、悲しんでるような暇はない!もっとしっかりしないとダメだ。


「あ、そうだ」
「どうしたの?咲羅ちゃん」
「蘭、ようやく新一と付き合いだしたんだな」
「………はい?」


私の発言に蘭と園子は呆然とし、さっきまで私の心配をしてくれていたコナンくんは飲んでいたジュースを盛大に吹き出した。
…え、なにこの反応。私、そんなにおかしなこと言ったか?もしくは地雷踏んだ、とか?
でも園子が"愛しの彼女"って言ってたし、知られたらマズイってことではないはずだよな。ダメだったら園子があんなこと言うわけがないし…蘭のこと、めちゃくちゃ大事にしてるから。
蘭が言うな、って言えば、絶対に口外しないはず。
…ということは、やっぱり私がおかしなことを言ったってことになるよなぁ?でも何がおかしかったんだ?園子が言ったことを繰り返したまで、なんだけど。


「てか、コナンくん大丈夫か?はい」
「あ、ありがと咲羅姉ちゃん…」
「何でがきんちょまで驚いてんのよ」
「いや、あの、新一兄ちゃんって付き合ってる人いたんだなぁ…って」


ま、確かに推理一直線の奴だもんね。恋愛とか興味なさそうな感じはあった…だけど、蘭に対する態度は違ったんだよなぁ。
何だかんだ言いつつ、新一は蘭のことを大切に思ってて、蘭も新一のことを大事に思ってた。だから、両思いなのにお互いが気が付いてないものなんだって解釈してたんだよ。私。
もしくは自分の気持ちに気が付いてない、ってパターン。
それが高校に入って、環境の変化とかで自覚したんだろうって推測してたんだけど…あり?もしかして私の見当違いだったのか?

うーん?と首を捻っていると、蘭は苦笑いを浮かべ、そして園子はさっきよりも大きなため息をついて「あのね咲羅さん!」とずずいっと近寄って来た。
おおう、…可愛い子に迫られるのは嬉しいけど、さすがにこの剣幕で近寄られるとさすがの私でも怖いって思いますよ?園子さん。


「なーに言ってんの!新一くんの彼女は咲羅さんでしょ?!」


思わぬ言葉に私はあんぐり口を開けてびっくりするしかなかった。
え、ちょっと待って?新一の彼女が…私?綺麗で、料理が上手で、空手が強い蘭ではなく、私?!
いやいやいや!おかしい、それおかしいから!だって―――――


「私いつ好きだって言われた?!」
「そこから?!」
「や、忘れたとかじゃなく…本気で言われた記憶がないんだが」
「嘘…だって、あんなに一緒にいたし、どこからどう見ても恋人同士だったでしょ!」
「私にもそう見えた…いつも楽しそうに話してたし、空気が甘いっていうか」


うん、新一と話すのはすごい楽しいけれども!でもその話題に上がってるのは、何を隠そう推理小説のことだから!
またはホームズの面白い所とか、すごい所とか、カッコいい所とか…そういうことばっかり話してたんです。そりゃ楽しそうにも見えるさ、私も新一もホームズ大好きな推理バカなんだもの。

素直にそう話せば、2人は至極残念そうな表情を浮かべた。
おい。何故にそんな残念そうなんだ。特に蘭にとっては私が新一と付き合っていない方が都合が良いんじゃないのか?


「なーんだぁ…てっきり付き合ってるもんだと思ってたよ、新一くんと咲羅さん」
「んなわけないだろ。第一、新一が好きなのは蘭だろ?」
「…咲羅ちゃん…それ、本気で言ってる?」


またもや蘭は苦笑い。隣に座ってるコナンくんは何故か真っ赤になってる。
…おや、まだ小学1年生だという彼にはちょーっとアレだったかな?内容は高学年にもなれば話すようなことだろうけど、男の子はこういう話ってほとんどしないもんなぁ。
ガールズトークを聞くのは、そりゃ恥ずかしくもなるか。


「本気、って…見てりゃわかんだろ?」
「それ。私と蘭から咲羅さんにそっくりそのまま返すわよ」
「はぁ?」


呆れ顔の園子と、コクコク頷いている蘭を見て、私は再び首を捻るばかりだった。

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