久しぶりのキミ
「じゃあ、血盟城に新しい住人が増えたってことでさ!歓迎会やろうぜっ」
「は?ちょ…陛下?!」
「陛下って呼ぶなっての!ちょうど夕飯の時間だしさ、ルナの歓迎会も含めた食事会にしようよ」
「いや、私はそういうのが苦手なんだが…」
「へなちょこの割には、良いことを言うじゃないか!僕は賛成だぞ」
「それでは食事会の準備を頼みましょうか」
人の話を聞かないのか、此処の住人は…っ!
はあー…と溜息をついてうなだれていると、頭の上に温かくて大きな何かが乗せられた。ちらりと後ろを見てみると、コンラート閣下の手だった。この人の手は昔から温かくて、何故か安心できたんだ。懐かしいな。
「君が賑やかなの苦手なのは知ってるけど、今日はつき合ってあげて。ね?」
「…閣下にそう言われたら、断れないじゃないか」
「閣下はいらないよ。グウェンも気にしないと思うな」
「そんなことしたら公私混同になるだろうが。仮にも上司だぞ?2人は」
「グウェンはまぁ、仕方ないとして。俺はもう上司じゃないし」
「そう、かもしれないが…」
「変なとこにこだわらなくていいから」
「ま、いーか。…久しぶりだな、コン」
「久しぶり、ルナ。それにしてもそのドレスは?」
「あぁ、ツェリ様だよ。似合わないって申し上げたのに、無理矢理にな」
左目にしている眼帯、この口の悪さ…本当にドレスなんか着る柄じゃないんだ。私は。今までも招待されたパーティーでは、軍服で出席してたし。怒られていたが。
怒られることより、恥ずかしい格好を晒す方が私には大問題だ。
「幼い頃だってコンが着ていた服をもらっていただろう?こんな女らしい格好なんて似合うようにできていないんだよ」
「そうか?俺は似合うと思うけど。綺麗だよ」
「…っそりゃ、どーも…」
「どういたしまして」
ほんっとーにコイツは…っ!!!どうしてこう恥ずかしがることもなく、さらっと言えるんだ?!てか、こういう奴だから女性に好かれやすいんだろうな。人当たりも良いし。魔族にしては確かに地味な見た目なんだろうが…逆に近寄りやすいという利点もあるしな。
「ルナは考えを固めすぎなんじゃないか?」
「どういうことだ?」
「今みたいな服装は似合わないと思い込んでる。…意外とそうでもないんだよ」
「思い込み、ねぇ…」
「ヴォルフやグウェンも似合ってると言ってたしね」
「2人がか?というか、いつのまにそんな会話をしてたんだ、お前達はっ!」
「ついさっきだ」
恐らくユーリと会話してた時だな…全く気がつかなかったぞ。
「褒められたのは嬉しいが…やはり私には合わないさ。何より落ち着かない」
「初めて着る服というのはそういうものじゃないか?たまには軍服以外の服を着ればいいのに」
「諜報部員としてそこら中飛び回っているからな…変装も男性ばかりだし」
ヨザが女装ばっかりするから、何となく私は男役に回ってしまっただけなんだがな。体格的に逆じゃないと違和感があると思っていたんだが、案外平気なものらしい。…ま、気味悪がって近づいてこないだけの気もするがな。
「…そういえば、諜報部員の仕事はどうするんだ?」
「閣下から仕事が来れば行くよ。コンか私のどちらか1人がいなくなるだけなら、あまり支障はないだろうしね」
「そうか、大変だな…」
「そうでもないさ。私は国内の任務に止まるらしいし」
「そうなのか?」
「私が国内の問題に、ヨザが国外の問題に…ということにしたそうだ」
こういう時、2人いると便利なのかもしれないな。ヨザには少し負担をかけてしまうだろうが、あいつは気にするなと笑いそうだ。
「コンラッド、ルナー!もうすぐ夕飯の準備できるよ?早く来いよー」
「わかりました、ユーリ」
「今、行くよ」
「…久しぶりに飲むか?」
「いいな、つき合おう」
何だか、早くも此処での暮らしに慣れそうだ。