Happy holiday!
学校も仕事も休みの日曜日。天気もいいし、気温も暑すぎず寒すぎずというバッチリな感じ。どこか行きたいなぁ、と大量の洗濯物を干しながら考えていた午前中。どこか行きたいけど、でも何か欲しいものがあるわけでも観たい映画があるわけでもない。ただ単にこのまま寮にいるのはもったいないなぁ、と思っているだけで。
あ、そうだ。洗剤とかなくなりそうなものがないかチェックして、その買い出しに行けばいいんだ。そうと決まれば即行動!ってなわけで、ゴソゴソと棚の中の在庫を確認していたら―――万里くんと太一くんに声をかけられた。
「…なにしてんの、なまえちゃん」
「何って在庫の確認だよ。暇だし、足りないものの買い出しにでも行こうと思って」
「あ、じゃあなまえチャン今日は予定ないんッスね?!」
「うん」
在庫を確認する手は止めず、更に言えば2人に視線を向けたのは声をかけられた時だけで、それ以降はずーっと棚の中。かなり失礼な態度をとっている自覚はあるけれど、2人は特に文句も言わなかったのでそのままにしちゃってる。文句言われれば多分、確認する手を止めて万里くん達の方に向き直るとは思うけど。…そういえば、2人は私に何か用事があって来たんだろうか?
「ところでなにか用事?」
「あー、ちょっとな」
「これからバスケしに行くんスよ!暇ならなまえチャンもどうッスか?」
「バスケ?見るのは好きだけど、私、下手だよ?」
「見てるだけもいーって。ヤローばっかだし、花があった方がいいっしょ」
花を求めるのならいづみさんを誘いたまえよ……けど、スポーツ観戦は好きだし暇なのも事実だから行ってみるのもいいかもしれない。それにどこか行きたい、って願いも叶うわけだし。悪いことではないよね、うん。でもとりあえず、この棚の中だけでも在庫のチェック終わらせたいからちょっと待ってて、と声をかけると、太一くんが手伝うッスー!って隣にちょこんと座り込んだ。
せっかくの厚意は受け取っておくのが正解なので、遠慮なく手伝ってもらうことにしよう。太一くんに棚の中を見てもらい、私がメモをしていく方法に切り替えるとあっという間にチェック終了です。うん、やっぱり1人より2人の方が効率いいよね。あとはバスケの帰りに勝ってくればOKっと!
「お、終わったのか?」
「うん。もう行くの?」
「おー。多分、準備終わってんだろ」
準備?タオルとか着替えとか、そういう準備かな。とりあえず、財布とか必要なものを取りに部屋に戻ることにした。集合場所は玄関だそうです。えっと買い出しのメモと、財布と、携帯と…一応、小さめのタオルと帽子も持っていこう。真夏ほどカンカン照りじゃないけど、それでもいい天気だしジリジリきそうだもん。それにこの時期の紫外線は一番強いってよく聞くしね。あと日焼け止めを塗れば準備万端かな。万里くん達をあんまり待たせるのもいけないし、早く行こう。
パタパタと階段を駆け下りて玄関に向かうと、そこには秋組が勢揃いしておりました。いや、万里くんと太一くんがいるのは予想してたけど、…臣くん達もいるとは思わなかったな。勝手に咲也くんや椋くんとやるのかなーって思ってたから、このメンバーにはちょっと驚き。特に左京さんがいることが。思いっきりしかめっ面なのは、気にしちゃいけないんだと思う。うん。
「…臣くん、その荷物なに?」
「これか?弁当と飲み物」
「ああ…万里くんの言ってた準備ってそういうこと」
「来ねぇと思ったらなまえさん呼びに行ってたのか」
「そうッス!なまえチャンの応援があったら百人力ッスからね」
「それはねぇよ。馬鹿なのか、太一くん」
思わず口悪くなったけど仕方ないと思う。だって本気でねぇよ、って思ったし。私ひとりが応援した所でそんなこと起きるはずもないでしょ。ンな特殊能力あるわけないっつーの。まぁ、そういう例えだってことは理解してるけどさー…太一くんってものすっごいピュアだから、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ本気で言ってんじゃない?この子って思ったが故のツッコミだったことは、さすがに言わないでおこう。
まぁそれはさておき…どうやら移動は左京さんの車らしい。近くの公園だと勝手に思ってたんだけど、少し遠出するらしいです。万里くん曰く、大きなレジャー施設ができたらしくそこに行くんだって。遠出って言っても車で30分程らしいけど。
ん?でも左京さんの車ってそこまで大型じゃないよね?この人数乗れなくない?浮かんだ疑問に首を傾げると、臣くんにお前はこっちなってヘルメットを渡された。それも私専用の。
「臣さん、弁当と水筒車に乗せるから貸してくれ」
「ああ。よろしくな」
「私と臣くんはバイク?」
「さすがに全員は無理だからな。なまえは後ろに乗って」
おお、臣くんとタンデムなんて久しぶり…!でも十座くんと万里くん一緒にして平気?むしろ、私が車に乗って十座くんと臣くんがタンデム…だと大変そうだから、ツーリングした方がいい気もするんだけど。同乗する左京さんと太一くんが目的地に着く頃にぐったりしてそう。
「大丈夫ッスよ、30分くらいだし。十座サンが助手席で万チャンと俺っちは後ろに乗るから、何とかなるよ」
そう言って太一くんはニカッと笑ったけど、ううん、不安は拭えませんね。心配してもどうしようもないし、変更することもなさそうだから大人しく臣くんのバイクに乗せてもらおう。というわけで、出発です。
「おー!確かにでっかいね、此処!劇団全員で来ても面白そう…!」
「否定しねぇけど、全員は無理っしょ。至さんとか拒否しそうだし」
「ああ…あと真澄くんもいづみさん連れて来ないと絶対来ないパターンだし、密さんと東さんも無理かな」
絶対楽しいことになると思うんだけど、それが叶う日は来なさそうだ。キョロキョロと館内を見て歩いてたらはぐれかけたらしく、呆れた顔した臣くんにちゃんとついて来いって手を引かれる羽目になりました。
はい、手のかかる幼なじみですみません…!それでも初めて来た場所って気になっちゃって仕方ないんだよね。いくら注意されても、視線は色んな所へ向いてしまうのです。でも今は臣くんが手を引いてくれてるから、はぐれる心配はなしですよ!胸を張ったら威張ることじゃない、と溜息つかれちゃったけど。…いい加減、愛想つかされないように気をつけなきゃな。いや、本当。
お昼にはまだ少し早い、ということで、奇跡的に誰もいないバスケットコートを占拠して一戦交えることになりました。私は左京さんと一緒に見学です。私達が参加すれば3on3ができるけど、左京さんが断固拒否してたからねぇ。そして年齢的にキッツイって真顔で言われた。いや、んなこと言ってますけど舞台やる体力あるんだからいけそうな気がするんだけどね。
あーでも運動と舞台だと、使う筋肉がちょっと違ったりするのだろうか。って一瞬思ったけど、そんなわけはないよな。どう考えたって使う筋肉はそうそう変わらないと思う。ストレッチとか、ああいうのは別として。
「…臣くんと十座くんがタッグ組むと、すっごい威圧感…」
「だが、勝負としては面白くなるだろ。七尾がどこまで食らいついていくかが見物だな」
「楽しそうですね、左京さん」
万里くんと十座くんを組ませるとバスケどころの話じゃないので、考えた結果、臣くんと十座くん・万里くんと太一くんという組み合わせになったらしい。しっかし、本当にタッパがある2人で組むとすっごいな。これ。後から入ってきた人、ちょっとビックリする気がするよ。十座くんはあんまり気にしなさそうだけど。臣くんはー…案外、そういうの気にしちゃうタイプだけどバスケ始まっちゃえば、然程気にしなくなると思うんだよね。
いや、でもこれは…左京さんが楽しそうにしちゃう気持ちもわかる気がする。どうなるのかワクワクしてくるね!
「臣クンと十座サンのコンビ最強なんじゃないッスか?!」
「くっそ、何で一度も勝てねぇんだよ!」
結果から申し上げよう。万里くん&太一くんコンビは、臣くん&十座くんコンビに負けました。それが相当悔しかったらしく、一戦だけの予定がええっと…三戦、やったのかな。それでも勝てなくて、今、昼食タイムです。
この感じだと食べ終わったらまたやるんだろうなぁ。下手すると勝つまで。まぁ、私も負けず嫌いな方だから勝てなくて悔しい2人の気持ちはわかるけどね。当人である臣くんはあはは、と笑ってて、十座くんはデザートのゼリーを黙々と食べてます。
「まぁ、タッパの差はあるだろうな」
「え〜…それはもうどうしようもないッスよ、左京兄〜」
「体格の差は今すぐどうこうできないからねぇ。あとはテクニックじゃない?」
「いやなまえちゃん。臣と兵頭に囲まれてみろよ、テクニックあっても抜けねぇって!」
「てめぇが下手だからだろう、摂津」
「ンだと?!」
「メシを食いながらケンカするなよ、2人共」
お昼ご飯を食べた後、何度も勝負してたけど結局、万里くんと太一くんは臣くんと十座くんに一勝もできないまま終わりました。チーム変えればいいのに、と呟いたら、それじゃ意味がねぇ!と万里くんに怒られた。気持ちはわからんでもないが、怒られたのは解せぬ。
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