永遠に
第27代魔王 シブヤ=ユーリ陛下が即位されてから、10年の歳月が流れた。彼の王が行った政策は、人間の国との間に出来た深い深い溝を徐々に埋めていった。まだ完全に、とは言えないが…『眞魔国同盟』に参加する国も増えてきている。
争いが起きることも少しずつ減り、あの頃とは比べ物にならないくらいに平和な時間が続いているんだ。今じゃ、軍人など名ばかりで。その剣の腕を見せる機会はないに等しい。
「…平和だなぁ…」
「ん?どしたの、急に」
「いや…ユーリが即位した頃や30年前に比べると、随分とこの国も平和になったなと思って」
「それが俺の目標だからね、王としての」
まだまだだけどね、と笑いながら書類に目を通していく我が主君。昔は事務作業や頭を使うこと、じっとしていることが苦手だったユーリだけれど。10年経った今では、自分から机に向かって重要書類に目を通してくれるようになったんだ。
これにはフォンクライスト卿が大喜びでね…あらゆる所から垂れ流し状態。全員でドン引きでした。本当に(昔は尊敬できる師匠だったのに)。
―――コンコン
ん?誰か来たみたいだな。
「はーい、どうぞー」
「失礼する」
「グウェンダル閣下?こちらに戻ってたんですか」
「久しぶり、グウェンダル!来るんなら白鳩便くれれば良かったのに…」
「急用だったものでな、時間がなかったのだ」
ここしばらくは特に何もなく、領地のヴォルテールに戻っていた閣下。まぁ、元々はヴォルテール城にいるのが当たり前の人だし。
それが白鳩便での知らせもなく、急用だとやって来た。…何か問題でもあったのだろうか?国交や政策のことで。けれど、その割にはさほど焦っているようには見えないけれどね。
「…ユーリ、閣下が来たことだし休憩にしましょうか。応接室が空いてるかどうかも確認してくるから」
「いや、そこまで深刻な話でもない。…それに用があるのはなまえなのだ」
「だってさ?なまえ」
「けれど、今は…」
「んなの気にしなくていーって!俺なら平気だし、何なら此処で話してもいいよ?」
「私は構わないぞ」
…と、いうわけで。そのまま話をすることになりました。
とりあえず、閣下もいらしてるし時間も良い頃合だったから、紅茶の準備でもしようか。何かお茶菓子になるようなものはあっただろうか。
「そういえば、コンラートやヴォルフラムはどうしたんだ?」
「コンラッドは城下の見回り中。ヴォルフラムは中庭で、グレタと遊んでる」
「最近の眞魔国は平和だけど、たまーに良くないことが起きるから」
「小さなことから取り締まっていかないと、後々大きな問題になるかもしれないじゃん?」
「…お前もそういう風に考えるようになったんだな…」
閣下がボソリと呟いた一言。チラリと顔を見てみると、珍しく目を見開いて驚いた表情になっていた。さすがのグウェンダル閣下も、ユーリの成長ぶりにはびっくりしているみたいだな。
世間話をし始めて、すっかり忘れていたけれど。グウェンダル閣下が此処に来たのは、何か話があったからではなかったか?私個人に、ということだからそこまで重要じゃないのかもしれんが…急用だと言っていた気がする。…このまま世間話を続けていても、問題ないのだろうか?
「紅茶が入りましたよ、どうぞ」
「ありがと、なまえ」
「すまない。頂こう」
「それでグウェンダル閣下。私に用事とは?任務ですか」
「任務ではないのだが…そのー…」
「?歯切れが悪いですね、貴方らしくもない」
いつもならきっぱり、すっぱりと用件を告げる方なのに。今回のグウェンダル閣下は、どちらかというと…ちょっと優柔不断な感じ?これまた珍しい姿を見ている気がする。
そんなことをのほほんと考えていた私だったが、この後の閣下の言葉に今世紀最高の叫び声に発することになるとは…。
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