手繋ぎ日和

―――どんちゃん♪どんちゃん♪
―――どんちゃん♪どんちゃん♪


「うっわぁ…すごい人だー!」
「この国で一番でかい祭らしいからな」
「たくさんお店が出てるのね。楽しそう!」
「屋台と言うらしくて、食べ物などを売ってるみたいですよ」
「賑やかだねぇ」
「おっまつりー!」


つい2日前に降り立った国。そこはたっくさんの人が住んでいて、賑やかで、楽しそうな国で。
ちょうど今日から国を挙げての大きなお祭りを開催するそうな。
お祭りが気になった僕達は、浴衣というものを着てお祭り会場へとやって来たのです!

最初は皆で回るのもアリかなー、と思ってたんだけど…この人混みの中、全員で動くのはきっと大変。
だから、個々で好きな場所を回って飽きたら家にそれぞれ帰るってことになりました。まぁ、それが無難だよね。ちょっと残念だけど。


「小狼くん!あっちに行ってみよう!」
「あっ姫!危ないですから走らないでください!!」
「オレも見てこようかなーモコナ、一緒に行こうか」
「行くー!」
「素早いな、あいつら…」
「あははっ確かにねぇ。さて黒鋼くんや。良かったら一緒に回らない?」
「…お前が良いなら構わねぇが」
「やた!」


内心ドキドキしながら誘ってみたんだけど、意外とすんなりOKをもらえてホッとしてます。
…そういえば、これ似合ってるのかなぁ?姫さんも、小狼くんも、ファイくんも、モコも可愛いと言ってくれたけれど…黒鋼くんは当然の如く、コメントなしでした。
や、まぁいつものことだし?そんなに気にすることでもないんだろうけど…やっぱり好きな人には何かしら反応してほしいんだ。
似合わないって言われたら―――泣きたくなるけど!

チラ、と横を歩く黒鋼くんを見上げる。
彼が着ているのは深い緑の生地の、とてもシンプルなもの。でもすっごく似合ってるし、すっごくカッコいい。
桜都国の時にも思ったけどさ、やっぱり黒鋼くんってこういう格好がよく似合うんだなぁ。
ちなみに僕が着ているのは、薄いピンクの生地に桜の模様が描かれているもの。帯は赤です。
柄を選ぶ時、桜都国で見た花だ!って即決したんだよね。僕。


―――カランコロン

「見たいもんはあんのか?」
「え、言ってしまえば全部見たい!」
「…お前なぁ…」
「だってこういうの初めてなんだもの。色々食べたいし、見てみたい」
「たく…仕方ねぇ奴」


そう言いながらも優しい笑みを浮かべてくれてて、僕は尚嬉しくなってしまう。
何だかんだ言いつつ、黒鋼くんは付き合ってくれるから。そんな優しい所に―――僕は惹かれるんだ。焦がれるんだ。

カランコロン、と下駄を鳴らしながら人混みの中を歩く。
見るもの全てが初めてで、珍しくて、気をつけようと思っているんだけど…キョロキョロしちゃうんだよね。
キョロキョロすると、前を歩く黒鋼くんのことを見失っちゃうから。…でも周りのものも気になるんです。


「ねぇねぇ、黒鋼くんの国にもこういうお祭りってあったの?」
「あ?…あぁ、あったな。ここまで盛大ではねぇけど」
「へー、そうなんだ。そういう時って、今日僕達が着ているような服、着るの?」
「こういう時だけってわけではねぇな。これが普段の服だった」
「普段からこういうの着てるんだ…歩きづらいのにすごいね」
「数え切れねぇくらい着てりゃあ、嫌でも慣れるぞ」


ふむ…それもそうか。


「あ、黒鋼くん!あれ何か―――」

―――ガッ!

「なまえ?!」


気になったものが何か聞こうと思った瞬間、石か何かに躓いたらしい。
履き慣れていない下駄、ということもあって…僕はそのままよろけてしまった。
服も着慣れてないし、動き辛かったから上手く受け身も取れそうになくて、このまま転ぶんだって覚悟してたんだけど―――衝撃は、いつまで経ってもやってくることはなく。
不思議に思って、瞑ってしまっていた目をそっと開くと…僕は黒鋼くんの腕の中にいた。えっと…これは所謂、抱きかかえられてる状態?


「…おい、大丈夫か?」
「え、あ、うん!大丈夫っ何ともないよ!!」
「ならいいが…気をつけろ」
「う、うん…ごめん。ありがと」


わわわわわ…っ!顔が近い!てか、鼓動が速過ぎて息が上手く出来ないっ!
もうこれはドキドキじゃないっバクバクいってるもん…っ!!!
何が何だかわからなくて混乱し始めたけど、このままくっついていたいと思ってしまう僕は…浅ましいなって思ってしまう。
これ以上、好きになったらダメだって思ってるのに。わかってるのに。
心が納得してくれないんだ。どうしても彼を求めてしまうし、今みたいなことがあれば嬉しくなってしまう。


「なまえ?どっか痛ェのか」
「ぅえ?!ううんっどこも痛くないデス…ッ」
「んな力いっぱい言わなくてもわかる…それより」

―――スッ

「?なぁに、手なんか出して」
「〜〜〜〜…手!繋いでやるって言ってんだよ…っ」
「……へ?」


おもむろに出された彼の左手。
彼曰く、手を繋いでやるからさっさと出せ…ということらしい。

一瞬、ポカーンとした後。全てを理解して、再び顔に血液が集中し始める。鏡を見なくてもわかる。きっと僕、今真っ赤になってる。


「な、何で急に手なんか…っ!」
「さっきみてぇに転びそうになるのはマズイだろ!あと…は、はぐれねぇようにだよ!!」


怒鳴るようにまくし立てた黒鋼くんの耳は、真っ赤で
。彼も僕と同じように恥ずかしいのかな、って思うと少しだけ笑えてしまう。…まぁ、それでも恥ずかしいのには変わりないのだけれど!
でもそれ以上に手を繋げる、という事実が嬉しいんだ。


―――キュッ…

「よ、よろしくです…!」
「おう…離すなよ」
「うん…っ」



(このリンゴ飴っていうの美味しい!)
(………なまえ)
(うん?)
(あー…何だ、その……浴衣!似合って、る………!)
(!!!あ、あり…がと……)
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