雪の中うずくまって
はらり、はらりと夜の真っ暗な空から白くて柔らかいものが降ってきた。それを手に取れば、手のひらの体温に吸い取られて只の水滴となってしまう。
「黒鋼、雪ー!」
前を歩く彼に叫べば、ああ?と不機嫌そうに彼は返事した。
「んなの見りゃわかる。寒ぃからさっさと帰るぞ」
ぶるぶると体を震わす彼と違って、なまえは嬉しそうに雪の中をくるくると回る。
「何してんだ、さっさと帰んぞ」
はあ…とため息をついた彼はこの場から離れようとしないなまえの腕を取ろうとした。だが
「ぶっ!!」
「へへへへへ、引っかかったなぁ」
あはははははと、指を指して笑うなまえの先には雪玉を顔面にぶつけられて、顔を赤くしている黒鋼の姿。その手には拳が握られている。
「よくもやりやがったな」
「へっへーんだ、やれるもんならやってみろー」
「てめえ!」
「きゃー」
今度は黒鋼が雪玉を掴んだ。その大きさはさっきなまえが投げたものよりも何倍も大きい。それをヒュンと投げれば、軽々となまえはよけた。そうすれば黒鋼がまた雪玉を作っては投げる。そしてなまえもよける。
「くそ…逃げ足の早ぇ奴だ」
「当てられるものなら当ててみなさいよ」
「! おい」
「え?…ぶっ!!」
ケホッケホッとなまえが咳き込んだ。油断した隙に黒鋼にとうとう雪玉をぶつけられたようだ。もろに顔面に食らって、口の中にも入ったらしい。一向に咳が止まらず、黒鋼の顔が一変した。不安になって、なまえの肩を掴んだ。
「おい、大丈夫か?」
と、声を掛けると、先ほどまで苦しそうに咳き込んでいたなまえが静かになったその時
「隙あり!」
「ぶっ!!」
2回目の攻撃。またしても黒鋼は顔面に雪玉を食らった。さっきまであんなに苦しそうにしていた奴はどこへ。相変わらず憎らしい程の笑顔でこっちを指差して笑っていた。
「ふざけんなよ、お前」
「わっ、ちょっとタンマタンマ」
「っておい…!」
バランスを崩した二人は勢いよく雪の中に崩れた。尻餅をついたなまえの上に覆い被さるようにして黒鋼が
その距離は数センチ
「わ、悪ぃ。怪我ねぇか?」
すぐさま黒鋼はなまえの上から退こうとした。のだけど、そうはいかなかった。なまえがぎゅっと抱き付いてきたのだ。
「もう少し、このままでいさせて?」
雪の中うずくまって
返事の代わりに、彼の大きな手がなまえを包み込んだ。
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