万里と太一の場合
大好きな臣クンと、大好きななまえチャンが早くくっついたらいいのにって割と早い時期から思ってたんだ。だって、明らかに両想いなのがわかったから。
「万チャ〜ン、臣クンとなまえチャンはいつつき合うのかなぁ」
「ンなの俺に聞くなっての。ま、確かにじれってぇけど」
「両想いだよね?絶対あの2人、両想いだよね?!」
「誰が見てもそうだろ。気がついてない奴の方が少ねぇんじゃねぇのか?」
やっぱりそうだよね。俺の勘違いとかじゃないよね、良かった。そしてじれったいって思ってるのは、皆一緒だったりするのかもなぁ。
2人共、自分の気持ちに気がついてないわけじゃない。臣クンもなまえチャンも、確実に恋をしてるってことに気がついてる。俺は当人じゃないし、2人に聞いたわけでもないけど、それでもそれだけは自信持って言えるもんね。
もう一度、ポツリと早く告白しちゃえばいいのに…って呟いたら、万チャンがいやに真剣な顔で「でもさ」と言葉を紡いだ。
「臣達にも考えっつーか…思うことがあるんじゃねぇの?」
「え?」
「だから、第三者である俺らが口挟めるもんでもねーだろ」
「万チャン…」
そう。万チャンはそう言って、スマホに視線を落とした。きっとその時の俺には、万チャンの言葉全部を理解できていなかったと思う。でも何となく、余計な口出しはしない方がいいんだろうっていうのは…さすがにわかったから。そしてその通りかもな、とちょっと思ったから。
だから2人が結論を出すその時まで、ただ見守るだけにしようって決めたんだ。…って話をしたのっていつだったっけ。そんなことを思い出しながら、運ばれてきたアップルパイにフォークをさした。
「あ、うま。万チャンも頼めば良かったのに」
「俺はコーヒーだけでいい、……んぁ?」
「どったの?誰か知り合いでもいた?」
もごもごとアップルパイを咀嚼しながら顔を上げると、万チャンの視線は窓の外に釘づけ。俺の言葉もしっかり届いていたらしく、彼は窓の外を指差してあれ、と呟いた。あれ?あれってなに、どれ?
指先を辿り、目を凝らしてみると―――そこには臣クンとなまえチャンの姿。
別段、珍しい組み合わせじゃない。寮でだってよく2人でいるのを目にするし…ちょっと前はその頻度はガクッと減ってたし、更に言えばなまえチャンは帰ってきてすらいなかったけどね。でもいつの間にかこのツーショットが、再び当たり前の光景になっていた。
それは万チャンだって知ってるはずだし、2人の姿を見つけただけであんな疑問形の声を上げたりするのかなぁ。だから俺はいつも通りの光景ッスね、って返して視線を逸らそうと思ったんだけど、万チャンが声を上げた理由は2人が一緒にいたからじゃない。それは別にあったんだ。
「手、」
「へ?て?て、って…手?それがどうし―――ぇえ?!」
「バッカ、太一!ここ店内だぞ!!」
「ご、ごめん…!」
でも大声出したくもなるでしょ?!だってあの2人ってばて…手を!繋いで歩いてるんすよ!楽しそうに笑いながら!!
あれが幼なじみとしての距離感だって言われても、さすがの俺でも違うでしょ!!ってツッコミ入れると思う。うん、絶対。
「え、えー…万チャン、俺っち頭が追いついてないんスけど」
「安心しろ、俺もだ。…けど、十中八九『そういうこと』だよなぁ?」
もう一度だけ、と言うように窓の外へ視線を投げ、すぐにまだコーヒーが半分ほど残っているカップへと戻す。口調はどこかからかうような感じだけど、万チャンの表情はどこまでも穏やかだ。心底ホッとしてるっていうか、良かったなって思っているような…そんな表情。そっか、万チャンも思う所があったみたいだったもんね。2人の関係性。
いつかちゃんと報告してくれたりするのかな、つき合ってること。でもその前に俺が我慢できなくって臣クンに突撃しちゃいそう。したら迷惑かな?だけど嬉しそうに笑う臣クンの顔、見たかったりする。もちろんなまえチャンの笑顔も見たい。それを考えると、やっぱり突撃したいなぁ。
臣クン達はもう帰るのかな?それとも遅くなるんだろうか。もし、寮に帰って2人がいたら…聞いてみようか、つき合い始めたんスか?!って。
「放っておけよって言いたい所だけど、ぶっちゃけ俺も気になるしアリかもな」
「お、万チャンも乗り気ッス!」
「気になるのは本当だしな。それ食い終わったら帰んぞ」
「うん」
ねぇ、臣クン。なまえチャン。
今2人は―――幸せっすか?
(臣クン、なまえチャン!!)
(おかえり。太一、万里)
(おっかえりー)
(ただいまッス!)
(ただいまー。んで本題なんだけどさ、)
(ん?どうした)
(臣となまえちゃん、ついにつき合い始めたのか?)
(うおお、めっちゃ直球でくるね君…)
(あー…うん、少し前からな)
(わー!おめでとッス2人共ー!!)
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