気遣い少女の休養日

数日前から体調がよろしくないなぁ、とは感じていたんです。でも近くの町まで数日かかると聞いていたし、野宿が続いて皆さんの気も立っていらっしゃったので言いづらかったと言いますか…というか、ご飯を食べて眠れば治るだろうと軽視していた部分もあったんですよね。そこまで身体が弱いわけではない、と自負していた部分もありますし。だから…大丈夫だと、思っていたんですけれど。





 side:悟浄


「―――なまえちゃん?」
「え…?」


昨日の晩から、だったか?なまえちゃんの様子が何かおかしい気がした。いや、笑ってるし話してるし、ちゃんとメシも食ってんだけど…何つーか、『何かが違う』って漠然としたもんだから上手く説明できねぇんだけどよ。とにかく違うって気がずっとしてて、今日も―――朝からボーッとしてるように見えたんだ。時折、何かに耐えるように眉間にシワまで寄せて。だから名前を呼んでこっちを向いてもらったんだけど、…どうやら俺の勘は当たっていたらしい。
ちょっとごめんな、と声を掛けてから額に手を触れてみれば、驚くほどに熱くてびっくりしたわ!これ完全に熱出してんじゃねーかこの子!!


「あの悟浄く、」
「おい八戒、次の町まであとどんくらいだ?!」
「え?あと2〜3時間で着けると思いますが…」
「飛ばせ、可能な限り飛ばせ。なまえちゃん、熱あるわ」
「!わかりました。悟浄、なまえをしっかり支えておいてください。―――飛ばしますよ!」


グッとアクセルを踏み込んだジープは、さっきよりも格段にスピードを上げて大草原を突っ走る。今だったら刺客が来てもそのまま撥ねる気がする、八戒なら。スピードを上げる直前に抱き寄せた彼女の身体は、額に負けず劣らず熱くて。よくこんなになるまで我慢してられたな、ってくらいだ。

(ったく…ウチのお姫様は本当に我慢強いこって)

普段だったら急にスピードを上げた八戒に文句を言う三蔵と悟空も、今回ばかりは何も言わなかった。俺が熱あるって言ったのもあるし、早く布団で休ませてやりたい気持ちもあんだろーな。特に悟空は昔っからなまえちゃんに懐いてたし。三蔵も何だかんだ言って気遣ってる節があるからよ。

ふっと視線を移した先に映ったのは、俺の膝の上でぐったりとしているなまえちゃんの姿。さっきまでは顔にも出さないように頑張っていたらしいが、バレて観念したのか今は眉間にシワを寄せて辛そうに呼吸を繰り返していた。…これ、大分辛かったんじゃねーの?ホント。
きっと野宿が続いてたのもあって、心配かけねぇように黙ってたんだろうけど…倒れる寸前まで我慢するのはよろしくねーだろうが。良くも悪くも我慢強いこの子は、誰かが気づかないとそのままにしておくことも少なくない。だからなるべく目を光らせてたつもりだったんだけどなぁ。
普段はしっかりしてて、そんで他人の変化には目ざとい程に気がつくのに、自分のこととなると途端に鈍く―――っつーより、後回しにするクセがあんだよなぁ。それは出会った頃から少しも変わってない気がする。そんなこの子も可愛いと思ったりもしたけど、でもやっぱさ?辛い時は辛いって言ってもらいてーもんだよな。男としては。

飛ばしに飛ばした結果。2〜3時間かかるはずだった所を1時間半に短縮することができた。宿もすんなり取ることができたから、案外早くなまえちゃんを休ませることができてホッとしたわ。あ、宿のおばちゃんに体温計借りて熱を測ってみたら何と39.8度だったんだよな。…ほんと、この高熱でよく動いてたよなーこの子は。
熱以外の症状は当人が寝ちまってるからわかんねぇけど、多分、風邪だろうってのが八戒の見解だ。+疲れもあんだろう、って。ここ最近は刺客の数も段違いに増えてたし、朝も昼も夜も関係なく襲われてたからなぁ…まともに睡眠とれてなかったのも関係してんのかもしんね。
とりあえず、なまえちゃんの容態がよくなるまではこの町に滞在することが決まったから、ゆっくり休ませてやろう。ついでに俺らもゆっくりしちまおーぜってことになったけど。


「ん…」
「あんまり無茶すんなっつーの。…早く元気になれよ?」
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