02
side:三蔵
あのバカ女がぶっ倒れやがった。アイツは昔からそうだ、人のことに関しては敏感なくせに自分のこととなると途端に鈍くなりやがる。怪我に関しても俺達が気がつかなければ、適当に処置をすることだってあるくらいにおざなりだ。かと言って、俺達が同じことをしようもんなら烈火の如く怒るっつー、至極面倒な性格をしているんだが。
―――ガチャッ
「なまえ、入るぞ」
アイツの容態が良くなるまで町に滞在することを決めたはいいが、あまりにもなまえの熱が高いらしい。普段ならそういう時は八戒の奴が付きっきりで看病してることが多いんだが…ここ最近の襲撃の数を考えて、全員で交代で看病することに決まった。面倒くさいことこの上ねぇが、断ったら断ったで八戒の小言がうるせぇからな…仕方ねぇ。そういう理由で、俺は今、食事に行っているアイツらと交代してなまえの部屋にいる。
ノックをしねぇのはいつものこと。一応、声は掛けて入ったが、案の定、ぐっすり眠り込んでいた。薬を飲ませた、と聞いているから、恐らくはそれが効いているんだろう。ガタガタと椅子を引いても目を覚ます様子はねぇしな。かなり深い眠りについているらしい。…まぁ、熱がある時は睡眠をとるに限る。寝不足は多少なりともあるだろうからな、この際、それを解消すんのも悪い話ではねぇだろ。
引っ張ってきた椅子に座って、ひどく苦しそうに呼吸をしているなまえを見つめる。ったく、…変なとこ我慢強くなりやがって。ジープで移動中に悟浄が気がついたから良かったものの、襲撃中にぶっ倒れたらどうするつもりだったんだ、こいつは。そう胸の内で呟いてみるものの、こいつはきっとその時はその時だ、と困ったように笑うんだろうな。
「さ、んぞう、さま……?」
「…起こしたか?」
「いいえ、目が覚めただけです…何か用ですか?」
「熱出してる病人の所に来る用なんざ、1つしかねぇだろ」
ふん、とぶっきらぼうに言葉を投げれば、一瞬だけ驚いた表情になった。だが、すぐに嬉しそうに目を細めてありがとうございます、と口にした。
「さっさと治せ。そうでねぇと置いていくぞ」
「置いていかれるのは嫌だなぁ…少しくらい待ってくださいな」
「―――…仕方ねぇ、今回くらいは大目に見てやるよ」
温くなっている手拭いを奪い取り、テーブルの上に置いてあった氷水の入った桶に浸す。それをきつく絞って、再び額に載せてやれば気持ち良さそうに目を閉じた。まだ頬も真っ赤だ、熱は相当高いのだろう。薬を飲んでいるのなら、徐々に下がり始めるだろうが…それまでは辛いかもしれんな。
コイツは人一倍我慢強い部分があるからそれでも辛いとか、そういう弱音は吐かねぇだろうが。
「…ただ寝ているだけですから、1人でも問題ありませんよ…?」
「お前、その状態で刺客の襲撃があったら何とかできるのか」
「う……」
「ぐだぐだ御託を並べてねぇで、さっさと寝ろ」
「…はい、すみません」
そうだ、さっさと寝て、さっさといつも通りのなまえに戻ればいい。そうじゃねぇと調子が狂うんだ。
「今度、無茶しやがったらただじゃおかねぇぞ。覚えておけ」
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