小さな君でもあいらぶゆー!
…私はどうしてこうなってしまったのでしょうか。何か変なものを食べた記憶はないんだけれど、朝起きてみたら―――
「なまえが、小っちゃくなってる?!」
「ドーモ、新一クン」
そう。いつぞやの新一のように、私の体は7歳児になってしまっていましたとさ。めでたし、めでたし………なわけあるかアホ。何だこのベタな展開は!
せっかく新一があの黒の組織とやらをぶっ潰して、ようやく元の体に戻れたというのに…!それなのにどうして今度は私の体が縮んでしまってるんだ納得できんぞこの野郎。
そんな私の気持ちを知ってか知らずか、新一はだらしない…けど、とても嬉しそうな顔をして私の体を抱き上げている。あれだ、コイツ絶対将来は親バカになるタイプだ。それも俺の娘は嫁にやらん!…とか言っちゃうやつ。
まぁ、それはともかく、だ。私がこうなってしまった原因と、元に戻る術をどうにかして探さなくちゃいけないな。こういうのは元・科学者である志保に聞くのが一番良さそうだ。…あ、そうそう。彼女も無事に元の姿に戻ったよ。今でも博士の下で暮らしてるけどな。博士の食生活が心配なのと、何気に居心地がいーんだと珍しく穏やかな笑顔で教えてくれたのは記憶に新しい。
…と、そんなことを考えてる場合じゃない。顔面崩壊しかけてる新一を現実に引き戻して、早いとこ博士の所へ行かないと。
「おやまぁ、…これはまた」
「あら、なまえ。ずいぶんと可愛らしい格好になったわね?実験は成功かしら」
「実験?…おい宮野、それどーいう意味だ?」
ぽかーんとしてしまってる私の代わりに新一が問いかける。それに対して返ってきた答えにまた私は口をあんぐり開ける他なかったのだが。
志保曰く、ちょーっとお試しで作っていた薬を私が飲んでいた飲み物に混ぜてみた…ということらしい。副作用はないものだから体に悪影響はない、と教えてくれたけど、うん、私はそっちより内緒で実験されていたことに驚きとショックを隠せないよ志保サン。確かに誰かで効果の程を見たいとは思うだろうけれどもさ。小さくなって日常生活に支障が出そうな私はどうしてくれるんデスカ。
この格好じゃ探偵の仕事も出来やしない…今日、依頼者と会う予定がなくて心底良かったと思うぜ。本当に。
「それで?私の体は元に戻るのか?」
「ええ、それは大丈夫。明日にはすっかり元通りになっているはずだから安心なさい」
明日、か…まぁ、1日くらいならどうにかなるかな。それを聞いてホッとした私はお茶だけ頂いて、早々に家へと戻ることにした。…のだけど、それを許さなかったのは意外にも過保護な新一だった。
新一…というか、まだコナンだった彼に告白をされた後。私は博士の家を出て一人暮らしを始めていたんだ。変わらず米花町にはいるものの、此処からは大分離れた所のアパートを借りたのです。そこまで1人で帰るということ、そして小さな体のままでは生活するのが難しいだろうということで…半ば無理矢理、工藤邸でお世話になることになりました。
あの、ものすっごく不本意なんですけどコレ。
どれだけ嫌がっても新一が引いてくれなかった為、渋々その申し出を受けることにした。博士もその方が安心じゃ、とか言うし。何つーか、断り辛かったんだ。というか、断り続けたとしてもそのまま連れてこられたと思うけどね。
「…別に1人で問題ないのに、」
「オメー、その体じゃ料理も出来ねぇだろ」
「確かに難しいけど、新一だって一切料理出来ないだろ。どーすんの」
ギロリ、と渾身の睨みを向けてみるものの、子供の姿じゃ一切怖さはない。ちょっとした上目遣いだ。けれど、新一には効果てき面だったようでうっ、と狼狽えている。…まぁ、実際は私の睨みではなく言葉の方にダメージを受けてただけだったんだけどなー。
新一は一人暮らしをしていたというのに、一切料理が出来ないそうだ。お前、そんな状態でよく暮らしてこれたな…普通だったら栄養失調なってんぞ。今、そんなこと言っても仕方ないけどな…問題なのは今日のご飯だ。さすがに昼夜全部を外食にするのはよろしくない…かと言って、料理が作れる状態でもないし。さぁ、困ったもんだね。
とりあえず、朝から何も食べてないし昼ご飯を食べに行くとしようか。新一にそう提案すると、あっさり承諾。でも出かけるのは着替えてからな、と苦笑された。その言葉で自分の体を見てみれば、パジャマ代わりに着ていたTシャツ1枚の姿。しかも元の姿の私が着ていたものだから、子供にはめちゃでかい。…うん、こんな姿じゃ外に出られるわけもないね。
「俺の小さい頃の服がまだあったから、それ着ろよ。女の子でも着られるやつ選んでやっからさ」
「おー、よろしくー…」
しばらくして戻ってきた新一の手には、小さなパーカーとオーバーオール。ん、これなら私が着てもおかしくはないな。
さっさと着替えて、お昼を済ませ、私達は早々に工藤邸へと戻ってきた。何故なら他人の目が何だか気になって仕方ないから!
別にさ、ちょーっと歳の離れた妹だと思えばいいんだろうけど、…あれだよね、何もやましいことしてなくてもこういう時って他人の目、気になっちゃうもんだよな。何かすげー落ち着かねぇんだ。それは新一も一緒だったみたいで、帰りたいと言えばすぐに頷いてくれたのです。
「…おい、何やってんだ新一」
「いやー、オメー抱き心地いいなぁ…」
「お前はあれか?ロリコンなのか?」
「ちっげーよバーロー!」
うっかりドン引きしそうになっていると、即座に否定された。何だ違うのか、それはちょっと安心したぞ。
彼氏がロリコンとか、今更知りたくない事実はいらない。……ん?もしそれが本当だったら、私は完璧捨てられる立場じゃないか。だって私は年相応の顔をしているはずで、決して童顔ではないからだ。そして新一よりも年上。コイツがロリコンだったら私は捨てられる…そういう図式が常識的に成り立つのだ!
…うん、自分で言ってて落ち込んできた。
「子供は嫌いじゃねーけど、別にロリコンじゃねぇよ。なまえ、…オメーだからこの姿でも好きなんだ」
「…ああそうかい」
思いもよらない告白に私の顔は真っ赤になっていることでしょう。
ああでも、…周りを気にすることなく甘えられる、というのは…唯一、子供の姿になって良かったと思える点かもしれないなぁ。
どうせ明日までこの姿なんだし、思いっきり新一に抱きつくとしようじゃないか。有言実行!とばかりにギューッと抱きつく…というより、しがみつけば頭上で嬉しそうに笑う気配がした。
「オメー今日はすげぇ素直だな!いつも以上に可愛いじゃん」
「うるさい」
「…俺はどんな姿になっても、オメーが好きだぜなまえ」
子供相手に耳元で囁くな!頬にキスするな馬鹿野郎ーーーーーーっ!!!
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