最遊記

最遊記長編『その瞳は哀しみを宿して』:三蔵一行

―――ガチャッ

「あ、良かった。まだ皆さん、起きてらっしゃいましたね」
「明日もこの町に滞在予定だかんな、…って、なに持ってんだ?マグカップ?」
「あっチョコの匂いがするっ!」
「本当だ、甘い香りがしますね。どうしたんです?」
「んー?ホットチョコレートをね、作ってきたんです」
「ホットチョコレート…?」
「あら、三蔵様は飲んだことありません?チョコレートを溶かしただけの飲み物なんですけど…はい、どうぞ」
「…おう」
「うわ、ウマそー!なぁなまえ、飲んでいいか?」
「ええ、どうぞ」
「―――ん、これ美味い。そこまで甘くねぇし」
「ほう…イケるな」
「これお酒入ってます?…ブランデー、かな」
「わ、よくわかりましたね!悟空はお酒に弱いから入れてませんけど、3人のには入れてますよ」
「あー、だからか」
「3人だけズリィ!俺も同じやつ飲みてぇ」
「仕方ねーだろ、お前はおこちゃまなんだから」
「うるっせーよ!ゴキブリ河童!!!」
「ああもう、悟浄くんも悟空もやめなさいな…」

「ねぇなまえ。とても美味しいんですけど、急にどうしたんですか?それも僕達の分だけ…」
「あー…今日がバレンタインだったので」
「…そういや、そうだったな」
「フン、下らねぇ」
「綺麗に飲み干した後に言うセリフじゃねぇっつーの」
「本当はケーキとか作りたかったんですけど、町に着いたのが大分遅かったでしょう?」
「途中、刺客の襲撃がありましたからねぇ」
「だからすぐ作れるホットチョコレートにしたんです。…すみません、間に合わせで」
「いいえ。その気持ちだけで嬉しいですよ」


(簡単なものでも、貴方が気持ちを込めてくれているのはわかりますから。)
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