いつか、好きになれるだろうか

(『ガラスの靴を捨てたシンデレラ』その後)

クリスマスなんてどうでもいい。そう思っていた時期も、確かにあった。だけど、気がついたら面倒なイベント諸々を楽しみにしている自分がいて…ちょっとビックリしたんだよな。

「大和くん!」
「お疲れー。走ってこなくても良かったのに」
「は、走りますよ…!だって30分も遅刻…!!」
「さっきまで近くのカフェにいたし、台本読んでたから平気だって」

あーあー、鼻も頬も真っ赤になっちゃってるじゃん。ちゃんと連絡もくれてるし、そんなに焦らなくてもいいのにな?30分遅刻したくらいで、俺は逃げたりしないっての。
そう言葉にしても、真面目な彼女は眉間にシワを寄せて謝罪の言葉を口にする。俺は頑固だなぁと、苦笑を浮かべるしかできない。まぁ、そんな所も可愛いんだけどさ。

「とりあえず行くか。ん、どーぞ?お姫様」
「懲りずに言いますけど、…そのお姫様扱いやめませんか…?!」
「こっちも懲りずに言いますけど、そろそろ慣れてくれませんか?」

くつくつと笑いながら真似をしてみれば、一瞬だけキョトンとした顔になって、でもすぐにもっと顔を赤くしてそっぽを向いてしまった。拗ねちまったかなー、これ。
ごめんな、と言葉にする代わりに、繋いだ手を更にギュッと握り、指を絡ませた。するとビクッと体を震わせて、そろそろとこっちを見上げてくるから可愛くて仕方ない。ゆるゆると表情が緩んでしまう。多分きっと、今の俺は情けないくらいにデレッとした顔をしてると思う。

「嬉しそうですね、大和くん」
「そりゃあな。デートするの久しぶりだし、クリスマスデートなんて初めてだろ?」
「ああ…言われてみれば。この時期は忙しいですから」

そう。毎年、歌番組の収録やらライブやらが入ってて、クリスマス当日は忙しく朝から晩まで走り回ってる。でも今年のライブはイブに行われ、今日は言っていた仕事は午前中に行われたドラマの顔合わせのみだった。
まぁ、彼女の方はそう上手くはいかなくて夜しか時間合わせらんなかったけど…去年までのことを思えば、かなり贅沢をさせてもらってるんだよなぁ。
仕事があるのはもちろん有難いし、嬉しいんだけど、こうして2人の時間がとれるのも嬉しいんだ。

「ひとまずメシ行くか」
「はい!お腹空きました…」
「なに食いたい?イタリアンとか?」
「んー…いつものお店がいいです」
「いつものって、あそこ居酒屋だぞ?クリスマス要素ゼロじゃん」

せっかくのクリスマスデートなんだし、いつもと違う店とか…そういうのしたくねぇのかな?この子は。

「別にいいんです、特別なことなんてしなくても」
「なんで?嫌いじゃないよな?こういうイベント」
「今は割と好きです。好きですけど、…大和くんがいてくれれば、別にいいんですもん。私」
「…破壊力抜群なセリフ吐いた自覚、ある?お前さん」

ジト目で彼女を見下ろすけれど、焦ることもなくいたずらっ子みたいな笑みを浮かべて、「さあ?」とか言いやがった。確信犯かこの野郎。
だんだんと積極的になってきたなぁ…心臓に悪いから、少しずつにして。マジで。

「……俺も、お前さんがいてくれればなんでも楽しいし、嬉しい」
「…っ大和くんこそ、急にデレ爆弾落とさないでください!」
「お返しだよー。てか、デレ爆弾ってなんだよ!」

手を繋いで、イルミネーションで彩られた街を2人で笑いながら歩く。ただそれだけなのに、どこか満足している自分がいた。
ああ、やっぱり一緒にいられるだけで満たされる。それは何年経っても変わらない、ただひとつの真実だ。

「焼き鳥とかからあげ食べたいです!あと焼きおにぎり」
「冬だしおでんとかねぇかな、食いたい」
「なかったら次のお休みの日に作りましょっか」
「あー、それもいいな…もしくは、寮で鍋パーティー」
「いいですね、楽しそうです」

来年も、再来年も、その先も―――こうして笑いながら、お前さんといられたらいい。


(Twitterより)
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