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最初は、ただ見てるだけ。浅野くんや小島くんや茶度くんと楽しそうに笑っている姿を、遠くから。有沢さんと口論していたり、朽木さんや井上さんと漫才のような会話をしているのを、視界の端に留めていた。
きっと、羨ましかったの。先生達に不良だ、とか言われながらも…それを上手く流している彼が。見返すように勉強を頑張って、上位に入っている彼が。たくさんの人と、楽しそうにしている彼が。
彼―――黒崎くんを目で追うようになった理由は、最初はただの羨望。
私に持っていない"何か"を持っていた黒崎くんが、ただ羨ましかったんだ。けれど、それはどんどん形を変えていく。羨望であったはず気持ちが、今では恋情へと変わり、私は…苦しいくらいの恋を、している。
「ふう…」
黒崎くんへの恋心に気がついて、早くも2ヶ月が経とうとしていた。相も変わらず、彼をそっと見つめるだけの日々が続いている。話しかけようと思ったことがないわけじゃない。…でも人と話すことが得意ではない私は、どうしてもあと一歩が踏み出せない。
私は、いつでもそうだ。幼い頃から人と接することが苦手で、友達を作ることが出来ない。1人で過ごすことが嫌いなわけではないから、何とも思わないけど…それでも休み時間に楽しそうに話している人達を見ると、やっぱり淋しいと思ってしまう。
…高校に入るまで、こんなこと思ったことないのになぁ。やっぱり黒崎くんという眩しくて、太陽のような人に出会ったからだろうか。
―――カタンッ
賑やかな教室で、たった1人でお弁当を食べるのはさすがに辛い。今日は何処で食べようか。天気も良いし、中庭で食べたら気持ち良さそうだよね。
「(こういう時、誰かに声を掛けられるような性格だったら…もっと高校生活、楽しいって思えるのかな)」
「あっねぇ、みょうじさん!」
「……へ?」
急に名前を呼ばれ、中途半端に立ち上がった状態のまま固まってしまった。声を掛けてきたのは、可愛い可愛い井上さん。にこにこ笑いながら私を見ている彼女の隣には、有沢さんもいる。彼女達の後ろには、茶度くん・小島くん・浅野くん・朽木さん…あ、黒崎くんまでいる。…え、これは一体どういう状況?
いまだに中途半端な格好のまま、私はポカンとしてしまっていて。「な、何でしょうか…?」と、か細い声を出すのが精一杯。
「みょうじさん、いつも1人でお昼食べてるじゃん?良かったら一緒に食べない?」
「今日はね、天気が良いから屋上で食べるんだ!みょうじさんも行こうよっ私、ずーっとみょうじさんとお話してみたかったんだ」
「迷惑じゃなければ、一緒に食べようよ」
「可愛い女の子が増えるのは大歓迎だよー!!!」
「…ム」
「一緒に食べましょう、みょうじさん」
「あー…いきなり言われてびっくりしただろうし、多分喧しいだろうけど…その、」
来いよ
(え、と…!じゃ、じゃあお邪魔しますっ……!!!)
(やったぁ!行こ、行こ!!みょうじさんのお弁当なぁに?私は食パンとあんこ!)
(え?!ざ、残念ながら、私は普通のお弁当です…っ)
(あー…気にしないで。織姫のお弁当が少し特殊なだけだから)
((少しだけ、近くなったような…気がします))
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