05

もうすぐ、夏休みが終わる。夏休みの間、一護くんとは宣言通り、ほとんど会えていない。一度だけ、花火大会で顔を合わせたくらいかな。
またしばらく、いなくなる。そう告げられて、私は頷いた。いってらっしゃいって、必ず帰って来てねって。帰って来たらすぐ連絡する、とだけ約束してもらったんだけど…携帯は、いまだに彼からの着信を告げない。

「…まだ、かなぁ一護くん」

織姫ちゃんと茶度くん、あと石田くんも一緒だから…とは聞いているし、彼は必ず約束を守ってくれる。だから、そこまで心配しないでいようと思っていたんだけどな。でもよくよく考えたら、心配しないっていうのは無理な話なんだよ。何をしに行っているのか、知ってるんだもん。危険な目に合わないわけがないんだから。
早く、貴方の顔を見て、声を聞いて安心したいよ一護くん。

携帯をギュッと握り込んで、ベッドの上で丸まるとピンポーン、と来客を告げるチャイムが鳴り響く。
ドアを開けたお母さんの「あら、まぁ!久しぶり!」って声と、私の名前を呼ぶ声が聞こえたのはほぼ同時。

「んもー…なぁに?お母さん。大きな声出して……」
「…よ。なまえ」

目の前にいたのは、会いたくて会いたくて仕方がなかった人。

「絢子さん、ちょっとなまえと出かけてきてもいいっすか?」
「ええ、もちろん!」
「なまえ、行こうぜ」
「あっう、うん!」

サンダルを履いて、お財布も何も持たないまま私は一護くんと外へ出た。チラリ、と見上げた一護くんは、とても元気そう。怪我とかもしていなさそうだし。雰囲気も以前と何も変わらないから、きっと上手くいったんだと思う。ルキアちゃんは…一緒じゃないのかな?

「…もう夏休みも終わりなんだな」
「うん」
「ごめんな、全然会えなくて。付き合い始めたばっかだっつーのに…」
「淋しくなかったわけじゃないけど…でも、帰って来てくれたから」

約束をちゃんと守ってくれたもん。私はそれだけで十分……ってわけではもちろんないんだけど、でもそれも正直な気持ちだから。
会えないより会えた方が、そりゃ嬉しいけどね。だけど、一護くんが元気でいてくれているんなら、私は良いんだよ。少しくらい、会えない日があっても。

だって、これからは飽きるくらい一緒にいてくれるんでしょう?

くるっと彼の方を向いて、そう笑顔で言えば。彼も嬉しそうに笑いながら、当たり前だろ、って答えてくれる。その言葉にまた笑顔を濃くすれば、突然腕を引っ張られて、勢いのままに抱きしめられた。
ギュッと、少し痛いくらいに抱きしめられて…呼吸を、忘れそうになる。

「一護くん…?」
「無事に、助けられた。もうアイツがこっちで暮らすことはねぇけど、でも…アッチで元気に暮らしてる。ルキアから伝言。"ありがとう"だと」
「…そっか。ルキアちゃん、ちゃんと生きてるんだね」

良かった、と零れ落ちた言葉。本当に良かった…一護くんも、ルキアちゃんも無事で。
2人が無事ってことは、一緒に行った織姫ちゃん、茶度くん、石田くんも無事だってことだもん。

「一護くんが帰って来てくれて、無事でいてくれて…良かった……!」
「ん。ごめんな?心配かけちまって…」

彼のシャツをギュッと握りながら、子供のように泣きじゃくる私。泣きやまなきゃ、とは思うんだけれど、涙が次から次へと零れ落ちてきて、全く止まる様子がない。
まるで、あの雨の日の時みたい。私が知らない一護くんを知って、淋しさで泣いてしまった時…あの時も、なかなか泣きやめなくて。でもあの時より、今の方が一護くんは慌ててる気がする。

「ごめん、なまえ……頼むから、」


泣くなよ


そっと目尻に落ちた優しいキスに、私の涙はピタリと止まった。

「…おかえりなさい、一護くん」
「おう。…ただいま」
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