光り輝く幻想曲
Re:valeの千さんへ仕掛けたドッキリ。結論から言いますと、それはもう引いてしまう程の大成功だったそうです。
嘘だとわかっているアイドリッシュセブンの皆さんも、二階堂さんの迫真の演技に思わずこれは本当なんじゃないか―――そう思わざるを得なかったそうな。うん、ちょっと見たかったです。そのシーンを。
「万、久遠…?!」
「バンさんっ久遠!!!」
そして満を持して(?)、万理さんと私が彼らの楽屋にお邪魔したまでは良かったものの…今、私は百さんにギューッと抱きしめられています。千さんは万理さんに傷の具合は、とか、今までどこにいたのか、とかを聞き出している真っ最中。
「わーっ!目の色と髪の長さは違うけど、本当に久遠だ!」
「…はい。一応、本人です」
「一応ってなに!…でも久しぶり、久遠。また会えるなんて思わなかったよ」
捜してたけど、必死に捜してたけど見つからないかもって諦めてたんだ。
そう言って百さんは眩しい程の笑顔を見せてくれたの。あの時と変わらない、陽だまりみたいな笑顔。いつだってその笑顔に勇気づけられていたんだ。私は。思わず、ごめんなさいと謝罪の言葉が零れ落ちる。謝ったってどうしようもないし、何も変わらないけれど、それは…本当に自然に零れ落ちていった。
そのままTRIGGERにもアイドリッシュセブンにも謝罪の言葉を告げて、また少し―――肩が軽くなったような気がする。
(この安堵はきっと、ただの自己満足なんだろうけど)
そうだとしてもRe:valeが、TRIGGERが、アイドリッシュセブンが、万理さんが、紡くんが大丈夫だよって笑ってくれるから、何だか私まで笑顔になってしまう。この人達の傍なら、と思ってしまう。安心して、身を委ねたくなってしまう。いつの間にかここが私の居場所だと、認識してしまっているみたい。
「お久しぶりです、千さん、百さん」
「うん。久しぶり、久遠。元気そうね」
「はい」
ようやく私を解放してくれた百さんが、もっとゆっくり話していたいけどもう時間が〜!と悔しそうな顔をしていらっしゃる。でも嬉しそうにも見えて、この人はもう大丈夫だと直感的にそう思った。
きっと、今度こそ歌える。2人の歌を待っているファンへ、ちゃんと届けられるって。
「久遠っこけら落とし終わった後に打ち上げやるから、絶対参加して!ね?」
「え、」
「絶対だよ!百ちゃんとの約束だからねっほら、指切り!」
あ、はい。反射的に小指を出すと、百さんの小指が絡められて『指切りげんまん』と歌われた。あ、しまった。これは逃げられないパターンだ…!というか、指切りなんてしなくてもきっと百さんからのお誘いを断ることなんてできないとは思っているんだけどね。
仮に逃げようとしたとしても、アイドリッシュセブンやTRIGGERに捕まるような気はしています。彼らも逃がしてくれそうにはありません。逃げることは考えない方がいいだろうなぁ、これ。わかりました、と苦笑を浮かべながら返事をすると、百さんは満足そうな笑みを浮かべてくれました。
「せっかくなんだから万も久遠も、見ていってよ。僕達のライブ」
「―――わかった。楽しみにしてるよ」
「私もお言葉に甘えます」
「見ててっ!いつも以上にオレもユキも張り切っちゃうから!!」
時間になったのかバタバタと出て行く2人を見て、私達はホッと息をついた。
「まさか関係者席に案内されるとは思いませんでした…」
「俺も。見ていくよ、と言ったもののどうしようかと思っていたのに」
「千さんと百さんはいつ再会しても招待できるように、どのライブも万理さんと縁ちゃんの分を確保していたそうですよ」
「えっそれ本当?紡さん」
「はい。チケットをお預かりした時に、お2人のマネージャーの岡崎さんがこっそり教えてくれました」
うわお。マジですか。ここ最近は驚きの連続だなぁ…頭も心臓もついていっていない気がする。…だけど、アイドリッシュセブンではないライブを見るのは、かなり久しぶりでちょっとワクワクしてきてるんだよね。私。シャッフルユニットもどんな感じになっているのか、見れるのを楽しみにしていたし。
こんなに心踊るのはいつ以来なんだろう。『久遠』だった時にあったかな?ライブ前はドキドキしていたし、楽しみだったとは思うんだけど、今感じているものとは何かが違う気がする。当事者とそうじゃない場合だと、心持ちは変わるものなんだろうか。当事者でない場合は緊張感のドキドキを感じることはないから、ただ純粋に楽しみだと―――ああ、そうか。今私が感じているのは、それなんだ。だからあの時と違う感じがしたんだ。
「あっ始まりますよ、万理さん!縁ちゃん!」
客席の照明が全て消え、一瞬だけ静寂に包まれるゼロアリーナ。けれど、すぐに割れんばかりの黄色い悲鳴が響き渡る。―――そう、Re:valeの5周年ライブの開演だ!
オープニングはお客さんには秘密となっていた、アイドリッシュセブンとTRIGGERのシャッフルユニット。でもそれだけじゃない、10人は百さんへのメッセージをRe:valeの歌に込めたんだ。2人のデビュー曲から、全てをメドレーにして歌うことで今までの軌跡は千さんと百さん2人の思い出なんだよ、と伝える為に。千さんのパートナーは、貴方しかいないんですよって。ある意味、これも彼らが考えたドッキリなのかもしれない。
「…すごい。アイドリッシュセブンも、TRIGGERも、Re:valeも」
好きだと思った。歌が、この世界が、本当に。
一目散に逃げたお前が何を、と思う。思うけど、…でも仕方ないじゃない。好きなものは好きなんだもの。それだけは消すことができない真実なんだ、と改めて実感する。