5分間手を繋がないと出られない部屋
何が起こったのかさっぱりわからない。気がつけば周りには何もない、真っ白な部屋に立っていた―――臣くんと一緒に。わけがわからないのは彼も同じらしく、僅かに眉間にシワを寄せて辺りを見回していらっしゃる。
「なんだ、此処…」
「さあ…なんにもないね」
「だな。キッチンにいたはずなんだが…」
私もさっきまで自分の部屋で本を読んでいたはずだったんだけど。うたた寝してたわけでもなければ、誰かに攫われたわけでもない。瞬きをしたら此処に来ていた、というわけであります。
臣くんも場所は違えど、状況は大体一緒みたい。談話室には数人テレビを見ていたらしいから、臣くんの身に何かあれば気がつくはずなんだけど。まぁ、もしかしたら今頃大騒ぎになっている可能性もなくはないけど。
何はともあれ、早く出たい。臣くんがいるからそんなに不安とか恐怖は感じてないけど、だからと言って出たくないわけではないのでね。
「うーん…これも劇団七不思議のひとつだったりするのかなぁ」
「可能性としてはありそうだけど、どうだろう」
パンツのポケットを探ってみても、スマホは見当たらない。…そういえば、スマホはローテーブルの上に置いておいた気がする。臣くんも同じらしく、誰かに連絡を取って助けてもらうって手は使えそうになかった。そもそも、スマホがあったとしても此処が何処なのかわからなければ助けてもらうことも無理ではあるんだけどさ。
それにしても本当に何もない部屋なんだなぁ、真っ白だし―――と視線を上げた先に、紙が1枚貼ってあるドアがあった。あれ?こんなドア、さっきはなかった気がするんだけど…あったっけ?見落としてただけ?
「…ドアなんて、さっきはなかったぞ?」
「あ、そうだよね。やっぱりなかったよね…!」
「ああ。さすがに見落としたりしない。…何か書いてあるな、あの紙」
「へ?あ、本当だ」
近寄って見てみると、『5分間手を繋がないと出られない部屋』と書いてありました。
「手…?」
「手、だな。そんな簡単なことでいいのか」
「ええー…簡単すぎて逆に怖いんだけども」
「でもやってみる他ないしな。…ん、手ェ貸して」
「はぁい」
差し出された彼の手に自分の手を重ねれば、ぎゅっと握られた。じんわりと臣くんの体温を感じて、ホッと息を吐く。温かくて安心するなぁ。本当にこれだけで出られるなら、とても簡単だけど…大丈夫なんだろうか。さすがに不安になるけれど、他に方法もない。
ドアノブを回してみたけど、鍵がかかっているのか開かなかったもんね。それに5分なんてきっと話していればあっという間に過ぎてしまうだろうから。立ったままでいるのもアレだね、ってことで、壁に背を預けて座ることにしました。
「…時計がないから時間がわからないことに気がついたよ、臣くん」
「そういえばそうだったな…はは、まぁ時間になればドアが開いたりするんじゃないか?」
「よくよく考えてみたら、大分ホラーな展開だよね。これ」
「小説ではありがちな展開でもあるだろ、こういうの」
「あー…ネットではよく見る設定かもね」
そんなことが現実で、しかも自分の身に降りかかることになるとは思いもしなかったけどね!
そんなこんなで5分経ったらしく、ガチャリと鍵が開くような音が響いた。すると視線の先にあるドアが、ギィ…と軋んだ音を立ててゆっくりと開いていく。いや、ガチでホラーみたいだね?!僅かに顔が引きつったけど、怖がっている場合ではないよな…臣くんと手を繋いだままドアをくぐり抜けた―――はず、だった、んだけれど…デジャブかな?
何も変わったように見えない、またもや真っ白な部屋に出た。そしてついさっき通ったはずのドアは跡形もなく消えました。