三角関係勃発?!


幼なじみだという臣クンとはるチャンからつき合い始めました、と報告をされたのは、今からひと月ほど前だったと思う。ビックリしてる人もいたし、俺っちや万チャンみたいにようやくか〜ってなる人もいたし、すっごく嬉しそうにおめでとうって言う人もいた。つまり、2人の関係が変わったことに苦言を呈す人は誰ひとりもいなかったんだよね。唯一、左京にぃだけは何か言うかなーって思ってたんだけど、何も言わなかった。あとで聞いてみたら、監督先生と左京にぃは先に報告されてたんだって。その時にあまり風紀を乱し過ぎるな、と言ってあったから、今回は特に言うことはないってことだったらしい。
とりあえず、おめでたいッスよね!お互いに好き合ってるのは明確だったのに、躊躇してるんだもん…見ていてすっごいじれったかったんスよ。早くくっつけばいいのに、って何度思ったか!それに幸せになってほしいッスから、臣クンにもはるチャンにも。だから、つき合い始めたって聞いた時にはめちゃくちゃ安心して、めちゃくちゃ嬉しかったんスけど…その数週間後、俺っちはとんでもない現場を目にしちゃったんだ!

 side:太一

「…あれ?はるチャン?」

天チャンは仕事、十座サンは委員会の仕事があるから1人で帰り道を歩いていたら、駅前のロータリーではるチャンを見かけた。誰かを待ってる、のかな。あ、もしかして臣クンと待ち合わせしてデートでもするのかな?
声をかけようかと思ったけど、かけないでこのまま帰った方が良さそうかな…なーんて考えてたら、待ち合わせの相手が来たらしくはるチャンがパッと笑顔を浮かべた。ああ、やっぱり臣クンだったんだなーって何となしに視線を動かしたら、そこにいたのは臣クンじゃなくって左京にぃだった。

「………え?」

はるチャンはそのまま左京にぃの車の助手席に乗り込んで、走り去っていった。驚いている俺っちを残して。え、どういうこと?はるチャンは臣クンとつき合ってるんスよね?左京にぃもそれを当然知ってて…え、それなのに2人で待ち合わせしてどっか行くとか、ほんとにどういうこと?!これ臣クンは知ってるのかな?教えるべき?それとも黙ってるべき?!
悶々と考えながら歩いていたら、あっという間に寮に着いてしまった。うう、あの光景は夢であったと思いたい…もしくは、偶然左京にぃと会って車に乗せてもらったとか…いや、いくら何でもそれはないな。だってあれは誰がどう見ても待ち合わせてました、って感じだったし。

「た、ただいま〜ッス…」
「おかえり、太一」

実は臣クンも一緒だったりするといいな、という俺っちの淡い期待は、脆くも崩れ去りました。臣クンはいつもの笑顔で俺っちを出迎えてくれたし、夕飯の下ごしらえ中でした。
そうだよね、そんなことあるはずないよね…ってことは、最悪のパターン確定ってやつですか。

「珍しいな、今日は1人か?」
「あ、うん。天チャンは仕事で、十座サンは委員会の仕事があって…」
「そうなのか。着替えて手を洗っておいで、おやつ作ってあるぞ」
「うん、そうする」

臣クンの様子は至っていつも通り、かな。ということは、事情知ってる感じ?…いやいや、知らないからこそいつも通りってことなんじゃないの?まぁ、臣クンはあんまり顔に出さない人だから知っててもいつも通りを演じそうだけど。そして色んなものを飲み込みそうだけど。
さっと着替えて、手洗いとうがいを済ませ、ちょうど帰ってきたサックンと一緒におやつを食べながらずーっと考えてたけど、結局は言うべきか言わないべきか…その結論は出すことができなかった。何で部外者の俺っちがこんなに悩んでるんだろ…そもそも、はるチャンだって臣クンを悲しませるようなことをするような人じゃないじゃん。多分、買い出しとかそういう用事があって一緒にいるんだって。
うんうん、と納得しかけると、左京にぃの顔を見て嬉しそうに笑ったはるチャンを思い出してしまって振り出しに戻ってしまう。彼女はよく笑う人だから、あの笑顔だってよく見るもののはず―――なんだけどなぁ。何でこんなに気になるんだろ。





「あれ?臣、今日は遥ちゃんいねーの?」
「ああ…帰りは遅くなるから夕飯はいらないってLIMEがきてたよ」

悶々としたまま夕飯の時間を迎え、万チャンと臣クンの会話に思わず噎せそうになった。うっわぁ、何てタイムリーな話題…というか、はるチャン連絡入れてたんだ。でもあの感じだと遅くなること、そして夕飯はいらないことしか書かれてなさそう。まぁ、でもそうだよね。普通、誰と出かけてくるとか…詳細を書くことはしないよね。聞かれない限り。
でも何でだろう、それがますますはるチャンと左京にぃのイケナイ関係を確実なものにしている気がして…いや、そうと決まったわけじゃないんだけど!!そういう人達じゃないってわかってるんだけども!!どれだけ時間が経っても俺っちの中で勘違いだった、って思うことができないでいる。
そして真相を知る時間が、きてしまった。

「ただいまー」

玄関からはるチャンの声が聞こえて、ソファに座って然して面白くないテレビを見ていた俺っちはビクリ、と体を震わせた。彼女の声に最初に反応したのは、やっぱり臣クンで。帰ってきた、と呟きながら、出迎える為に談話室を出ていく。
めちゃくちゃ気になって仕方がなくて、そっと談話室のドアから顔を出すとそこには左京にぃ、はるチャン、臣クンの3人がいました。いや、当たり前だけど。あれ、もしかしてこれって修羅場突入しちゃう感じ?!

「おかえりなさい、左京さん、はる」
「ああ、ただいま。東雲を借りて悪かったな」
「いえいえ。というか、別に俺の許可なんて取らなくていいでしょうに」

………んん?

「俺も最初はそう思ったが、どこかで見かけて誤解されるのも面倒だろうが」
「そうかもしれませんが…左京さん相手にそんな誤解もしませんけどね」
「左京さんって心配性ですよねぇ」
「うるせぇ。…東雲、つき合わせて悪かった。だが、助かった」
「ふふ、お役に立てたなら良かったです」

あ、あれ…?何か、俺っちの想像してたものと違う気がする。

「臣クン、はるチャンと左京にぃが出かけてたの知ってたの?!」
「えっ急にどうした、太一」
「叫ぶな七尾。近所迷惑だろう」
「ただいま、太一くん。おみやげあるよー」
「あ、おかえりッス、左京にぃ、はるチャン!おみやげなに?……じゃなくって!」

危うくおみやげで誤魔化されるところだった!はるチャンはそういう意図があって言ったわけじゃないだろうけど、俺っちには真相究明という大事な使命があるんだ。おみやげはすっごくすっごく魅力的だけど、今は構っている暇はないんだ!

「…で?七尾、お前はなにを勘違いしてたんだ?」
「え、えっとー…」
「はぁ…大方、東雲が俺と浮気してるとでも思ったんだろ」

あ、図星です。さすが左京にぃ。きっとこの人はこういうことも全て見越して、臣クンにあらかじめ許可を取っておいたんだろうな。そうじゃないと寮内でとんでもない騒ぎが起きるから。現に俺っちがバッチリ勘違いして、ひとりパニックを起こしてたわけだし。でも臣クンとはるチャンがいる手前、素直に頷くことができなくてそっと視線を逸らした。さっき叫んだ言葉で勘付かれてることは承知の上で。
何も答えない、でも視線を逸らした俺っちを見て左京にぃはそれを肯定と受け取ったらしい。臣クンに許可を取っておいて正解だったろ、と溜息交じりに言っている。

「車に乗り込むとこでも見た?」

はるチャンがにっこり笑って、俺っちの顔を覗き込みながらそう聞いてくるから…今度は素直に頷いた。

「あはは。それは確かに誤解しちゃうかなぁ」
「だから帰ってきてから太一は少し様子がおかしかったんだな」
「ぅえ?!」
「ずっと何かを考え込んでいただろ?」

臣クンはエスパーですか。
あんぐり口を開けて驚く俺っちを余所に、左京にぃが妹の誕生日プレゼントを一緒に選んでもらっていただけだ、と事の真相を教えてくれた。最初は監督先生に頼むつもりだったらしいんだけど、今日は他劇団の手伝いが入ってて無理だったらしい。なので、はるチャンに白羽の矢が立ったらしい。でもいくら下心が一切ないとはいえ、臣クンとつき合っているはるチャンと2人きりっていうのはマズイだろって思った左京にぃは、律儀に臣クンに許可を取ったそうな。

「そう、だったんだ…」
「俺は部屋に戻る」
「はーい。おやすみなさい、左京さん」
「おやすみ」
「あっ…左京にぃ、誤解してごめんなさいッス!おやすみなさい!」

すたすたと部屋に向かう左京にぃの背中にそう言葉を投げれば、ひらりと片手を振ってくれた。臣クンとはるチャンにも謝らないと!

「ごめんッス…臣クン、はるチャン」
「気にするな、こっちも気にしてないから」
「そうそう。事情知らなかったんだしね」
「うう…そう言ってもらえて嬉しいけど、優しさが痛いッス〜……」

2人は優しいから、とんでもなく失礼な勘違いを起こした俺っちをすんなりと許してくれた。特にはるチャンなんて、浮気してるって思われたんだからもっと怒ったっていいのに。左京にぃも。
でも、…誰ひとり声を荒げることをしなくって。だから思ったんだ、これからは早とちりしないように気をつけようって。
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