ウチの幼なじみコンビは仲良しです。
side:太一
同室の臣クンと、裏方のはるチャンは幼なじみだ。家が近所で、小さい頃から一緒で、学部は違うけど大学も一緒で、そんでもって今じゃ同じ劇団に所属している。仲良しって表現で合ってるのかわかんないけど、でも本当羨ましくなっちゃうくらいに仲が良いんだよね。臣クンとはるチャンって。信頼し合ってる感じもあるし。
それにはるチャンと一緒にいる時の臣クンって、年相応っつーか…うーん、何て言えばいいんだろ。自然体?いや、普段の臣クンもきっと自然体だろうし、無理してるってわけでもないのはわかってるんだけど!世話焼く側に回るのは多分、臣クンの気質というか性格というか、そういうものなんだと思う。でもはるチャンといる時だけは、それがなくなるんだ。もちろん、同年代の人といる時はそうなのかもしれないけどさ。
「たっだいまー!」
「おかえり、太一。今日は1人なのか?」
「うん。天チャンは午後から仕事で、十座サンはむっくんと約束してるんだって」
談話室のドアを開けたら、ソファに座っていた臣クンがにっこり笑っておかえりって言ってくれた。へへっやっぱりおかえりって言われるの嬉しいよね〜。どうやら談話室にいるのは臣クンだけらしく、キョロキョロと見渡してみても、他の人はいる様子がなかった。この時間だと誰かしら高校生組が帰ってきてるんだけど、珍しいなぁ。
その場に立ったまま、ボケーッと臣クンと俺っちしかいない談話室を眺めているのを心配したらしい優しい臣クンは「おやつ作ってあるから手洗いうがいしてこい」と苦笑した。やった!臣クンのおやつ!!ウキウキしながら手洗いうがいと着替えを済ませて談話室へ戻れば、臣クンはキッチンで俺っちのおやつを用意してくれているらしい。
「そういえば臣クンひとり?」
「うん?…ああ、そうだな。はるが自室にいるけど、他の皆は用事で出かけてるぞ」
「え、はるチャンいるの?めっちゃ静かッスけど」
「課題がたんまり出ているらしくてな、必死になってる」
うわぁ…大変なんだなぁ。大学生ってもっと自由で楽しいものだと思ってたけど、案外そうじゃないのかもしれない。必死になっているらしいはるチャンのことを思いながら、コトリと置かれたシフォンケーキにかぶりついた。
「しかし昼前に帰ってきて部屋に籠りっぱなしだし、いい加減に休憩させるか」
「そんな根詰めてやってるんスか…」
「計画性がないわけではないんだけどなぁ。…お、噂をすれば」
またもや苦笑を浮かべて淹れたてのコーヒーを啜っていた臣クンが、視線をドアの方に移した。それと同時くらいにドアが開き、ぐったりした様子のはるチャンが姿を見せたのです。うん、これ大丈夫なんスかね?!すんごい心配になるんだけど!
でも俺っちが声をかけるよりも早く、マグカップをテーブルに置いた臣クンがフラフラと歩いてくる彼女に近寄った。そしてさり気なーく手を引いて、はるチャンをソファに座らせる。その様子をフォーク咥えたまま、思わずじーっと見ちゃったよね。
「おみく〜ん……」
「はいはい、なんだ?今、紅茶とシフォンケーキ持ってくるから待ってろ」
「…コーヒー」
「お前、帰ってきてから何杯飲んだと思ってる。胃が荒れるから紅茶にしとけ」
ソファに倒れ込んでしまったらしいはるチャンの顔は見えないけど、上から覗き込んでいる臣クンの顔はバッチリ見える。呆れかえった表情を浮かべた後、嬉しそうっていうか…あれだ、愛しい人を見つめるような笑みって言うの?上手く言えないけど、とにかくすっごい優しい顔になったんだよね。うわぁ、赤面しそう…顔あっつい。氷の溶けかけたオレンジジュースをゴクゴクと勢い良く飲んでみた。なにも変わらなかったけど。
もごもごと口を動かしながらも、意識と視線は臣クン達に向いている。だって気になるんだよ、あの2人の距離感って。幼なじみにしてはなぁーんか近い気がするし。でも臣クンもはるチャンも気にしてる様子はないし、きっと昔からなんだろうって無理矢理納得した記憶がある。だからかな、何となく見てしまうクセがついてる。…趣味悪いな俺、と思わなくもないけど。
「ほら、はる。さすがに寝ながらは食えないんだから起きろ」
「ん〜……臣くん、こっち」
ごちそうさま、と手を合わせた所で、むくりと起き上がったはるチャンが恐らくソファを叩いてる音が聞こえてきた。ぽすぽすってずいぶんと弱い音だったけど。隣に座れって言ってるのかな〜なんて、最初こそ俺っちはそんな風に思ってたんだけど…食べ終わったお皿とフォークをシンクに置いて、ふっと視線を上げたら思いもよらない光景が見えた気がして吹き出しかけたんだけど。寸での所で耐えたけどね?!
え、え〜…?俺っちの見間違いとか、妄想じゃなければ確実に!臣クンがはるチャンを抱きかかえて座ってるように見えるんスけど…?!えっほんとに?冗談とかドッキリとかじゃなく、リアルに?何かもう、頭ン中がパニックだよ。でも好奇心の方が僅かに勝ったらしく、飲みかけのオレンジジュースが入ったグラス片手にそーっと近寄ってみた。
「あ、俺っちの見間違いじゃなかった……」
「ん?どうした、太一」
「それは俺っちのセリフだよ、臣クン…てかはるチャン寝てる?起きてる?」
「辛うじて起きてるー…おけーり、太一くん……」
「…うん、ただいま。フォーク咥えたまま寝ないでね、危ないから」
食べながら寝かけてるって、はるチャンは赤ちゃんですか。そのうち臣クンが食べさせたりとか………それはないか、さすがに。うん。いくら世話焼きの臣クンでもそれはしない、と思いたい。
(ただいま戻りました!あ、太一くん早かったんだね)
(おかえりーさっくん!万チャンも一緒だったんスね!)
(校門で偶然な。…ところであの2人はなにしてるわけ?)
(うたた寝。格好は気にしたら負けッスよ)
(これでつき合ってねぇとか、ほんとこいつらの距離感どうなってんの)