思い出してにんまり


無事に島に上陸し、私はナミちゃん・ロビンちゃん・麦わら・狙撃手くん・ガイコツさんと一緒に町を探索中です。辿り着いたのは商店街らしく、たくさんのお店が立ち並ぶそこは大層賑やかだ。
画材屋さん、雑貨屋さん、それから食べ物屋さん…うん、本当にたくさんある。それなのにどこのお店も繁盛しているみたいで、人がたくさんいるなぁ。これだけ活気があると無条件に楽しくなってくるし、お腹も空いてくるってものだ。そして隣を歩く麦わらは、さっきから盛大にお腹の虫を鳴らしていたりする。それはもううるさいほどに。


「なぁナミ〜…」
「だぁめだって言ってるでしょ!アンタにお金渡したら、ぜーんぶ食べ物に変えちゃうじゃない」
「でも腹減った……」


まぁ、確かにこれだけいい香りがそこら中から漂ってくるとお腹空くけどね。私も空いてきたし。何せお昼前ですから。でもまだお昼ご飯にするには早いから、先に服を見に行こうって話になってて。だから麦わらのお腹の虫の音を鎮められるのは、まだ先ってことになるんだけどー…さすがにかわいそう、というかうるさい。1つでもお腹に入れたら静かになるかな、それとも逆効果かな。
きょろり、と辺りに視線を巡らすと、美味しそうな焼き鳥を売っているお店を見つけた。最後尾を歩いていた私はそっとその場を離れ、焼き鳥を2本購入し、またそっと戻ったのだけれど…ロビンちゃんとガイコツさんには気がつかれていたらしくにっこりと微笑まれてしまった。何でガイコツさんは目がないのに笑ってるとか、そういうのがちゃんとわかるんだろう。不思議。


「麦わら」
「あっリズ…!」
「んまほー!食っていいのか?!」
「うん、どうぞ。船に乗せてもらった、お礼」


焼き鳥1本でお礼になるなんて、思ってはいないけれど。でも空腹MAXの麦わらには十分だったみたい。早速噛り付いた麦わらを横目に、私も口にした。あ、美味しい。


「リズも腹減ってたのか?」
「もうすぐお昼だし、これだけいい香りがそこら中からすると反射的に…狙撃手くんも一口食べる?」
「いや、おれはいいよ。…てか、そういうこと簡単にしない方がいいぞー」
「?なにがさ」
「リズさん、私一口頂いてもよろしいですか?」
「よろしくないでしょ!やめなさいっ!!」


バチコーンッとナミちゃんの見事な平手が、ガイコツさんの側頭部に入った。煙、出てるんだけど…ナミちゃんの平手ってどうなってんの。感心半分、恐怖半分。妙な気持ちを抱えながら、焼き鳥を口に運ぶ。
私がようやく二口目を食べた所なのに、麦わらはあっという間に食べ終わっていたらしく焼き鳥が刺さっていたはずの串をぶんぶんと振っていた。いや、振るなや。危ないから。注意する前にナミちゃんが危ない!って取り上げてくれたから、誰にも当たらなかったけどね。うーん、やっぱり自由人。


「全く…ルフィを甘やかさないでよ、リズ」
「あんまりにもお腹の音がうるさかったから」
「確かに盛大に鳴っていたわね、ルフィのお腹」
「朝メシをあれだけ食っておいてなぁ…」
「おかわりもしていらっしゃいましたね。4杯ほど」


朝からそれだけ食べられるってすごいよね。いいことなんだろうけど、さすがに胸焼けする光景だったなーあれ。大食いの人と一緒に食事すると痩せられるとかよく聞くけど、効果は抜群にありそう。
ウチのクルーもなかなか食べる方だと思うけど、麦わらと比べると全然だな。まず、比べる相手が間違ってる感じがするけど。だって麦わらと比べたら誰だって少食になる気がするもん。すでに比べた私が言うことでもないけれど。





「リズちゃん、そういう格好似合うね!」
「…どうも」


上陸して2時間後―――粗方の買い物と情報収集を終えた私達は、美味しいと評判だと聞いたレストランに集合した。トナカイくんのお昼はちゃんと船に用意してあるらしいので、心配しなくても大丈夫だってコックくんが教えてくれて。何でも毎回、船番のご飯は用意してから上陸してるらしいです。
1人で食べるのは淋しいだろうけど、それでも自分達は海賊だから船を無人にするわけにはいかないんだ、って。うん、そりゃそうだよね。どれだけ平和そうに見える島でも、見張りなしってわけにはいかないよ。同じ海賊だから、それはよくわかる。


「てかさ、海賊狩りは?」
「あー…今、フランキーが回収に行ってる」
「回収?」
「マリモは極度の方向音痴でね、1人じゃ辿り着けねぇんだ」


じゃあ何故、海賊狩りを1人にするんだ君達…!


「誰かが一緒に行こうとする前に、アイツってば勝手に船下りちゃうのよ!」
「今回もそうだったみたいよ、…ああ、来たわね」


ロビンちゃんが入口の方を見たからそれに倣うと、疲れた様子のサイボーグさんとくあっと欠伸をしている海賊狩りがこっちに歩いてきてるのが見えた。うん、悪びれた様子がないなあの人!絶対に自分が方向音痴だって自覚がないやつだ、あれ。
酔っ払いと同じだよ、自分は大丈夫!って言い張る奴。海賊狩りと出かけるのは至極、大変なことになりそうだ。はぐれさせないようにするのに骨が折れると思う。私だったらごめんだ、そんなの。


「なんだ、おれ達が最後なのか?」
「達じゃねぇよ、最後なのはお前だけだよゾロ!」
「お疲れ様、フランキー。メニューをどうぞ」
「おう、悪いなロビン…」


遅れてきたサイボーグさんと海賊狩りの分の飲み物も注文し、しばらくすると私達のテーブルの上はさながら宴のような料理の数が並んでいる。どれも美味しそうだけど…この大半が麦わらのお腹の中に収まるんだろう、とすごいスピードで料理が消えていくのを見ながら思った。
ねぇ、まだ運ばれて数分のはずだよね?何でもう大量の空いたお皿が積み上がってんの?!呆気に取られてると料理がなくなるってわかっていても、やっぱりこの光景には慣れません。何度一緒に食事をしても、絶対に!慣れない自信がある!


「はい、リズちゃんの分。嫌いなもの入ってない?」
「ありがと。嫌いなものはないから、大丈夫」
「それは良かった。サンドイッチは?食べる?」
「…サンドイッチ、久しぶりだ」


コクリ、と頷いて受け取ったサンドイッチを見て零れ落ちた一言に、コックくんはキョトンとしていた。あれ、変なこと口走ったっけ?私。


「確かにここ数日の食事にパンは出してなかったけど…そんなに?」
「あ、ええっと…キャプテンがパン嫌いな人で、船じゃ出てこないから」
「そうなの?」
「うん。多分、年単位で食べてない」


上陸した島で食べることもあるけど、私は別にそこまでパン派ってわけではないのでそれでも気にすることはあんまりないんだけどね。ふとした時にサンドイッチが食べたい気分、っていうのはあるけど。
航海し始めた頃はキャプテンの分だけ別の献立にしたりしてたんだけど、ぶっちゃけ面倒だしご飯ばっかりでもいいんじゃない?って結論になってねー。気がつけば、ハートの食事にはパンが出なくなった。
たまーに食べたいな、って声も聞くけど、基本的にはキャプテン大好きなクルーの集まりなので文句を言う奴はいなかったりする。…今思えば、それもすごい話だな。気にしてなかったけど。


「なんか子供みたいな船長なのねー、アンタんとこのって」
「そういえば、リズのとこの船長ってどんな奴なんだ?」
「どんな、…ううん、そうだなぁ」


改めてどんな人、って聞かれると、どう答えたらいいかわからない。皮がパリパリになるまで焼かれたチキンが挟まれたサンドイッチにかぶりつきながら、大好きなあの人のことを思い返してみるものの。どれだけ考えても、思い出しても、どう説明すればいいかがわからない。好きすぎて、ってやつかなぁこれ。
とりあえず、キャプテンを表すキーワードを並べていくしか…


「ええっと、私よりかなり大きな人で…」
「そりゃあお前ェに比べれば誰だってでかいだろうよ」
「わかってるよ。うるさい、海賊狩り」
「くくっそりゃあ悪かったな」
「……背が高くて、医者で、それからクルー思いで頼りになって、頭もいいし…とってもとってもカッコ良くて、素敵な人」


そう。キャプテンはこの海でいっちばんカッコいい人!


「ふふっずいぶんと熱烈なのね」
「船長がクルー思いなら、クルーも船長思いじゃねぇの」
「ヨホホホ!素晴らしいですねぇ」
「リズはそいつのこと大好きなんだな!」
「うん?…うん、好き」


麦わらがニカッと笑うから、私もついつられて笑みを浮かべてしまう。ふにゃふにゃとした、ずいぶんと情けない顔になっている気がするなぁ。でも仕方ない、キャプテンのこと考えるといつもこうなっちゃうんだから。こういうものなんだ、と諦めるしかないのです。どう頑張っても直らなかったから、これ。
ウチのキャプテンの話はこれにて終了したらしく、皆はまた食事に戻っていく。もぐもぐとサンドイッチを食べていると、突然「あのっ!」と声をかけられた。私達に対する声、だよねぇ?何だろう、と振り返ってみると、そこには切羽詰った表情を浮かべた男女が立っていた。これは嫌な予感しかしない。


「お願いです!私達を助けてください!!」

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