02
どれだけ歩みを進めても、人の姿が見えない。それ所か…まともな建物が建っていない。
「お姫様だっこだー」
「あぁ?」
「ずっと担いでるとサクラちゃん、頭に血が上っちゃうよー」
「うん、体に良くないからね」
「しかし、何なんだ此処は」
「壊れた建物ばっかり」
「小狼くんと緋月ちゃんの治療が出来るようなとこあればいいんだけどー」
遠くに視線を投げながらファイくんがそう言ったけど、正直難しいんじゃないかと思う。
この国で何が起きたのか、もしくは起きているのかはわからない。そもそも、誰もいないこの状況では知る術もないけど。
けれど、これだけ建物が崩れてしまっている現状じゃ…治療道具がある施設があるかどうか。
ふと、小狼くんが瓦礫に触れているのが目に入った。どうしたのかと問えば、「瓦礫の角が丸い」と教えてくれたの。
…うん、確かに丸い。やすりとかで研いだ後のように、つるつるしてる。
ただ建物が風化しているだけならば、角は丸くならないと思う。
―――ポツ…ポツ…
ん?雨?
「あ!いたい!いたいよぉ」
―――チリ…ッ
「?!」
「痛……!」
「焼けた?!」
この雨、ただの水じゃないみたい。
ずっと当たっているのは危険だ、何処かに避難しないと僕達もこの瓦礫のように溶けてしまう。
けど、ほとんどの建物が倒壊してしまってるし…雨宿りできるような所は―――急いで視線を巡らせてみれば、少し遠くにまだ倒壊していない大きな建物が見えた。
小狼くんも同じ物を見つけたみたいで、指を差して僕達に知らせてくれている。
雨も強くなってきた。早く移動しないとね。
「黒たん、緋月ちゃん急いでー」
「うん!」
「また走るのかよ」
走って建物の傍まで寄ってみれば、瓦礫を溶かすほどの雨が降っているのに、全く損傷していなかった。
良かった…これなら雨が止むまで、この建物の中にいれば安全。
建物の中に入ったのと同時期に、雨足が一気に強くなった。雨で視界は悪いけれど、瓦礫がボロボロと崩れていっているのが見える。
…もう少し遅かったら、本当に危なかったみたい。セーフだ、とモコが喜んでる。
―――でもどうやら、そうでもなかったみたい。
「!!」
奥に広がっていた光景は、思わず目を逸らしたくなるほどの惨状だった。
偽者であってほしい、なんて思うけど…ホンモノだ。それも誰かに殺されている。
「サクラちゃん、眠ってくれてて良かったよ」
「…姫さんにはこの光景は、辛すぎるからね」
「モコナ、中に入ってていいから」
「サクラの羽根の気配探さなきゃ」
「…ありがとう」
姫さんの羽根の気配…とは言い切れないけど、この下に大きな力があるのはわかる。モコもそれを感じてるみたいだ。
どうにかして下へ行く方法を探さなくちゃ。…あるのかどうかは、わからないけど。
先へ歩を進み始めた小狼くんの後を追うように、僕も歩き始めた。
それにしても、一体何があったんだろうか。此処にある建物は、どれも何百年と経ってるものじゃないと思う。
でもこんな風に壊れてしまっているなんて…何かがあった、としか思えないよね。
外はほとんど砂漠化してて、道らしい道なんてないに等しかったし。原因の1つとして、あの雨があるとは思うけれど。
「この国の人達、何処にいるんだろ」
「ええ。それにこんな所でどうやって暮らしているんでしょう」
「…最悪な推測だけど、もしかして―――」
―――カッ
―――カカカッ
「!!」
「っ?!」
「なになに?!」
急に飛んできた矢。人の気配。…そして、殺気。
何が何だかわからないけれど、これ以上怪我をするのは勘弁だ!
次々と飛んでくる矢を避けていた時、小狼くんの体がグラリと揺れて、1本の矢が彼の足を射抜いた。
「小狼くん?!」
「っ緋月!うしろーっ」
―――ザシュ…ッ
「……っ!」
「小狼!!緋月!!」
しまった…油断した。咄嗟の所でかわせたから、突き刺さりはしなかったけど…腕を抉られたらしい。
ああもう、どうしてこう僕は…肝心な所でドジを踏んでしまうんだ!
さて、どうするか?
「此処に足を踏み入れたってことは、死にたいんだな」
人の気配がする方に視線を向けてみれば、ボーガンに似た武器を構え、目深にフードを被った人達が瓦礫の上に立っていた。
この国の、そしてこの建物の住人、ってとこかなぁ。攻撃をしてきたってことは、僕達は不法侵入者として認識されてしまってるんだろう。…面倒なことになりそうだね。
人数は7人。あちらさんがヤル気なら、相手に出来ないこともないけど―――僕達は別に争いたいわけじゃないんだよ。
「見ねぇ顔だな」
「蹴り格好良かったなー」
「何、悠長なこと言ってんの。侵入者よ」
ああ、やっぱり侵入者になってるわけですか。
「その上、泥棒」
「(泥棒…?何のことか全く見当がつかないけど…この建物には狙われる何かがある、っていうのは間違いないな)」
「……」
「で、どうする?」
フードの下から出てきた瞳は、全てを射抜くような鋭い光を宿していた。
「神威」