02
「…痛みを感じてねぇのか」
「あの人―――…何かが、違う」
「あ?」
「強いだけじゃない。何かが違っている気がする…」
見た目は普通の人間と、何ら変わりがないと思うけど…何なんだろう?この違和感のようなもの。
痛む体を起こしながら考えてみるけど、やっぱりわからない。"私"はこの存在を知っているような気が、するのに…思い出せない。
傍観していた人達が楽しそうに、感想のようなものを言い合い始めた…。
神威って人が強いんだろうな、ってことはわかってたけど、この人達の中で一番なんだね。きっと。繰り広げられる会話から、そんな風に感じた。
……ん?何か、別の気配が近づいてきてる?妙な機械音みたいなものも聞こえるし。
「まだ終わってねぇぞ」
「神威、飽きっぽいからなー」
「あぁ?なんだそりゃ?!」
何だかよくわからないけれど、バタバタと動き始めた。
神威って人は「タワーの奴らだ」って呟いたと思ったら、スタスタと何処かに向かって歩き始めちゃったし。
傍観していた人達も、彼を追いかけていってしまいました。
…もしかして、この人達にとっての"敵"が来たってことなのかな?僕達のような(僕達は決して、彼らに危害を加える気はないんだけれども)。
「どうなってんだ?」
「さあねー。でも、僕達より厄介な相手が来たんじゃないかな」
「緋月さん、怪我…」
「…そうだ。お前、あん時俺の下敷きになったろ?!」
「ああ…咄嗟に魔法使って、衝撃半減したからだいじょーぶ」
…本当は大丈夫ではないけどね。それでもようやく動けるようにはなったし、何とかなると思う。
服についた汚れを叩きながら、のろのろと立ち上がった。
うーあー…体中がミシミシいってる。骨が折れた音はしなかったから、問題はないと思うけど…これはちとキツイかも。
「それより、黒鋼くんと小狼くんは大丈夫なの?僕より重傷でしょうに」
「俺は何ともねぇよ」
「おれも大丈夫です」
「…黒鋼くんはそれでいいとしても…小狼くんのその足、何とかしないといけないね」
いまだ矢が突き刺さったままの、彼の左足。
血は止まりつつあるように見えるけど、このままにしておくわけにもいかない。まず矢を抜いて、きちんと消毒をしないと…化膿してしまう恐れがあるから。
こういう時、癒しの魔法が使えればいいのにって思う。護りの魔法はかろうじて使えるけど、僕には傷を癒す魔法が使えないんだ。
どんなに頑張っても、習得することが出来なかったのよね。
最初に覚えたのは…誰かを傷つけることしか出来ない、攻撃と破壊の魔法。
破壊の魔法は、使い方を間違えれば…全てを無に帰すことだって出来るくらいの危ないものだ。
ようやく覚えることの出来た護りの魔法だって…完全な防御は出来ない。
風で攻撃の軌道を逸らしたり、受け流したり、威力を弱めるだけ。盾(シールド)を作ることすら出来ない、役立たずな護りの力。
「(つくづく僕の力って、人を殺す為だけにあるんだなぁ)」
「緋月さん?」
「え?あ…ごめん、小狼くん。なにー?」
「向こうに行ってみましょう。姫とファイさんのことも心配ですし」
「そうだね。あの人達が向こうに行っちゃったし…何もないといいんだけど」
微かにする、戦っているような物音。充満しているおびただしい殺気。
入り口近くにいるであろう、姫さんとファイくんは無事なんだろうか。
―――ダンッ
―――ザザザッ…
「投げ飛ばされちゃった」
「かっこ悪いなー封真」
「ほんとにな。客か?」
「…変な人」
「何、手なんか振ってやがんだ」
「……」
「タワーのメンバーじゃないみたいだね」
「とぼけているのかも」
とぼけてなんかないってば。この国に来るのは初めてだし、知り合いなんか1人もいない。
…まぁ、確かに前に出会ったそっくりさんはいるようだけれどさ?
皆に出会った国にいた、空ちゃんと嵐さん。
桜都国で出会った、譲刃ちゃんと草薙さん。
ただ、顔が同じってだけだけどね。何度か経験したけど、本当に何処で出会うかわかんないんだなぁ。顔が同じ人に。
稀にまるっきり同じ人に会うこともあるみたいだけど、今回はそんなこともないみたいね。
誰も僕達を見ても反応を示さないから。顔は同じだけど、全く違う人生を歩んでいる人達なんだ。
そんなことをボーッと考えていたら、いつの間にか全てが片付いていたようで。突然現れた人達は、乗り物に乗って何処かへと走り去っていった。
「任せる。隠れてる二人も」
「「?!」」
「気付いて、たの…?!」
そのまま僕達の横を通り過ぎていった。ただ、一瞬だけ…こっちに視線を向けたけれど。
何か言いたそうに見えたけど、何も言わずに地下へと続くであろう階段を降りていく。本当に…何なんだろう、あの人。
「だとよ」
「困ったね、神威にも」
「あはは、見つかっちゃったねぇ」
「ファイくんっ姫さんっ!何ともない?!」
「うん、オレもサクラちゃんも何ともないよー。緋月ちゃんと小狼くんまた怪我してるー。いたそー」
「しかし、地下に何があるってんだ?」
「とても大切なもの、っていうのは察しがつくけどね」
侵入者を排除して、泥棒と思われる者を叩きのめして…そうまでして、あの人とこの人達が守りたいと思う"何か"。
「何言ってるの?」
「え?」
「とぼけてるにしちゃ本気っぽいな」
「決まってるじゃない。水だよ」