王子の目覚め
side:黒鋼
目が覚めて、最初に映ったのは真っ白な世界。
視界全てが真っ白で、俺はまだ眠っているのかと錯覚したんだが…よく見てみりゃあ、白まんじゅうが俺の上に乗っていやがった。
「何してんだてめぇっ!!」
「きゃー!」
「黒様?!」
「目が覚めたのか」
驚いた声に振り向けば、へらいのと小僧がそこに立っていた。どうやらちょうど出先から戻った所みてぇだな。
この場所に見覚えはねぇが…まぁ、まだ移動はしていねぇんだろうな。恐らく。
つーか、こっちの世界ではどのくらい寝てたんだ?体が痛ぇ…。
軋む背中を伸ばし、肩を軽く回せば、そこら中から骨が鳴る音がしやがった。こりゃ完全に体が固まってやがるな。少し体を動かさねぇとまずいかもしれねぇ。
そんなことをボーッと考えていると、後ろからスパーンッと頭を叩かれた。
「いって?!何しやがんだっ」
「全く…こっちがどれくらい心配したと思ってんだ!しれっとした顔しちゃってさあ…!!!」
「まぁ、何はともあれ…目を覚ましてくれて良かった。あのまま眠ったままだと危ない、と聞いていたから」
「あ?そうなのか?」
「そうだよ!…それで何があったの?」
何が、と聞かれると…説明がしづれぇんだが。話して信じられることなのかもわからねぇしな。
…だが、次元移動を体感しているわけだし、この2人なら…信じる話ではあるかもしれねぇ。俺はへらいのと小僧に最初から話をすることにした。
あの老人と話をして、意識が遠くなった後の記憶が最初はなかったこと。目を覚ました後、自分が生まれた国にいたこと。そこで三月以上の時間を過ごしていたこと。今までの記憶が、1つ残らず…全部失われていたこと。
その世界で―――緋月に会ったこと。
2人と1匹は驚きながらも、ただ黙って話を聞いていた。
恐らくは突拍子もない話過ぎて、口を挟めるようなことではなかっただけだと思うがな。自分で体験しておきながら、逆にこれを他人の口から聞いたらすぐに信じられるような内容ではねぇし。
「黒鋼、緋月に会ったの?!」
「…おう」
「じゃあ、あの子…生きてるってこと?」
へらいののその言葉で、最後に交わしたアイツとの会話を思い出した。
「…おい。この町に他との街とを繋ぐ橋ってのはあるのか?」
「え?あ、あぁ…確か町はずれにあると聞いたけど」
「満月は、いつだ」
「黒様?さっきから何言って―――」
「いいから答えろ!満月になんのはいつだ!」
「昨日の満ち欠けから察するに、今日が満月だと思う」
小僧の言葉に答える間もなく、俺は飛び出した。
部屋の中の暗さから考えて、もう夜になっていると確信があったからだ。
へらいの達の俺を呼ぶ声にも耳を貸さず、止まることもせず、町を走り抜ける。
アイツとの約束を、果たす為に。