02
side:ファイ
「ちょ…黒様?!!」
彼が倒れて、意識を失ってからもうすぐ7日が経とうとしていた。
今日もモコナを置いて、朝から小狼くんと町へ情報を集めに行っていたんだけど…結果は相変わらず何もなし。
これはそろそろ大きな街へ足を向けてみないとダメなのかなー、と思いながら帰宅したら。
モコナが黒様に投げられていた。
一瞬、何が起きてるのかわからなかったんだけど…「何してんだてめぇ!!」っていう黒様の声を聞いて、ようやく彼の目が覚めたんだってわかった。
正直、ホッとしたんだ。このまま目を覚まさないんじゃないかーって覚悟もし始めてたからねぇ。ここまで起きる気配がないとさ。
隣に立っていた小狼くんも驚きの表情の中に、微かな安堵が見えて。
その後、黒様から何があったのか聞いてみると…どうやら術によって魂だけ、別の空間に連れていかれているっていう四月一日くんの見立ては間違っていなかったみたい。
彼は故郷の日本国でかなりの時間を過ごしていたらしく、そこでは今までの記憶は一切失われていたらしい。時々、脳内に映像が浮かぶことはあったらしいけど。
でも思い出すまでにかなりの時間が掛ったんだってさ。
そんな術もあるんだなー、なんて聞いていたら、黒様が緋月ちゃんに会ったって言い始めた。
最初は何の冗談かと思ったんだけど…彼の瞳を見ても、冗談や嘘を言っているようには見えない。…というか、この人そういうの苦手だっけ。
ってことは、本当に…彼女に会ったっていうことだよね?
「(何処かで緋月ちゃんが生きている……)」
信じられない気持の方が大きかったけど、それでも彼女に会える可能性が少しだけ上がって、嬉しかったんだ。
いつ、何処で会えるかまではわからない。でも、それでも…このまま旅を続けていれば、いつか再び彼女に出会うことが出来るんだ。
何も手掛かりがないままなのは変わらない。だけど、少しだけ進展したと思うんだよ。
黒様の話を聞き終わって、少しの間だけ流れた沈黙の後。
何故かはわからないけど…彼がこの辺りに橋はあるのかーとか、満月はいつだって言い出して、小狼くんがそれに答えると、何も言わずに部屋を飛び出して行った。
そして冒頭に戻るわけでして。
「黒鋼どうしちゃったの?」
「そんなの俺が聞きたいよ…何も言わないで飛び出してくし」
「とにかく追いかけよう。あの人があれだけ焦っているということは…緋月に関係することかもしれない」
小狼くんの言うことは最もだった。
確かにいつでも冷静沈着(短気だけど)な彼は、滅多なことじゃ慌てることはあまりなくて。いつだって、焦っていたのは…緋月ちゃんに関することだった気がする。今回のことも、確かに彼女に関係することなのかも。
モコナを頭の上に乗せて、小狼くんと共に黒様を追いかけることにした。