再会
走って、走って、走って。どれくらい走ったのかわからねぇ。
ただひたすらに、アイツとの約束の場所を目指してがむしゃらに。今度こそ、大切なものを失わない為に。
side:黒鋼
空に浮かぶのは大きな満月。目の前にあるのは、この町にある唯一の橋。
橋の真ん中に誰かが佇んでいた。肩まである髪を風に揺らし、何処か一点を見つめる女。月明かりに照らされるその後ろ姿は、アイツにそっくりだった。
ただ似ているだけかもしれねぇ。アイツだという根拠も、確証も、どこにもねぇ。だが、それでも俺にはアイツだという自信があった。
「緋月!!!」
名を呼べば、弾かれたように振り向いた女。
佇んでいた女はやはり、ずっと求めていた…緋月だった。
「くろ、がねく……っ!」
緋月の泣きそうな声が聞こえたと思った瞬間、そのまま抱き着かれた。
突然のことで驚いたが、細っこい肩が震えていて何も言えなかったんだ。泣いている、とわかったから。
「馬鹿だ…黒鋼くんは大馬鹿だよ……!!」
泣きながらそう紡ぐ緋月の声には、多少なりとも怒りが込められていた。
怒りてぇのはこっちの方なんだがな。勝手に決めて、勝手に消えやがったお前を…俺達が怒らねぇとでも思ってんのか?
言われていた所で何かが変わった、とも思えねぇけどよ…それでもまた違う道を見つけることが出来たかもしれねぇんだ。その可能性はゼロじゃなかったはずなのに、緋月はそう思っていなかった。
「馬鹿はてめぇの方だろうが!勝手にいなくなりやがって…!!」
「そ、れは…っ」
「俺達の為だ、とか言うんだろ?それをやめろっつってんだよ。勝手に決めんな、俺達が…何とも思わねぇとでも思ったか」
「緋月ちゃん!!!」
「っあ……」
声がした先にはへらいのと、小僧と、白まんじゅうがいた。
その姿を見た緋月は驚きの表情を浮かべている。…来るとは思っていなかった、っつー表情だな。…とはいえ、俺も少し驚いてはいるんだが。
何も説明せずに飛び出して来ちまったからな。まさか追いかけてくるとは思っていなかった。
あぁ…だが、ようやくだ。ようやく―――全員、揃うことが出来た。
「シャオ、ファイくん、モコ……!」
「緋月ちゃん…」
へらいのも、小僧も、白まんじゅうも泣きそうな表情だ。
言いたいことも、聞きてぇこともたくさんある。だが、此処で話すわけにもいかねぇし…ひとまず借りている部屋に戻ることにした。
離さねぇように、しっかりと緋月の手を握って。