6月6日

 深夜にインターホンが鳴ったので何かと思ったら、夜なのに帽子を被ったシュウが立っていて、やあ、と気の抜けた挨拶をした。オレは歯磨きの途中だったからとりあえず手招きだけして、口をゆすいでいる間にシュウはちゃぶ台の横に座り込んだ。

「これ、土産」

 がさがさと音を立てる袋はどう見てもコンビニかスーパーのビニール袋だった。中を覗き込んでみると、ショートケーキとチョコレートケーキが1ピースずつプラスチック容器に収まっている。

「おい、いま歯ァ磨いたんだぞ」
「もう一回磨けば。誕生日おめでとう」

 めでたくも何ともなさそうな、軽い調子だった。それでも、コイツがオレの誕生日を覚えていて、ケーキを買ってくるという発想があったことに軽く感動した。歯ぐらい二回でも三回でも磨いてやろうと思ったが、調子に乗るので口には出さない。

「コーヒー……って時間じゃねえな。ほうじ茶でいいか?」
「うん。あと、しばらく泊めて」
「どのくらいだ?」
「一か月くらい」
「は?」

 聞けば、急に休暇を与えられたという。なら自宅でのんびりすればいいだろと言ったら、「改装中」と返ってきた。

「……もしかして、クビか?」
「そんなわけないだろ」

 シュウは器用に鼻の上に皺をつくって、袋の中からケーキを取り出した。

「ショートケーキあげるよ。好きだろ、イチゴ」
「一度も好きっつったことねえだろ。お前がチョコ食いたいだけじゃねーか」
「フォーク」
「へーへー」

 相変わらずの傍若無人ぶりに呆れる。シュウらしいといえば、それはそうだ。

「最初に祝ってくれんのがお前だとは思わなかったぜ」

 シュウはきれいなツラにいけ好かない笑みを浮かべて、チョコレートケーキをフォークで真っ二つにした。