意気地なしヒーロー。

不本意な合格


『合格だ!!』

「…………え……………いやマジ………?」

 平和の象徴、オールマイトの投射映像が放ったその言葉は、私をドン底へと突き落とした。


 ▽


 …ハイ、いえどうも、初めまして。石動瞬です。冒頭からまあ申し訳ない始まり方をしたなあと思いますがまあ、事の顛末をお話しますのでどうぞ聞いてやってください。

 そもそも、冒頭の��合格�≠ニは何だ、という疑問を持っている方が多いと思われるが、まあそれを言ってしまえばもうほぼすべてを言ってしまった感じになるのだが、まあ言っておこう。
 あれは超名門、雄英高校ヒーロー科の受験についての合否発表の映像だ。ここで勘違いしないでもらいたいのが、私がヒーローを目指すような向上心にあふれた素晴らしい人間じゃないってことだ。そもそも私が今回雄英を受けたのも父さんと母さんに無理矢理受けさせられたからで、私はそのへんの一番近い高校を受験したかった。つまり超不本意に受験して、超不本意に受かってしまったという、誰も幸せになれない結果となったわけなのである。…いや先生と両親だけは幸せかもしれない。というかこんな中途半端な気持ちで受けて受かってしまって本当に他の受験者の人に申し訳ないというか、なんと言うか。超難関校なので私なんか受かるわけないしとか思っていた奴なのに受かってしまったなんて本当どんな顔して入学式に行けばいいんだろうか。というか入学試験、私は個性の��テレポート�≠ナロボットの部品をポンポン移動させて壊していっていただけなのだけども。あれで良かったのか。評価を聞くと敵P30、救助活動P24というまあ結構上位らしい結果に終わっていたらしい。…え……なんだよ救助活動Pって…………そういえばなんか助けた感じになったのが何人かいた気がするな………あれか………あれがいけなかったのか………
 絶望しつつ、プツンと切れた投射映像の残像をぼんやり見つめた。

「………うわあ……………報告したくねー………」

 喜ぶ両親の姿を想像しながら、私は両手で顔を覆った。


 ▽


 私の両親は、自他共に認めるヒーロー好きで、そしてどちらもテレポートの個性を持っていない。所謂��没個性�≠ニいうやつで、ヒーローにはとてもじゃないがなれたものではなかったらしい、というのが最近聞かされた話。珍しい例らしいが、そんな両親から、テレポートの個性を持った私が生まれ、その珍しい個性に両親は歓喜した。

『この子はヒーローになれる!』

 無理です、と、その時の両親に伝えてやりたい。まあそんなことはなんの意味もないのだうけど。
 そんなヒーローへ強い憧れを抱く両親とは裏腹に私は全くと言っていいほどやる気がなくて、出来るだけ面倒事からは避けて通りたいタイプだった。お父さんとお母さんは「本当に誰に似たのかしらね」なんて笑っていたけどうんまあ普通に考えておじいちゃんとかおばあちゃんとかそれか突然変異とか何じゃないかな。うん。あ、きっと突然変異だ。だから諦めようよ。ね。
 しかし両親はそんなことでは諦めず、ひたすらに私にヒーローという職を推し、そしてあまつさえ、無理矢理雄英高校ヒーロー科なんてヒーローになるしかない高校へと進路選択させやがったのだ。
 マジかよ、なんて思いながら受けに行って受かっちゃうし。くそう。我ながらクズだと思うが両親もなかなかだと思う。やっぱり私達は親子なのだ。遠い目をしながら思う。

 そしてすこし話は変わるが、私の中学からもう二人ほど、雄英のヒーロー科への合格者が出たらしい。三年間同じクラスになったことがないのでよく知らないのだが、一人は確か��爆発�≠フ個性を持っている爆豪勝己。見たことあるけど暴力的な感じで怖かったのを覚えている。あれ絶対人殺したことある目だ………っていうか殺すって喚き散らしてたから頭おかしいやつだと思ってたんだ………ヒーロー志望だったんだ……人って見かけによらないな………
 もう一人は、確か緑谷出久、と言っただろうか。この子に関しては噂でしか聞いたことがないのだが、両親のような��没個性�≠ヌころか、個性すら持っていない��無個性�≠ネんて珍しい奴、なんだとか。私達の世代ではただでさえ珍しい��無個性�≠セが、そんな奴がどうやってヒーロー科に合格したのだろうか。不思議だ。
 とまあそれはさておきとして、今目の前に、めちゃくちゃ怖い顔をした爆豪勝己が立っております。…ん? なんでだ…?

「テメエかよデクと一緒に俺の人生設計ぶっ壊してくれたクソナードはよォ!!」
「ヒィ!?」

 デクって誰だというかあなたの人生設計ってなんだよ意味分からんとんだ言いがかりだ。なんて怯えながら話を聞けば、なんでも「この中学で初の雄英進学者」という肩書を手に入れようとしていたのに私ともう一人の緑谷と言う子が受かってしまって台無しだ!という事らしく。そんなの本当に言いがかりじゃないかなんて言えるわけもなく、私はただ爆豪を睨んで、テレポートで急いで逃げた。うひい怖いよーあれカタギの目じゃないよー絶対DQNだって殺されるー。

「合格辞退したい……」

 切実にそう呟いて、テレポートした先から家路についた。

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