序章:九と四分の三番線からの旅(1/3)

1991年9月1日・ロンドン。

人々がそれぞれの目的を目指して慌ただしく行き交うこの駅の名前は……

キングス・クロス駅。

雑踏の中、荷物を山のように積んだカートが、大きな鳥籠を載せてガラガラと進んでいくと、少女は、9番線10番線の間の柵の前に立ち止まった。

柵の向こうには、魔法族しか存在を知らされていないホーム、9と4分の3番線が存在する。

少女は行き交うマグルたちに気を付けながら、9番線と10番線の間の柵を通り抜けた。


その先には――



紅色をした蒸気機関車が停車していた。

ホームの上には【ホグワーツ特急11時発】と書かれてある。


このホームは騒がしい――しかしここにひしめいているのは、マグルのホームのようにがっちいりしたスーツ姿で仕事に向かう人々ではなく、子供たちをどんな言葉で送り出そうかと思案しているローブ姿の魔女と魔法使いたち。

少女はカートを押しながら、コンパートメントを探していたが、出発時刻が迫ってるのを見て重い荷物を持って列車に乗り込んだ。


通路を歩きながら、コンパートメントを探すが、一人分座れそうなコンパートメント見つけたが、少女と目が合うとなかにいた者たちは目をそらした。

ここに入ってくるなとばかりな表情をしているのを見ると、少女は気にすることなく通路を歩き始める。


『…………』

いつものことで気にすることでもなければ、別にどうとも思わない。

少女が通路を歩いていると、列車が動き出す。

そんな時、通り過ぎたコンパートメントの戸が開く音が聞こえたとき「やあ、席をお探しかい?」と少年の声が聞こえてきた。


少女は『はい』と短く答える。

「なら、俺達のところはどうだ?まだ一人ぐらいながら座れるぞ」


『……お言葉に甘えて』

少女が愛想よく答えているわけでもないのに、少年は「どうぞどうぞ」と笑顔で手招きする。


少女がコンパートメントに入ると、はじめに声かけてくれた赤毛の少年そっくりな少年とドレッドヘアの少年が座っていた。


少女は先ほど声をかけてきた赤毛の少年の隣に座ると「俺はジョージ・ウィーズリーで……」とっ片割れを見る。


「俺がフレッド・ウィーズリー。宜しくな」


「俺は、リー・ジョーダン」

ドレッドヘアの少年が行った後、ジョージは「君の名前は?」と聞く。


『サクヤ・アサマです』


少女――咲耶は、無表情のまま名乗った。

「君に、ピッタリな名前だ!」

ジョージは微笑むと「そうだよな、相棒?」チラッとフレッドを見る。

双子の片割れのフレッドは「ああ!」と微笑みながら頷いた。

『………』

こんな反応する人ははじめてだと、少女は静かに彼らを見た。