彼は誰時

「うわっ!?」

ギリギリで、男の攻撃を避ける。
私は体勢を崩されながらも相手から目を離さなかった。
崩されたことで出来た、その隙を男は見逃す訳もなく、発狂しながら男は私に向かって飛び上がる。

「くっ!」

咄嗟に砂を掴み、私はそれを男に向かって投げつける。

「ぐわっ!?」

丁度よく、砂が目に当たり男は着地すると目を擦る。

「よくやった龍之介!」

駆け寄って来た沖田と原田が、私の前に躍り出る。
槍を構えた原田は、男の脇腹を刺し貫く。

「くききききぃ!」

だが、すぐにまたその傷は一瞬にして塞がってしまう。
目の砂が取れたのか男は直ぐ様、原田に攻撃目標を変え襲いかかる。

「ちょっと、僕がいることも忘れないんで欲しいんだけどな」

軽口を叩きながら、沖田は男を後ろから斬りかかる。

「ぐぅっ!」

だが、やはり沖田が斬りつけた傷もたちどころに塞がってしまう。

「龍之介、無事か!?」

「俺は大丈夫だが……。あいつは一体、どうしたらっ!」

私に駆け寄ってきて無事を確かめる平助と斎藤
取り乱している私の耳に聞こえてきたのは、土方さんの声だった。

「原田!総司!心臓を狙え!首を落とすか心臓を一突きすれば、そいつの傷は治らねえ!」

沖田はそれが聞こえた途端、不敵に笑う。



ちゃんと見ていたはずなのに、気付けば男が血を吹き出しながら倒れる所だった。
傷が治るような気配は全くしない。

「ぐぅ……っ」

右手を胸に当てながら、男の左手が空中をさ迷う。
その虚ろな瞳と目が合った。
その手を取ってあげたくて、私は手を伸ばした。

掴める筈だったその手は、私をすり抜けそのまま男の体と共に地面にバタリと落ちた。

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