彼は誰時

庭に出るだけ。
それだったら大丈夫だよね?
縁側に出た途端、ものすごい音と原田と永倉の声が響く。

「くそっ!何なんだこいつ!!」

「そっちへ行ったぞ!」

大丈夫なのか……?

庭に出て様子を伺っていると、近くの茂みがガサリと揺れた。

「な、んだ……?」

……嫌な予感。
第六感が近付いてはいけない、逃げろと告げる。
頭では警告音が煩く鳴り響くが、身体は金縛りにあった様に動かない。
否、動けない。

茂みを揺らしながら踊り出て来たのは、ギラギラと異様に光る赤いなにか。

「くけけけけけっ!」

ソレは狂ったような笑い声をあげる。
咄嗟に私は刀を抜き構えた。

キンッ!!

重い進撃を私は構えた刀で受ける。
ズンとのし掛かるように、ソレは私に体重を乗せる。
近くに来て分かった。
ソレは赤い瞳をギラつかせる白髪の男――人間ではない、化け物のような……

「なんだよ!こいつ!」

このままだと駄目だ。
相手の力に負けてしまう。

「くっ!」

ぐぐぐと重みに耐えていると不意にソレは私から距離を取る。
なんか、よくわからないけど助かった。
ソレは、何かを確かめるように私をジッと見る。

「……?」

なんだろう。

「"お前に覚悟はあるのか"」

頭の中で、先ほど交わした原田の声が響く。
なんで、いま……

「くっ、くけけけぇ!!」

ソレは歪んだ笑みを浮かべると、私に向かって突進してきた。

何もしなかったら……殺されてしまう。

死ねない。

私は、まだ……

死にたくない。

なら、するべき事は――

「うわああぁぁ!!」

刀を構え直し、私は化け物に挑みかかっていく。

「龍之介っ!!」

刀が交錯する音に混じって平助の叫び声が響く。
少し、私の注意がそちらに逸れた。
化け物は、それを見逃さず、斬り込んでくる。

「っ!!」

ザクッと斬れる音
フワリと漂う、鉄の匂い
力が抜け、膝から横へ崩れ落ちる。

化け物は、その匂いに酔いしれたように、嬉しそうに笑い、まるで吸血鬼の様な鋭い牙が覗く。

「――待て、おまえの相手はこちらだ」

斎藤の静かな声が化け物の背後から聞こえてきた。
だんだん私の瞼が重くなっていく。

「ぐ、う……!?」

化け物の苦し気な声が聞こえたかと思うとドサリと地面へ倒れる音がした。
何がどうなったのだろう。
様子を見ようと目を開けようとするが、瞼が重くて上がらない。

「龍之介、しっかりしろ!!龍之介!!」

平助が耳元で叫ぶ。
あの時…咄嗟に化け物の攻撃を避けられたから、多分、傷は急所から外れているはず。
だけど、止めどなく血は流れ落ちてるようだ。
このまま流れ続ければ、私はきっと死ぬ。

このまま

死んでまう……

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