4、心細い
「はあ。なんで、こんな事に……」
井吹は自由に使っていいと言われた部屋のベッドに座り頭を抱えていた。
「そりゃあ、君があそこにいたから」
「!?」
声がした方へ振り向けば、沖田が出入口に寄っ掛かって井吹を見ていた。
「どういう意味だよ?」
「巫女が、ある所に落ちたっていうのが分かった人がいてさ。その場所に行ったら、君しかいなかったし連れて来たんだけど……」
言いながら、沖田は部屋に入り井吹へ近づく。
「もし、君が巫女じゃなかったら僕の責任だし、僕が斬ってあげるよ」
「なっ!?」
にこりと笑ってはいるが、目は笑ってはいない。
本気で言っている事が分かり、井吹は目を白黒させて驚く。
それを満足そうに見た後、沖田は部屋から出て行った。
「……物騒な奴……はあ……本当、これからどうなっちまうんだ?」
この先が不安になる井吹。
そして、先ほどまでの近藤との会話を思い出した。
――『井吹様には、七星士を集めてもらいます。二人分かっておりますので残り五人……』
『え?二人分かってるのか?』
『はい。そちらにおります、総司がその一人でごさいます』――
そういえば、もう一人は誰だったんだろう?
あの場に居たら、きっと紹介してくれたのだろうが。
もう一人は誰かを聞く前に、沖田の進言で疲れてるだろうし部屋へ案内する。もう一人は近い内に紹介しよう。と言われてしまった。
先ほどの沖田の様子を合わせて考えると自分は嫌われているのだろう。
井吹は、そう考えると立ち上がる。
ここで、うだうだ考えても仕方ない。
七星士を集めれば、願いで元の世界に帰ることができる。
さっさと、こんな世界からおさらばだ。
二人は分かってるんだ。
あと五人見付ければいい。
井吹は、誰にも何も告げず町へ繰り出した。
沢山の人が行き交う通りをぶらぶらと歩く。
町の人は井吹を不信そうに遠目から見ている。
誰が何を言ってくる訳でもないので、井吹は気にせず歩く。
そういえば……探すと言っても、七星士と分かる目印か何かあるのだろうか。
大事な事を失念していた……。
仕方ない戻るか……。
と踵を返した時
ドンッ
「うわっ!?」
「いってぇ〜っ!!」
後ろを歩いていたらしい人に井吹はぶつかってしまった。
相手の男は尻餅をついている。
「わ、悪い……大丈夫か?」
スッと井吹は手を差し出すが、男はその手を取る訳でもなく立ち上がる。
「いってぇな!!」
睨み付ける男に、井吹はムッとした。
「だから、今悪かったって謝ったじゃないか!」
「ふざけんな!それが謝る態度か!?」
何処から湧いて来たのか、ぞろぞろと手下っぽい連中が集まってニヤニヤと井吹を見ている。
キッとそいつらを睨み付け、井吹は駆け出した。
「たあぁぁぁっ!!」
「「「うわっ!?」」」
そいつらにタックルを食らわし、そのまま走り抜ける。
「逃がすな!追え!」
井吹は後ろも振り返らず、無我夢中で町の中を走り抜けた。
「っはあっはあ、はあ……こ、ここまで来れば大丈夫か……?」
キョロキョロと辺りを見回し、あの奴らが居ない事を確かめる。
居ないと分かりホッと一息つくが
「……ここ何処だ?」
無我夢中に走ったことで、近藤の屋敷に続く道が分からなくなってしまった。
きっと、誰かに聞けば分かるんだろうが……。
あいにく、周りには人の気配が全くしない。
……心細い。
知らない世界で知らないことに巻き込まれて。
ブンブンと頭を振りその考えを振り払うと、適当に歩くことにした井吹は、誰か居ないか、何処か見覚えがあるところに出ないか見渡しながら歩いた。
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