5、あんた(ら)、何者?
「いたぞっ!こっちだ!!」
意外にしつこい男達は、井吹をまだ探していたらしく、井吹を見つけた途端、声をあげた。
くそ、と心の中で悪態をつき舌打ちを打つと井吹は走り出す。
が、
巻くために角を曲がると違う男が二人駆け寄ってくる。
後ろを振り向けば、同じように二人の男が。
挟み撃ちにされたらしいと分かった井吹はジリジリと左右から近づいてくる男達を睨み付けた。
「やっと見つけた〜!」
その場に似つかわしくない、安堵に満ちた声がその通りに響く。
男達も井吹もその声の主に目を向けた。
そこにいたのは、髪の毛を頭の高い位置で一つ結びをした青年だった。
その男は井吹と目が合うとニッと笑い近づく。
井吹を囲んでいる男達など視界に入ってないかのように、歩いてきた。
「てめえ、なにもんだ?」
ザッ
井吹の回りにいた男達は、その男を取り囲む。
「多勢に無勢……ちょっと卑怯なんじゃねえか?」
また、違う方向から声が響く。
一つ結びの男と違う方向から現れた二人の男。
赤い髪で長身な男と額に鉢巻きをした短髪の男だった。
「くそっ!やっちまえっ!」
リーダー格だと思われる男が声を上げ、現れた男達に殴りかかった――。
あっという間の出来事だった。
三人組は、打ち合わせをしていたのかと思うぐらい息を合わせて男達を倒したのだ。
地面に伏せる男達からは、うめき声さえ聞こえない。
おそらく、気を失っているのだろう。
「こいつら一体、何者だよ……」
「おい、大丈夫か?」
唖然と口を開けていた井吹は、その声で我に返った。
「……べ、別に助けてくれなんて頼んでない」
プイッと顔を背ける井吹に赤い髪の男が拳骨を井吹の頭に落とす。
「いってぇ!なにすんだよ!」
「お前、助けて貰ってその言いぐさはなんだ」
「俺は本当の事を……」
言ったまでだ
と続くはずだった井吹の言葉は、赤い髪の男がバキバキと指を鳴らした事で尻窄みになる。
「っ……ま、まあ…助かったよ」
殴られたくないから慌ててそう言い繕うと鉢巻きをした短髪の男が笑う。
「左之には逆らわない方がいいぜ。男には容赦ないからな」
「ああ、そうするよ……」
ガクッと力なく井吹は言うと頭の高い位置で結い上げている青年が駆け寄って来た。
「大丈夫だったか?」
「ああ、助かったよ」
井吹は、また殴られたくなかったので今度は素直にそう言う。
「しかし、なんで俺のことを?」
その青年に井吹は疑問をぶつけると、青年は井吹にニッ笑うと
「ああ、さっき追いかけられてるのを見つけてさ、助けなくちゃって思って。
そんなことより、お前名前は?オレは藤堂平助。同い年ぐらいだろうし平助でいいよ」
人懐こく笑顔で藤堂は名乗る。
「俺は、井吹。井吹龍之介」
「いい名前だな。俺は、原田左之助、こっちは永倉新八だ」
赤い髪の男――原田が名乗ると隣にいる鉢巻きをした短髪の男を指す。
「んで、龍之介は何でこんな所にいるんだ?」
永倉の疑問に井吹は簡潔に答える。
「なるほどな。じゃあ、お前は迷子って訳か」
「ちがっ!…わないけど……」
原田の言葉を否定しようと井吹は声を上げるが実際、戻る道は分からないのだ。
元気をなくして肩を下げる井吹に、原田はポンと肩を叩く。
「俺達が送ってってやるよ。さっきみたく変な奴らに絡まれるかもしれねえからな」
「え……」
「大丈夫だって、オレ達に任せとけって!」
戸惑う井吹に、藤堂はニカッと笑う。
「ほらっ!行くぞ龍之介!」
藤堂は井吹の腕を掴み走り出した。
結局、何者なのか分からない。
だけど、決して悪い奴らじゃない。
「お、おい!ちょっと!」
止める井吹の声も無視して、藤堂は楽しそうに走りながら笑うのだった。
prev /
next