暖取試合

「………っひっきしっ!」

朝、己のくしゃみで目覚めた井吹はもそもそと布団から這い出た。
寒さでフルリと身を震わせ、身支度を整えると部屋から出る。
襖を開ければ身を切る様な冷たい風が身体全体を冷えさせ、吐く息が白く色付く。

「さ、寒い……死ぬ……」

もうやだ冬嫌い、と身を縮ませ少し早足で広間へ向かった。




廊下を歩いていると、何やら中庭の方が騒がしい。
首を傾げてその方へ向かうと、そこには半裸の原田、永倉、藤堂が居た。
永倉は井吹を見つけると笑顔で声を掛けてきた。

「よぅ、龍之介!お前もどうだ?乾布摩擦」

「乾布摩擦?」

「あぁ、健康に良いしあったまるんだって!」

な、やろうぜ!、と井吹の手を引くのは藤堂。

しかし、いくら温まるからと言って、この寒い中半裸になるのは絶対御免だ。
原田や永倉の様に筋肉があるならまだしも。

嫌だ、と断ろうとした時、原田が左手を差し出してきた。

「ほら、平助もこう言ってんだからこっち来いよ」

「何で俺がやらなきゃならないんだ?別にあんたらだけでやりゃ良いだろうが」

「馬鹿言うんじゃねぇよ。
最近風邪が流行ってるらしいし、健康に良いんならやって損はねぇだろ?」

「風邪ねぇ……」


【風邪】という単語からは掛け離れてるあんたらが言うと、何か変に感じるのは気の所為か?