モノクロームの思い出に(3/3)
外に出ると、軽薄な笑みを浮かべた長身の男に彼女が腰を抱かれているではないか。
彼女はというとあからさまに迷惑そうな顔をして、相手の男の胸を両手で押えて突っ張っている。
怒りで目眩がする。
ええ度胸しとるやないのォ、アイツ。
欲しいモンは力尽くで手に入れるいうこと?
上等や。
目眩の勢いに任せて、ふらりと2人に歩み寄る。
華奢な肩を抱き寄せて、思いっきり男と彼女を引き剥がした。
「ボク、名前の婚約者の御堂筋いいます」
使えるものは使って、1番ダメージを与えられる方法で抑えていく。
お得意の戦法だ。
罵声を浴びせるより、正攻法で止めに入るより、勝ち目はないことを余裕を持って分からせる、これが一番この手の男には効く。
案の定戸惑った表情を浮かべる男を見ながら、更に親密な空気を醸し出して、お前に入る隙はない、と締め出していく。
去り際、最後の留めに自分の腰に手を回すよう彼女に言うと、随分と戸惑った表情をしていたが、まぁ上手くいった訳だし上出来だ。
「…もう離れてもええんやない?」
「…そやね」
ポツリと呟かれた呟きに、若干の名残惜しさを感じながらパッと手を離す。
同時にクイッとジャケットの後ろを掴まれた。
「…ありがと」
いや、なんやのこの子…。かいらしい過ぎる…!
不覚にも跳ねた心臓を抑えるように言葉を返すと、でも、と更に言葉を重ねようとした。
ボクが欲しいンは、そないな上辺の言葉やないよ。
自分の中の欲がムクムクと大きくなる。
彼女の本音が聞きたい。
「ほんまに婚約者になってもかまへんて、ボクは思てるよ?」
弾かれたように上がる顔を見て、自分でも意外な程柔らかな笑みが浮かぶのが分かった。
あの日よりずっと優しく、丁寧に、ゆっくりと口付ける。
あの頃、震える手を懸命に抑えて触れた頬を、今はしっかりと包んで。
「やっと迎え来れたわ」
ほんま、この言葉言うのに何年かかってんの。
お互いアホやな、と思いながら彼女が紡ぐ想いを聞く。
こんなにも伝えたい想いがあったのに、何を遠慮して抱えたきてたんだろう。
でもそんな時間もきっと、いつか愛おしく思える日がくるだろう。
キミが今までどんな人生を送ってきたとしても、今この瞬間この腕の中にいることが全て。
生きて、恋をして、辛い思いも沢山して、大人になって、ボクらはまた出会った。
キミだけに話したいことが、伝えたいことが、山のようにある。
キミの話も聞かせて。
こんなにも綺麗になったキミを作った時間の話を。
fin