2020/02/27
それから、指示されていた通りに「超高校級のピアニストの研究教室」に向かったが、件のピアノを調べたら酷い有様だった。
瓦礫とも言える壊れ様に、合歓や琴都はやる気を無くしていたが、話し合った結果、協力してなんとかやり遂げよう、ということになった。
そして今私と琴都は、倉庫に居る。
使えなくなった部品が多かったので、新たに木材を取りに来たのだ。
しかし目当ての木材は棚の一番上にあり、リフトで昇らなければ届かない位置。
高所への恐怖と、イマイチ安心感に掛けるリフトの構造に、私たちは立ちすくむしかなかった。
「うぅ...紗如は下で待ってて...私いってくる...」
「えぇ!? 大丈夫?」
「ま、任せてよ」
そう言った琴都の表情は、全然任せていい表情じゃなかった。
言われた通りに、私は下で見守りながら、自分にできる準備をしていた。
子猫のように震えながら琴都がリフトを操作する。
「よし、こ、これを取って...」
危なっかしくよろけながら、琴都が大きな板を棚から取り上げる。
私は届くわけないのに支えようと無意味に手を伸ばしてバタバタしてしまった。
そして、ぷるぷると危うい手つきで琴都はリフトに板を乗せようとした。
その時。
「うわっ」
ガチャ、と背後で扉が開く音とともに、驚いたような声が聴こえた。
その拍子に琴都が板を落としそうになる。
振り返ると最原終一と百田解斗が目を丸くしていた...が、それどころじゃない。
私は琴都の方へ向き直った。
「たっ...たしゅけてぇ...」
板と共に落下しそうになっている琴都に、私の方へ落とすように声を掛ける、が不意にとんっと肩を押された。
「オレに任せろぉ!!」
「へっ!?」
百田解斗が、リフトの真下にある荷物を大雑把にどかし始め、そこに最原終一が慌てて加わる。
「あっ、あの...何して...」
「よし、これで大丈夫だ! 落とせ詩守村!」
「えぇ!?」
「ちゃんと真下に落とせよ!」
百田解斗は大声で琴都に呼び掛ける。
私も琴都も困惑していたが、琴都は握力が限界だったのか、思い切って板を離した。
バァンッと車が倒れるような衝突音。私は思わず耳を塞いで固まってしまった。
そっと目を開くと、平らな床に板が倒れているだけで、どこにも被害はなかった。
琴都も、百田解斗も最原終一も、ほっと息をついている。
それから、私たちだけで運ぶのは危なっかしいから、と半ば強引に手伝ってくれることになり、百田解斗はリフトに乗って昇っていった。
どうせモノクマの監視の目があるから、と2人は私たちのことを警戒していないと言っていた。
恨めしくないの?
そう聞けたらよかった。
だけど、モニター越しに見た赤松楓の最期の姿が、脳に深く刻まれていて。
多くの想いでそれを見届けたはずの彼らに、そんなこと聞けるわけがなかった。