最後にはイチジクの葉を脱いで、

ふぁさっ

ファスナーを直す為とは言え、目の前でこんな爆乳が制服を脱ぐ姿はとんでもなく刺激的で、俺の体が男でなくて良かったと痛感した瞬間1回目だ。
男の体でなくても、少しサイズが合ってないせいでブラから溢れそうなでっかい胸は勢いのままに揉みしだいて蹂躙したくはなる!このままじゃファスナーを直すとかじゃ終われない。
少し唸って悩んでから降魔に隠させるべく俺の制服を渡した。

無事に制服を直して、終わり…としたかったが見てしまった以上は気になる。
最近は会社もランジェリーにも気合を入れてるから俺も同じくランジェリーや下着類のデザインや作り方も学び始めて、ちょっと分かってきた所で、齧り始めのモチベ最高潮期で、1番気になるんだよなぁ〜!
ぴったりサイズのブラをつけたら絶対綺麗な形が出る、フェチ的には今のズレた感じも好きだけど、服飾する側としては最高に綺麗な形を出したい。

でも初対面で『降魔!ブラのサイズが合ってない、俺にお前のブラを作らせてくれ』は気持ち悪いだろ!!!

だから教室に戻っても必死に耐えた、またな、で我慢した。
でも残りの授業中も終礼の時間も永遠に俺がデザインした、俺の作った下着姿の降魔ばかりが頭に浮かんできて今作っている服を作る手が進まない。
これでは仕事にも支障が出る。
それに降魔の精神面も気になってもいる、関わった事は無かったし、ずっと一方的にスケベ心で見てただけだけど今回の事で絶対傷付いてる、苦しんでる、それを察しながら無視はし難い。

これは、もう行くしかねぇよ!

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そんなこんなで、降魔が俺の家に来てる訳だが、家に2人きりってこんなにドキドキするんだな…。男の体じゃ無くて良かったと痛感した瞬間2回目がもう来てしまった。

「あの、ごめん…さっき見ちゃって、降魔…下着のサイズ合ってないと、思うんだ」
「え、えっ…!?」

雰囲気作りなんていらねぇ、早く本題を伝えた。嫌がったら早く帰してやんなきゃだし。
俺の指摘に降魔は顔を真っ赤にして、驚いたせいか制服の中でたぷんっと胸が揺れた。
……ありがとう。じゃなくて

「き、気持ち悪いよな。でも気になってさ、ちゃんとしたサイズの…付けた方が良いと思って」
「こ、高校に入る時に買ったんだよ!?勇気出して、ちゃんとお店で測ってもらったの…入学して半年しか経ってないのに……」
「お、おほぉ…すげぇ発育…。俺さ、最近下着作りがしたいんだよ、だから回数重ねられたら嬉しいからさ、ついでに降魔の下着作りさせてくれねぇ?…勿論、俺が怖かったら無理すんなよ?さっきの事があって今だし…」

入学前に買って、もうそんな成長したのか!?と内心はキュンキュンと男心が興奮して暴れ出しそうだった。
作ってすぐダメになったとしても、俺としては数をこなせてありがたいし、降魔はマシュマロおっぱいを守れるし、なかなか良いんじゃ?とは思うが、昼に男子に乱暴な事をされたんだ、怖いかもしれない。

「…?、あ…さっきはちょっと怖がっちゃったけど…牛巻さんは女の子だから、大丈夫だよ」
「ゔっ…」
「でも、助かるけど…本当に良いの?」

大半の男どもにはわかんねぇだろ、襲われるかも!って警戒されてみたいこの気持ちが。
でも、そうだよなぁ…男っぽい格好が好きなだけの女かもしれないし、男っぽい格好してるから男になりたいんだ、まで結びつける訳にはいかないし。
本人も自覚がないかもしれないし、本当にそうじゃないかもしれないし。ある意味降魔が健全なのかも。
でも、なんとなくいつにも増して、男に見られてない事が悔しかった。

「うん、良いなら早速採寸して良い?」
「ぅ、うん…脱ぐのは少し恥ずかしいけど…どうぞ」

昼の時と同じように降魔は制服を脱いでいく、そして今回は当然下着も…。
こんなに見たいのに、こんなに見たいのに!いざ外した瞬間はなんか見れなくて両手で目を覆う体たらく、情けない。
改めて、すげぇデカい、重そう。
すぐに色んな妄想が広がる、すげーえっちなのも着けて欲しいし、重そうだからなるべく楽にしてやりたい、心地よく支えてやりたい。
直前までは男の欲とデザイナーの欲を反復横跳びしながら、いざ採寸するとなるとデザイナーが圧勝した。

「よし、おっけ。ありがとう降魔」
「う、うん…急がなくて大丈夫だから、体には気をつけてね?」
「うん、…もう服着て良いよ」
「うん……」


「………あの、ま、蒔生ちゃんって、呼んでいい?」

制服を着ながらそわそわ、もじもじ、キョロキョロしていた降魔から漸く開かれた言葉はすごく遠回りな友達になりたい、と言わんばかりの言葉に思えた。

「ちゃ、ちゃんはやめて欲しい…普通に、蒔生で」
「うん、じゃあ…蒔生…」
「……おん…。莉々夢、ok?」

なんか久しい感覚、すげぇドキドキして緊張する。
ちょっとお互い緊張したまま、莉々夢を家へと送っていく。
途中でふと、今日は酷い事があったが…明日から学校に来るのか?漠然と心配になった。

「学校…来る?」
「………明日は、休んでも良い…?」
「へ?そりゃ良いんじゃん?いや、俺は…来て欲しいけど…」
「……明後日は、行くから…」
「ん、じゃ…待ってる」

その言葉通り、莉々夢は次の日に休んだ。
それを良い事にクラスの奴らは相変わらず動画の主は莉々夢だ、とまた話していたけど流石に本人に無理やり聞く事はそうそうないだろう。
俺は流石に下着を学校で作る訳にもいかなかったから、夜に作り進めた。

その次の日には少し緊張した顔つきの莉々夢が登校してきてくれて、また空き教室に行って、簡単なサンプルを試着してもらった。

「どう?」
「うん、なんだか凄く楽…!肩もずれない!」
「当たって痛いとか、苦しいとか…ちょっとの違和感でもあれば言って。莉々夢用に、莉々夢の為に完璧に仕上げるのがオーダーメイドなんだし」
「…本当に楽だよ?でも、そんなオーダーメイドなんて…お金を出さないでしてもらうのは…申し訳ないよ…」
「…でも、今は俺に金払う余裕なんてないだろ?それに金貰えるほど完全なもんでもないしさ。まぁ、金じゃなくてもなんでも良いし大人になってからで良いし、俺も楽しいから。とにかく!ちょっと時間かかるけど、シンプルめの莉々夢専用ブラ作って持ってきてやるからな!」

楽しそうに少し体を上下に動かして胸をたぷたぷ揺らす様子は眼福だし、お礼なんかそれで十分だったけど何かと控えめで臆病な莉々夢に、礼はいらない、と言い張っても不安を煽るばかりだろう。
父親の事、家計が大変だった事は着替えながら本人が伝えてくれた。
本当に礼の必要は無かったから、クラスが別々になって縁が切れても、卒業で縁が切れても良いように、大人になっても出来るようになったらで良い、と伝えておいた。
それで渋々ながら『…うんぅ…』と小さく頷いてはいた。

…でも、まだ聞けない。
あの動画は本当に莉々夢なのか?
そう聞いて、"はい"と答えられたら、どうしたら良いのか?
本当は辛いんじゃないのか?やめられないのか?と言うのか?でもそれにも"はい"と答えられたら?
俺だってまだ子供だし、やってやれる事は少ないし…。
聞いたって何も解決してやれない、なのに本人が嫌ならやめた方がいい、なんて安易に言えない。
いつか莉々夢が"辞めたい" "助けて" と言ってきた時には…なんとかしてあげられる俺だったら良いのに。


次の日からも莉々夢はちゃんと学校に来た、そして昼休みになると恥ずかしそうに大きな胸を細い腕が狭苦しく押し詰めて強調するようにもじもじしながら、『一緒に食べて良い?』と聞いてくる。
だから、2人で飯を食って、2人で一緒に移動もして、2人で一緒に帰って。
気がついたら、毎日が莉々夢と2人になった。

すっかりクラスの奴らにも、牛巻降魔ペアとして認識されてたのは満更でも無い気持ちだった。

1年ももうすぐ終わりを迎えようとしていたある日、
「蒔生とクラスが別々になっちゃったら、私学校には来れる気がしない…どうしよう、怖くて…眠れないの…」

帰り道の途中、莉々夢が後ろから俺に抱きついてくる、背中に押し当たる柔らかい胸の感覚にすぐ意識が向いてしまうが、すぐに震えた声にそんなスケベ心は飛んでいく。
まさかそんな事を考えてたなんて、そんな事で眠れなくなるなんて、自分には想像がつかなくて驚いた。
ずっと適度な1人が当たり前だったし、幸い変な奴とは思われてても服が作れれば気にならなかった、それくらい"他人には"執拗に深く関与されたり傷付けられた事が無かったから。

「……大丈夫、なれるって」
「無理だよ…!クラス、たくさんあるもん…なれなかったら、どうしよ…また怖い事されたらどうしよう…蒔生が居ないと、私…またお家を出る時、足が震えちゃう…」

そんな莉々夢の不安を聞いた途端、こっそり先生に諸々話して同じクラスにしてくれ、と頼み込んで『ほら、大丈夫だっただろ?』とイキってみたかった。でもそれじゃそれまでの間ずっと莉々夢は不安なんだ、と背中に顔を擦り付けるように首を振るのを肌に感じて漸く痛感する。

「…先生に、頼んで一緒にしてもらうか」
「…!…でも…して、くれるかな…」
「クラスを一緒にしないと莉々夢が不登校になるんだぞ?一緒にした方が良いって、分かるだろアイツらも」
「……うん」

次の日、終業式の放課後に担任教師の元に行って諸々の説明をした。
泣きそうな顔で俺にしがみつき続けた莉々夢を見て、ただ友達と一緒に居たいだけ、ではないと理解したのか承諾してくれて無事に俺達は2年でも牛巻降魔ペアを続けられた。


無事2年になって、あっという間に夏が終わって秋が始まろうとしていた、ある日

「降魔、お電話がかかってきたぞ、職員室に来てくれ」
「?、はい…」

授業中だと言うのに、教師に呼び出されて莉々夢は教室から出ていく。
そして、5分程してから足早に教室に戻ってきた莉々夢は動揺したように揺れる瞳で俺を見てから、鞄に教科書や荷物を詰めていく。

「降魔さん早退するの?」
「うん…」
「そっかー」
「………」

どこに?何があった?聞きたかった、でも急いでいる様子の莉々夢に言い出せなかった。
早退の準備が整うと、慌てた様子で莉々夢は教室を後にする。

動揺したような泣きそうな瞳を思い出しては、まさか、お父さん…亡く…いや、考えたくない。
違う、そうだよな?

そして放課後、莉々夢からメッセージが届いた。

__蒔生、病院の住所を送るから来て欲しいの。

__すぐ行く!

送られてきた病院の住所をスマホで確認してから走る、莉々夢…泣き崩れてるかも知れない。
早まる前に、俺が、俺が抱きしめないと!
今は俺がいる、忘れないでくれ莉々夢!

病院に着いてからはあくまで早歩きで院内を歩く、並んだ沢山の椅子に座る人達の中に見慣れた桃色を探す。

「蒔生!」

声に振り向けば、涙の跡が残る莉々夢が足早に近づいて来る、どんどんと早くなって最後の方は走り始めそうな勢いで近付いて…

ぎゅうぅっと俺に抱きついた


__________________

「降魔、お電話がかかってきたぞ」
:
:
「…今すぐ、こちらに来られますか?」
「すぐ行きます!」

心臓がバクバクする、体の中で何かが爆発してしまいそう。
早く、早く病院に行かなきゃ、早く自分の目で確かめたい。
呼吸が荒くて震える、教室に戻って荷物を纏める最中も今だけは蒔生に意識を向けてあげられなかった。

走って病院に向かう、あまり走り慣れてないから遅いけど…昔とは絶対に違う、胸をしっかり支えてくれる下着がちゃんとある、だから走っても前みたいに痛くない。
それだけで、少しだけ体が軽いみたい…!

病院に着いて、父が横たわる病室へ一直線に向かう。
蒔生と出会ってからは蒔生との時間も大切にしたくて毎日は来れなかった、でもなるべく来れる限りは来ていた、だから迷いなんて生まれない。

一気に扉を開きたい衝動を抑えて、扉をノックする

「…どうぞ」

少し掠れた声が聞こえるとすぐに扉を勢いよく開いてしまう

「お父さん!」

「莉々夢、病院の扉は丁寧に開けないといけないよ…?」

ベッドの上で、父がこちらの方へと顔を向けては困ったように笑う。
その姿を見て、涙がボロボロ溢れてお父さんの顔が見たいのに、全然見えない。
でも、ぼやぼやな視界の中に見える、点滴のついた腕が私の方に伸びているのは分かって、まるで子供のようにとぼとぼと、小さな足取りで…柔らかく柔らかく抱きしめた。

「お父さんが、ずっと起きないからぁぁ…」
「…ごめんね、莉々夢…ありがとう…」

声が震えて、父の肩を涙でぐしょぐしょに濡らして…落ち着いた頃に看護師さんが来て説明を受けた。
後遺症で手足の痺れがあって暫くはリハビリ生活が必要で、完治は厳しいかも知れないがリハビリの頑張り次第では生活や、仕事にも支障が出ないくらい回復する見込みはあるらしい。
説明を終えて、改めて落ち着いて父のベッドの傍に座る。
父が居なかった高校での生活を話した。
民さんとの事は言い出す事が出来なかったけど…蒔生の事を沢山話せた。

「だから、蒔生の事が大好き…蒔生は女の子だから、恋愛じゃないけど…でも、蒔生に触れられるとドキドキして、たまに蒔生と…き、キスしたら、とか考えちゃって…。蒔生が男の人だったら、恋人になれたのかなって…。でも蒔生が男の子だったら私、こんな気持ちになれてたか分からないし…」
「…その蒔生さんが女の子でも男の子でも、恋愛で良いんじゃないかな?女の子だから違う理由にはならないでしょ?男の子だったとしても、慎重に丁寧に支えてくれたんじゃないかって、莉々夢の話を聞いてると思うよ」
「…そ、そうかな…?でも、恋愛をするのは男の人と女の人、でしょう?それに私、別に女の子が好きって思わない…男の子も怖いけど…」
「うーん…そもそもそんなに性別って、大切かな?…男の子だから、女の子だから〜ってみんなが同じな訳ではないし、誰かを1人の人として、尊敬して好きになるって、そんなに変かな?」
「……1人の、人…?」
「うん、お父さんも男の人を好きになった事はないよ。でも、誰かを好きになる時に男の子だから女の子だから、なんて区別は絶対に必要ではない、と思うな。"この人が"好き、それで良い…とお父さんは考えました。」
「………」
「勿論すぐに答えを出す必要はないんだよ?友情なのかもしれないし、もしかしたらもう家族のような存在かも知れないし、はたまた恋愛感情なのかもしれない。ただ…性別だけでどちらかに限定する必要はない、それだけだよ」
「…うん、そうだよね…。よく、考えてみる。……ぁ、蒔生呼んでも良い?会って欲しい…お父さんにも、蒔生にも」
「あはは、勿論!…お父さん、顔変じゃない?大丈夫かなぁ」

:
:
:

「蒔生!」

蒔生からの返事を見てから、もう少し父と話してから病室を出て広い待合室へと向かった。
少しうねった焦茶の髪が目に入ると、走り出したい気持ちを抑えながら名前を呼んでそばに行く。
心配した顔で汗を垂らす蒔生の顔が振り返る。
私…蒔生のおかげでここまで待てた、蒔生のおかげで生きていられたんだよ。

たまらない気持ちになって、結局最後の10歩くらいは走ってしまいながら

ぎゅうぅ、と強く蒔生に抱きついた。

_____________


「り、莉々夢!大丈夫か…?俺がいるから…思いっきり泣いていいから」
「…ううん、もう大丈夫。…お父さんがね、目を覚ましたのよ。蒔生に会って欲しくて…だから呼んだの」

ネガティブな想像ばっかりで、涙の跡しか見えなくて、いざ抱きついてきた莉々夢の表情はとても柔らかくて、蕩けそうに微笑む。
天使ってきっと、こんな笑顔なんだろうな、と思ったくらいだった。
そんな見惚れそうな莉々夢の顔に数秒思考を奪われた後、漸く言葉の意味が脳の中で繋がる。

「まっ!!!!…じ…?」

思わず出た大きな顔に少し頬を染めながら、慌てて声を潜める。

「ふふ、まじっ」

一緒に歩いて病室に向かう、一緒に見舞いに来た事はあるけど当たり前に眠ってる姿しか見た事なかったから。
どんな人なんだろ、娘はやらん!とか言われたらどうしよ、なんて先走った思考の中で莉々夢のお父さんがいる病室の扉が開かれる。

「…初めまして、蒔生さん?」

髪は黒髪だったし、眠ってる時はあんまり莉々夢と似ているのか分からなかった。
でも、起きてこちらに柔らかく微笑む、幼く見える顔とおっとりとした雰囲気と丸みの強い瞳は、莉々夢にそっくりだと感じた。

「は、初めまして…牛巻、蒔生です。その…無事にお目覚めしたと、さっき聞いて…手土産もなくて…」
「あはは、蒔生さんはしっかりものだねぇ…どうかお気遣いなく。莉々夢の事、とても気にかけてくれてたんだと聞きました、本当にありがとう…」
「い、いえ…!」

物腰が柔らかいし、莉々夢の父さんだし大丈夫、と思いつつ妙に緊張してしまう。

「莉々夢、蒔生さんにお飲み物買ってきてあげてくれるかな?お父さんにお水もお願い」
「うん、分かった」

頷いた莉々夢はニコッと笑ってから病室から出ていく。
ふ、2人きりか…何を話そう、とそわそわしていれば莉々夢が出たのを視線で確認してから、困ったように眉を下げて俺に視線が向けられる。

「莉々夢が、どんなお仕事をしているか知って…る?色んな制度で援助があった、と聞いたけど…僕の入院代も多分少なからずある、生活もある。あの子がいきなりそんな沢山お金を稼げるとも思えない。…僕に言いたがらない様子からして、言いたくない事なんだと思う。…まだ何か、心を擦り減らしているのかもしれない…僕は何も聞けない、だから蒔生さん…どうか、よく見てやってくれませんか」

必死に慰謝料を払って娘の生活も守って働いて来た人だ、目覚めたばかりでもすぐに考えたんだろうな、娘がこの一年半以上、どうやって自らの生活費に加えて自分の入院代を稼いだのか。

「正直、俺も莉々夢さんを傷つけてしまいそうで、触れていませんでした。…でも、俺が…莉々夢を助けます、莉々夢がお父さんに報告出来る仕事に就かせます」
「……蒔生さん、カッコいいなぁ、あはは…どうか、お願いしますね」

思いっきりカッコつけました。どうやって触れよう、お父さんに報告出来る仕事とは!?どうやって見つける?まだまだ人間と関わるのが不得意な莉々夢さんだぞ。

その後2人で帰路について、今日は幸せな気持ちを邪魔しないようにやめておこう、と聞くのはやめた。
でも、次の日も、次の日も…何かと言い訳をつけて莉々夢には仕事について聞けないままだった。

そのまま1週間経って、莉々夢の手首に痣のようなものを見つけた、いや、でも…何か寝てる間についただけかも…とか言い訳をして、また逃げてしまった。
でも、日が進む程に言い訳を続けるのは厳しくなっていった。
何日経っても薄まらない手首の痣、首元にも痣が出来て…

せっかく大好きなお父さんが目が覚めたのに、莉々夢の瞳はどんどん濁るばかりだ。
そして、決心を固める日が来た。

莉々夢の口元が切れていて痛々しい、昼飯を食うにも痛そうに表情を歪めていた。
なのに何も言わない、言い訳すらしなかった。

もう、何も言い訳は出来ない、するな。
そもそも遅いんだよ、馬鹿、ヘタレ。
終礼が終わるなり莉々夢の前に立って、いつもよりも険しい顔で見つめた。

「…莉々夢、そろそろ採寸、しとくぞ」

数ヶ月に一回している採寸、これを拒否するか受け入れるか…やましい事が無いなら受け入れるよな?

「…も、もう平気よ?最近は前ほど大きくなってないから…」
「…莉々夢、逃げないでくれ」

もう、これ以上後悔する訳にはいかない。
逃げようとするなら、もう逃さない。
逃げない。

痣のついた手首を優しく包む、言葉にしなくても、何が言いたいか…何を言って欲しいのか、察してくれと眉を下げて首を傾げた。

その後莉々夢は静かに俺の後ろを歩いて、いつも通り俺の部屋に入った。
やはり、自分から口に出すのはどうしても勇気が出ない様子で、俯いて黙っていた。

「…ずっと気になってた、でも触れなかった。莉々夢を待ちたかった、でももうダメだ。…なぁ、何してるんだよ?」
「…………ごめんね、言っても解決しないから…言えなかった。お父さんが、倒れた後…家庭教師の民さんに相談をしたの…」

そこから、静かに聞き続けた、ずっと莉々夢の首を死なない程度に締め続け、縄を引いていた男の話。

____________________


最初は、多分至って普通だった。
カメラの前で服を脱いでいって、民さんが私に触れていった、深く、私でも触れた事の無い私の体の奥まで深く……

でも同じような事をしていても、見る人は飽きてしまうから、と色んな事をした。
俯せになったり、民さんの体の上に乗ったり、言われるままの色んな事。
きっと上手に私を売ってくれたんだろう、週に1回くらいの行為だけで子供の私には手にした事のないくらいの沢山のお金を貰えた。

慣れてきた頃からは週末にリアルタイムで配信も始めて、画面の中で流れるコメントの要望を取り入れたり、カメラの前でも色んな形の行為をした。
今まで知ろうとしなかった、大多数から向けられた性的な視線、抱かれた感情、欲望…その全てがリアルタイムで恥ずかしげもなく晒される。
時には外でリスクを背負いながら危険な行為を求められて、そんな姿を見られて見ず知らずの人に突然体を蹂躙される事だってあって。
そんな見ず知らずの人達の言う事を聞いて、恥部を晒して欲を満たして、その人達に実質的に養われていく事は、心を持った人間から外れて売り物の人形にでもなっていくような気がした。
それでも、自分が商品になっても見せ物の人形になっても…

「リスナーさん達は頑張って長い時間働いたお金を注いでくれてるんだから、莉々夢ちゃんも頑張って出来る限り応えてあげるべきだよね」
「みんな頑張ってるんだから、莉々夢ちゃんも頑張ってあげないと」
「莉々夢ちゃんが癒してあげないと、お父さんみたいに倒れちゃうかもしれないよ?」


私、頑張らないと。
頑張らないと、応えないと、恥ずかしくても悔しくても苦しくても。

お父さんもいない毎日、体がボロボロになって、心ごと継ぎ接ぎになっても、頑張り続けないと私に生きる価値はない。
そんな考えが当たり前になっていた。

そして、全てを諦めようとして捨てようとして、結局それすらも諦めて教室へ戻って、苦しい世界に戻った筈だった

「好きでもない事、頑張りすぎたら潰れね?サボりを正当化じゃねーけど、たまには良いじゃん?降魔が授業好きだったらゴメン」

「………明日は、休んでも良い…?」
「へ?そりゃ良いんじゃん?いや、俺は…来て欲しいけど…」

蒔生は別に、頑張らなくていいよ、とは言わない。
でも、頑張れ、とも言わないで私を待っててくれた。
だから時々お休みしても良いんだって知れた、待ってくれる人がいる事を思い出した。

確かにその後も私は頑張って耐え続けた、苦しさは無くならなかった。
でも蒔生がいてくれたから、お父さんが目が覚めて……もう辞めたい、と思えた、もう嫌だって思えた、危険を承知で言い出せた。

「動画を撮るの辞めさせて下さい…。お父さんの目が覚めて…やっぱりもう、これ以上は出来ません…民さんにはとても感謝しています!高校に合格出来たのも、ここまで高校に通いながら生きて来れたのも、民さんのおかげです。」

確かに苦しかった、辛かった、それでもそれは事実だった。
だからこそ、逃げ出すなんてしたく無くて、ちゃんと感謝を伝えて終わりたかった。

「…辞めて、どうするの?まだお父様も働けないのに、お前はどうやって生きていくの?」
「あ、アルバイトとか…探して頑張ります…お父さんの入院費も前よりはだいぶ落ち着くので…」
「…僕は用済みって訳だ、でもまだ僕は違うね」
「用済みなんて、違います…!ただ、この生活を続けていくのは…っ!!」

心底イラついたように、私を憎むように睨みつけて民さんが私を押し倒す。両方の手首を掴む手が強くて痛くて、本来体に込められる筈の力ごと制御されてしまう。

「まだ僕は足りないな、お父さんにバラしちゃおっか?全部見せちゃおっか?今まで撮ってきた動画全部!僕を用済みで捨てるつもりなら、こっちだってお前らが死のうがどうだっていい!もう捨てるだけの人形なら中から綿を出したって、汚したって良いんだから」
「た、民さん、……怖い、嫌…!」

その後、私は目を隠され、手足を縛られて痛くても、苦しくても気絶しても…体を好き放題に遊ばれた。

「ごめんなさい…民さん、ごめんなさい…!」
「まだ分かってないでしょ、まだ許してあげない」

何時間経ったのか、どれだけ体を弄ばれたか分からない。
解放される頃には心がボロボロで…民さんが怖くて、仕方なかった。

その日から民さんはとても乱暴に、強引に私を使った。
お父さんにバレたら、そう思うと逃げ出す事が出来なかった。

そして数日後、今までにない程のたくさんの札束を私に差し出す。

「お前に合わせて優しくしてたんだよ?でもほら、本気を出したら数日だけでこんなに儲けられる。お父さんにバレたくないなら僕の家でしたら良いじゃないか」
「………民さん、どんなにお金が手に入って…私は…」
「…だよね。お前は馬鹿だからこれくらいのお金じゃまだ分かんないかなって、思ってたよ。だから…」

後ずさった私の首を勢いよく掴みながら、民さんが誰かへ電話をかけた、そしてすぐに10人近くの見知らぬ男性達が家の中へ入ってくる。

自分の体にどれだけの欲望が差し向けられるのか、一瞬で察した体は…最初から最後まで酷く震え続ける事しか出来なかった。

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全てを聞いてすぐに慰めの言葉をかけてやりたいのに、俺は思考の整理に頭がいっぱいだった。

「………私、壊れずにいられたのよ。蒔生が明日も待ってるって、分かってたから…だから、もう少し待ってて?私、頑張るから…逃げ出す方法を探すから…」
「もう頑張らなくていい!」

まだ頑張ろう、そうする莉々夢に全ての思考を遮断して咄嗟に大きな声が漏れてしまう。

「…!」
「ごめん、マジでごめん…なんでもっと早く勇気出せなかったんだ…最悪だ…クソッ!!明日も明後日も俺がいるんだろ…?俺と探せば良かったんだ…!」
「蒔生……」

俺もまだ子供だ、莉々夢を1人で助ける術はない。
親とも絶縁状態だし、もう頼れる先は1つだけ……

:
:


もう半ば別荘なくらいによく来る服部夫婦の経営する会社に莉々夢を連れて入っていく。

服部さんの背中を見つけるや否や、色々すっ飛ばして背中から大声で

「は、服部さん…!あの…莉々夢は、服の事とか全然分からねぇし、出来る事少ないと思いますけど、や…雇ってもらえませんか!」

くるっとこちらに振り向いた服部さんは、莉々夢を下から上に舐めるように見つめてから、じっとりと細めた瞳で俺を見つめる。

「はぁ〜〜??」

流石にいきなりだし、戦力にならない莉々夢だし、怒られるかな…とビクビクしていれば、スタスタスタと早歩きで近付いてくる。

「出来る事が少ねぇ〜?」
「ひぃ〜…」
「ぁ、あの…私…何でも、します…出来る事があるなら…他のお仕事も頑張…って探します」
「…この節穴!!こんなグラマラスボディ!当社に今必要な最高のモデルじゃないのよ!さっさと出しときなさいよ!」

殴りはしないが一瞬拳を振り上げてジェスチャーをしてから、莉々夢の両肩に触れてくるくると回して体のラインを確認する。

「ぐ、グラマーモデルが必要とか言ってましたっけ」
「あんたが胸が大きくても可愛いブラが作りたいって試作の山を積み上げるから、みんなもやる気になったんでしょうが!」
「き、聞いてなかったっす…」
「ほんっとあんたは服作る事しか考えてないっ」
「へ、へへ〜…」

そんなこんなで、莉々夢は我が社でスチールモデルとして働く事になった。
勿論諸々の事情は説明して、民さんとやらについても、服部社長夫婦が対応してくれるらしい。
家も一応リスクヘッジの為に俺の家の近所のマンションに暫く引っ越す事になった。

幸い殆どが女性の会社だから莉々夢も比較的安心だし、新しい環境で慌ただしくもあったが、少しして落ち着いてからお父さんにも報告をしに行った。

「…良かったぁ…。ありがとうね、蒔生さん」

と心底安心したように柔らかく笑ってくれていた。
お父さんもリハビリを頑張っているようで、最近は手すりが無くても歩けるようになっていた。
次こそ莉々夢は全てから解放された筈だ。
暫くは少し慌ただしい日々でも、慣れた頃そこには普通の生活が待っている。


3年になる頃には、『蒔生とクラスが別れても、学校行けるよ』と少し強がる元気も出てきたようで、少し寂しい。
でも結局クラスは一緒になった。

「今年もクラス、一緒にしといたぞ!」

と先生が親指を立てて報告してくれたが、莉々夢の言葉を伝えると『えぇ!?』と驚いていた。
変わったとしたら、最近になって突然採寸の時に妙に恥ずかしそうにするようになったのは不思議だったけど、自分の体を大事に出来るようになったからなのかもしれない。
お父さんも退院して、ゆっくり仕事にも復帰し始めたし、相変わらず牛巻降魔ペアとして3年を純粋に謳歌した。
そして、あっという間に卒業式の日が来た。


「…終わっちゃったね、高校…。でもちゃんと、終わりまで居られた。」
「そうだな…」
「…私、街の行政の勉強とか沢山あるし、会える時間…とっても減っちゃうと思うけど…忘れないでくれる?」
「どうやったらこの3年間の莉々夢を忘れられるんだよ?てか、家近所なんだしたまには飯くらい食えるだろ?一緒に」
「ふふふっ…、うん!」

2人で歩く帰り道、冬明けの暖かい風が髪を揺らす。
なんだか先程から少し落ち着きのない莉々夢がそっと足の歩みを止める。

「…ね、蒔生…。私…蒔生の事が、好き。女の子同士だったから、この気持ちが本当に友情じゃないのか…自信がなかったけど…私、やっぱり、絶対、蒔生が好きなの」

女の子同士。
慌ただしかったし、聞かれなかったのもあって…未だに俺は、自分の心が男だ、とは伝えられて無かった。
そう答えたら、莉々夢が怖がるかも知れない、俺の前から消えるかも知れない。そう思うから。

この好き、は俺が男だったら向けられなかった。俺が莉々夢にとって女だから、向けてくれた気持ちだ。
俺も莉々夢が好きだ、でも…女として、女だと自分を偽って恋人になんてなりたくない。

だって、男の俺じゃ莉々夢はダメだろ…?

上手く答えを出せず黙りこくる俺の唇に、そっと莉々夢の唇が触れて重なる。
なんか、とんでもなく柔らかくて…許されるならこのまま…思い切り…

「ごめんね、蒔生…。ただ、伝えたかったの。お願い……嫌わないで、これ以上を求めたりしないから…友達のままで良いの、蒔生が他の人と結婚しても私はずーっと蒔生といたい、ダメ?」
「き、嫌う訳ねぇだろ…?びっくりしただけで…」
「ありがとう、ふふ…蒔生、またね?落ち着いたら連絡する!」

また、ヘタレた。言えなかった…。

ニコニコと手を振って少し離れた自宅へ向かう莉々夢を見つめる。

ずっと莉々夢ばかりを見て
俺は俺を見ないまま
まだ何も終わらせてなかったんだな

:
:
:

卒業後、俺も今までとは働き方が変わっていって莉々夢も色んな勉強と共に資格を取る為に多忙なようで、会う時間は全く取れなかった。
俺は有難い事に俺個人への依頼が増えて、会社に身を置きながら、1人でデザインから完成まで仕上げる機会も増えた。
今まで分散してこなしてた仕事を1人でやるのはやっぱ大変、睡眠時間を削るなんて当たり前。
リテイクとか、想定外の事とか色々ありながら充実した仕事生活を送れている。
改めて服部社長夫婦には感謝しかない。

そして、莉々夢と会えない間…いや会えなかったからこそ…覚悟を決められた。
雪戸の魔術や技術なら、俺は完全な男の体になれる。

俺は、20歳までに俺の体になる。

急激な変化に体を混乱させないように暫く男性ホルモンを増やす注射を打って。
半年間その生活を続けた後、男の体になる手術を受けた。

目が覚めた瞬間は勿論、目に見えている日常は何も変わらない。暫くは傷があるから大人しくしていなきゃいけないから、確認もなかなか出来なかった。
ホルモンの薬、手術とその変化を増幅、固定させる魔術の点滴をずっと受けていた。

入院していた1週間、俺の体はみるみるうちに所謂男として確立された。
身長も伸びたし、手は前より骨張った、体も筋肉質になった。

「おっほ♡やば、本物!?」

下半身も…勿論、見た瞬間1番興奮した。
今まで男の下半身を見たって何にも思わなかったし、見たくねーとすら思ってたのに。
自分に生えてたソレを見た瞬間、愛で回してやろうかと思った。
絶対やんねぇけど、いや…ある意味そのうちやるけど。

日常に戻って最初は変化に戸惑ったり、今までと違うから困ることもあったけど…
日に日に、この体が心地よくて馴染んでいく感じがした。

この体で莉々夢に会ったら怖がるかな、もう俺とは会ってくれないだろうか。

もし、ダメだったら諦めるしかない…無理強いは出来ない、仕事を死ぬ程やって俺の初恋を忘れよう。


そして、成人の日にお互いに休みを取って俺の部屋で飲み会をする事になった。
俺の部屋に莉々夢がくる、あぁ男になってから初めてだ…大丈夫か?俺襲わず耐えれるのか?
そんな不安がありながら、揚げ物とかおつまみになりそうな食べ物と色んな酒を用意して待つ。

ピーンポーン

鳴ったインターホンにビクゥッ!と体が跳ねた。

病院に走って行った時くらい、緊張する。
ドアノブに伸びる手が震える。

キィィ…ィ…

まるでホラーゲームのように恐る恐る扉を開いた。

「蒔生、久しぶり!」

2年弱ぶりに会う莉々夢、桃色の長い髪は軽めに巻かれていて後ろに結ばれた髪は自らの髪でリボンの形に結んでいた。
ちょっと大人っぽさはあるけど、やっぱお父さんによく似て童顔で…可愛い。おっぱいも、久しぶりに見ると相変わらずでっっかぁ…、と言うかなんか莉々夢小さいな?

「蒔生、なんだか大っきくなった?かっこいい感じになったね」

クスクスと笑う莉々夢を見つめながら、固唾を飲み込んで唇をひと噛みしてから唇を開く

「あのさ、ずっと言えなくてごめん…俺、体は女だったけど男だったんだ。だから、体も男になる手術を受けた…怖かったらごめん」
「そうだったの…?ふふっ…どうして怖いの?蒔生は蒔生なのに、平気だよ」

いつもより長く、手を伸ばして俺の頬に触れて笑う。
さらりと平然と、平気、と言ってくれるのは…元は女だって、知ってるから?莉々夢にとって、俺はずっと女友達で、その延長で…逆に元女だと都合が良いから?
他の男なら怖かった筈だ、でもあまりに簡単に受け入れてくれた事が、安心した分…男だと思ってもらえてないように感じてしまう。

そんな猜疑心は一先ず押し殺して、いつも通り座って飯を食べたり、初めての色んな酒を飲んであーだこーだ感想会をして、自然と会えなかった日々の話が始まる。

「街直属の支援員の試験に受かったら、家庭教師もしながら…子供達にもご家庭にも色んな支援を提案してあげられるようになりたいの。制度とか支援って沢山あって、知らない事もあると思うから…」
「すげーな、なんか立派って感じだなぁ…俺はもうずーーっと服作ってる、でも最っ高」
「ふふ、良かった!服作ってないと逆に心配になっちゃうよ」

色んな酒を飲んで色んな話をして、お互いに酔ってきて…染まった頬とぼんやりした頭の中、お互いに一瞬目が合う度にそっと逸らした。

少しして酔いが回って無防備に横になって眠る莉々夢を見つめる。
寝返るたびに、ゆさっゆさっと布が音を立てて…そりゃ当たり前に気になる……、そっと近付いて何もしてなくても強調されているような膨らんだ胸元に手を伸ばして…。

結局勇気が出なくて指一本触れずに元の場所に戻って横になる。


あーー、ヘタレ……ばか………

脳内で自分を何度も叩いて、引っ込めた手を後悔して、そうしたらいつの間にか眠っていた。

体の上が重くて熱い。
そんで、妙に腹辺りがスースーして……

「っ!」
「…」

体をガクッと跳ねらせて目が覚めると、目の前に…俺の体の上に莉々夢が乗っていた。俺が目が覚めてもとろん、とした瞳で俺を見つめながらカチャカチャとぶつかって鳴る金属の音で俺のズボンを脱がせていくのが分かる

「ま、待っ…!?莉々夢!?」
「……蒔生…私、私ね…?淫魔の子で…屋上に飛び出した日に…淫魔のお母さんに寄生されているの…♡ずっと、ずぅっと…忙しくて、私…気付いて無かった…蒔生…♡すごくえっち、したい…♡助けて…蒔生♡蒔生としたいの♡」

莉々夢は全てから解放された、莉々夢を縛るものは何もない。
俺はそう思っていたけど、そうじゃ無かった。
は、初めての助けてが…これ!!??
俺が答えるよりも先にズボンを脱がして、下着にまで手をかけたのを察しては慌てて手を掴み制止する。


「ちょ、ちょっと…まだ俺ら付き合ってないし!?」
「…んぅ?…蒔生、…えっち、いや?♡」
「〜〜〜っ」

やべぇ、まだちゃんと付き合ってねぇのに、これ以上は…これ以上は…!!!

:
:
:

「っ、ぅぐ…」
「………」

朝日に目を覚まして、腕に感じる柔らかい温もりに視線を向ければ裸の莉々夢の…

「っうぇ!?」
「っん…、蒔生…おはよぉ」

俺が飛び起きると莉々夢を目を覚まして、俺が裸でも戸惑いもせずに微笑んで挨拶をする。
と言う事は、少なくとも酔ってて記憶がない訳では、ない……。
眠気が覚めると共に夜中の光景がどんどん蘇ってきては顔を赤く染めていく。

「…お、俺ら付き合ってないのに、ごめん!!まじで…」
「…?、私は気にしてないよ?…蒔生は、嫌だった?」
「ゃ、嫌では、ない…けど…」
「…私ね、淫魔のせいで…えっちが我慢出来なくなっちゃう事があるみたい…。今までは1人で頑張って耐えてたけど…知らない人にまでこんな事しちゃったら、どうしよう…」

不安そうに俺を見つめる莉々夢、本当は俺が恋人としてそばにいてやれたら……でも俺の事、本当は女の延長としてしか見てないからこんな事出来たんじゃないかって…。

やっぱり、踏ん切りはつかない。

「淫魔だから絶対に蒔生とだけ、とは約束出来ないかもしれない…でも…なるべく…蒔生とが良いの…。ダメ…?」

こんなん殺し文句だろ…

「……〜っ…じゃ、じゃあ…なるべく一緒にいられるように…一緒に住んじまう?」
「…!…うんっ♡」

これまでない程の、純粋で満開の笑顔の莉々夢。

こうして俺たちはこの煮え切らない関係のまま、同棲を始めた。

END

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