対人戦闘訓練・轟VS音羽


それでは、第2戦目──スタートだ!
オールマイトの戦闘開始の声に爆豪は、彼に言わせるならクソみたいな気分でモニターを見上げた。開幕からコソコソと侵入するでもなく、ゆったりとビルに歩み寄った轟が手でビルに触れると一瞬でビルが氷に覆われ凍結する。
核兵器にもダメージを与えず、敵の動きも封じて弱体化、状況に合わせた最適の行動──そしてそれをビルごとやってのける個性そのものの練度の高さ。爆豪は力の差を否が応でも感じずにはいらず、呆然とモニターを見上げていた。
モニターには尾白と葉隠が動けなくなってもがいているのが見えるが、殺那だけが死角に潜んでいるのか状況が分からない。
凍らせたビルの内部へとペアの障子を外で待たせて轟は一人入っていく。細い通路を轟が曲がった瞬間だった。個性を使い一瞬で轟の目の前に現れた殺那が20cm近くある体格差をものともせず轟を蹴り飛ばした。

「うっわ!!音羽が轟を蹴り飛ばした!」
「殺那ちゃん凍ってなかったのね」





脳を揺らすつもりで蹴ったが咄嗟の判断でズラされた。最低限の近距離の受け方は学んでいるらしい。起き上がった轟が殺那を睨む。

「いってーな…、お前なんで凍ってない?」
「あんなたかがぶっぱでやられると思ってるの?心外なんだけど」

爆豪といい轟といい、人のことを舐めすぎではないだろうか。
轟が一人で入ってくるのは最初から分かっていた。まさかビルごと凍らせて葉隠と尾白を行動にしてくるのは予想外だったが。だがしかし、彼は──。

「私たちのこと完全に下に見てたでしょ?
1人でも十分だと思ったんでしょ?」
「………」
「だからこんな大雑把な攻め方なんでしょ?」

言い終わる前に瞬間移動をし、顔面を蹴りで狙う。

「くそ!」
「最低限は防げるっぽいけど、やっぱり──轟くん、近距離苦手でしょ?」





「音羽格闘めちゃくちゃ強え!推薦入学者をしかも男を圧倒してる!体格差だってあんのに……」
「轟さんの得意分野の範囲攻撃に持ち込ませないように、個性を上手く使って距離を詰めていますわね」
「この距離で使えば自分も凍ってしまうからな」
「確かに轟は戦いにくそうだよな」

切島、八百万、常闇、砂藤が感心したように言う。
爆豪は生まれて初めて感じる圧倒的敗北感に、言葉もなくモニターを見つめていた。入試の時、自分を一瞬出し抜いただけの、取るに足らないモブのはずだったのだ。その女は自分よりも強いと感じてしまった轟を、たった一人でそれもほとんど体術のみで圧倒している。
ビルを凍らせていたあの感じだと、少しでも巻き込まれない距離ができれば、轟は氷結で一旦距離を取りにくるだろう。その一瞬すらさせない距離の詰め方、触れて凍らそうにも個性の瞬間移動でけむに巻かれるように捉えられない。
モニター越しのハイレベルな