エッセイ *恋愛
鉛筆とあの子
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『あいまい』


あれは、夢やったんかな。どうやったんかな……。

思い出そうとする度記憶があやふやで、断片的に思い出せたとしてもそれすら溶けてなくなってく。

それでも、ただただ恥ずかしくて。本当に、夢みたいで。
だから、これは私が頭の中で作った妄想を、現実だとすり替えてんのかなと思ったりもして。

あの子も……、覚えてんのかな。でも、今更ずっと聞けやしない。
私ら、中々会うこともないけど、友達やもんね。そんで、お互い結婚やってしてるしさ。


夜電話した後勢いで会社の休みを取って、飛行機のチケットを取って、東北まで行ったのは間違いない。
私はあの時変になってたのも、間違いない。

寒い季節だったと思うけど、いつだったのかも忘れてしまった。


やっぱり、あれは都合のいい夢やったんかな。別に夢だっていいよ。

長かったあの黒髪を掬って、私が無邪気に戯れていたことなんて。



そういえば久々にあの子と電話した後、暫くして夢に出てきたよ。

私は知らないふわふわした女の子(夢の中ではどうやらその子は私のことを好きらしい雰囲気だった)に上から抱きついて、女子特有の甘い香りと程よい柔らかさを堪能してたんだ。

その横に居たのがあの子で、私は見せつけるかのようにその子と恥ずかしいくらいに密着していた。


「最近のお気に入りはその子かい?」


そう言われて、ちょっと私は考えた。


「……うん。だって、初音と会うの久し振りだし、(初音にこんなことするのは)恥ずかしいもん」

「ほんま」


何ともない風に、あの子は前に向き直ってそのまま隣に居た。

ただそれだけだったけど、目が覚めても私はふかふかした女の子の柔らかさと香りをまだ覚えていた。


所詮夢だし大した意味なんてないけどね。

だから、きっと私が覚えていた夢みたいな不確かなことなんて、大した意味なんてないのかもしれない。


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