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魔法学園:ジョット
2020/08/03(Mon) 創作小説:現代アクション
Side:ジョット
憧れの日本に移住し、国立聖來魔法学園に編入したときから、ある話題を度々耳にしていた。
花咲有珠(はなさき ありす)。
筆記と体術の実技は図抜けているが、魔法の実技に参加しない問題児。試験の時も、魔法学の実技では放課後に居残って受けているそうだが、真相は不明。
体術の試験に関しても、在籍するU組限定で出席するが、T組の生徒との対戦は欠席。
確かに問題児だ。魔法学園に入学しているのに、やる気があるのだろうか。
そう思っていた。――あの時までは。
「一つ、訊いてもいいか? どうして今まで手を抜いていたんだ」
中等部最後の学年末試験。その武術で初めて対戦することになった。
普段からヘアリングで長い黒髪を後ろで一つにまとめている髪型に、表情すら隠す分厚い眼鏡といった、いかにも地味な出で立ち。
だが、彼女は武闘派の風紀委員会、そして俺と同じく生徒会に所属している友人・夏目紀(なつめ きの)に勝利した。
素早くも鋭い攻撃には目を瞠る。
何故そんなに強いのに真面目に出席しなかったのか。
気になって問いかけると、彼女は怪訝な顔で言ったのだ。
「何で言わないといけないの? 親しくもない他人なのに」
衝撃だった。今まで女子にそんなことを言われたことが無かったからだ。
「……俺が誰だか知らないのか?」
「生徒会長でしょう? それが何?」
あっさりした態度で返されて戸惑う俺に、彼女は言い切った。
「生徒会長でも赤の他人でしょう? 他人にプライバシーを侵害されるなんて嫌に決まってるし」
俺は、自分は整った顔立ちをしているし、カリスマ性もあると自負していた。
だが、彼女はそんな俺を一蹴した。本当に赤の他人として、媚び諂いのない自然体な在り方で。
――結局、その試験で彼女に負けてしまった。
あの歴代最高で最強の生徒会長・花咲魁(はなさき かい)の妹なら当然かもしれないが。
次に試験で対戦する日が来たら、今度こそ勝とう。
初めて対面したのはその時が初めてだというのに、その日が来るのが楽しみになったのだった。
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憧れの日本に移住し、国立聖來魔法学園に編入したときから、ある話題を度々耳にしていた。
花咲有珠(はなさき ありす)。
筆記と体術の実技は図抜けているが、魔法の実技に参加しない問題児。試験の時も、魔法学の実技では放課後に居残って受けているそうだが、真相は不明。
体術の試験に関しても、在籍するU組限定で出席するが、T組の生徒との対戦は欠席。
確かに問題児だ。魔法学園に入学しているのに、やる気があるのだろうか。
そう思っていた。――あの時までは。
「一つ、訊いてもいいか? どうして今まで手を抜いていたんだ」
中等部最後の学年末試験。その武術で初めて対戦することになった。
普段からヘアリングで長い黒髪を後ろで一つにまとめている髪型に、表情すら隠す分厚い眼鏡といった、いかにも地味な出で立ち。
だが、彼女は武闘派の風紀委員会、そして俺と同じく生徒会に所属している友人・夏目紀(なつめ きの)に勝利した。
素早くも鋭い攻撃には目を瞠る。
何故そんなに強いのに真面目に出席しなかったのか。
気になって問いかけると、彼女は怪訝な顔で言ったのだ。
「何で言わないといけないの? 親しくもない他人なのに」
衝撃だった。今まで女子にそんなことを言われたことが無かったからだ。
「……俺が誰だか知らないのか?」
「生徒会長でしょう? それが何?」
あっさりした態度で返されて戸惑う俺に、彼女は言い切った。
「生徒会長でも赤の他人でしょう? 他人にプライバシーを侵害されるなんて嫌に決まってるし」
俺は、自分は整った顔立ちをしているし、カリスマ性もあると自負していた。
だが、彼女はそんな俺を一蹴した。本当に赤の他人として、媚び諂いのない自然体な在り方で。
――結局、その試験で彼女に負けてしまった。
あの歴代最高で最強の生徒会長・花咲魁(はなさき かい)の妹なら当然かもしれないが。
次に試験で対戦する日が来たら、今度こそ勝とう。
初めて対面したのはその時が初めてだというのに、その日が来るのが楽しみになったのだった。
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