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魔法学園:凪
2020/09/20(Sun) 創作小説:現代アクション
Side:凪

 私――香崎凪が、まだ六歳だった頃。

 街中にある公園で、お母様と、そのお友達の女性達が楽しく話していた時。
 一人のお子さんが私と遊びたがって、それにつられて他のお子さんが集まって。
 無性に怖くなって、居心地の悪さから隙を見て、公園から抜け出した。

 そんな時に、魔物に襲われた。
 一匹だけではなく、たくさん。

 群れの中で、一匹の魔物が私に狙いを定めた。

 幼いながら悟った。
 ああ、私はここで死ぬのだと。

 飛びかかってくる魔物。
 恐怖で立ち竦む私は、ぎゅっと目を閉じて身を固める。

 でも、痛みは一向に感じなかった。代わりに、温かくて優しい匂いに包まれた。

 そっと目を開くと、とても美しい女の子の顔が近くにあった。

 絹のような光沢感が綺麗なプラチナブロンド。
 大きな瞳は紫色で、凛と前を見据えていた。

「大丈夫?」

 彼女は私を見下ろして、心配そうに眉を下げて訊ねた。
 声もなく頷けば、彼女はほっと安心した顔で頬を緩めた。

「無事でよかった」

 私と同い年ぐらいと思われるのに、妙に大人びていた。
 でも、心が温かくなる喜びを込めた声に、目の奥が熱くなって涙が溢れた。
 そんな私にそっと微笑み、女の子は眼前を見据えた。
 彼女の静かな視線の強さに、雷に打たれたような衝撃が走る。

『〈結合(ユニオン)〉――【大紅蓮地獄(マハーパドマ)】』

 一瞬だった。肌を刺す霧が放たれ、それに触れた魔物の群れは一瞬で凍り付いた。
 こんな大規模な魔法は聞いたことも見たこともない。
 辺り一面を白く染め上げた女の子は、指を鳴らして魔物を粉々に砕き、真っ白な世界を元の風景に戻した。
 圧倒的で、圧巻だった。
 最後まで前を見据えて魔物に立ち向かう姿勢も、私を救ってくれた時の優しさも。

 あの日を境に、私は彼女――花咲有珠さんと仲良くなり、交流を重ねた。
 彼女の幼馴染、東雲恭佳さんとも親しくなって、いつしか私も幼馴染の関係になった。
 恭佳さんも、有珠さんのおかげで使えなかった属性が開花して、親と比べられる苦痛がなくなったと教えてくれた。
 そのこともあり、最初は「有珠様」と呼びたかったのですが、有珠さんに必死に止められた。
 少し不満ですが……有珠さんの嫌がることはしたくありませんし……。

「有珠さん」
「なぁに?」

 呼びかければ、私に優しくて温かな笑顔を見せてくれる。
 その笑顔に、どれだけ心が癒されるのか、有珠さんはきっと知らないでしょう。

 私を救ってくれた女神様。
 今度は私が、彼女を支える番です。
 ですから――

「これからもよろしくお願いします、私の女神様」

 ずっと傍にいさせてくださいね?


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