好きな本を読んで、好きな音楽を聴いて、好きなジャンルの小説を執筆する。
人生に価値を見出せなくなった私の日常は、ひどく
それでもささやかな幸せを糧に、生産性の無い無意味な生活を繰り返す。
もし、今生の記憶が来世へ引き継がれて、新しい人生を送れるのだとしたら。
新しい人生で幸せになりたい。
私を愛してくれる家族が欲しい。
我儘だと解っていても、願わずにはいられない。
――もしも叶うのなら、幸福で自由な人生を手に入れたい――
そんな願望を脳裏に浮かべ、私は二十代という若さで一生を終えた。
頭が痛い。体中が重い。呼吸がままならなくて辛い。
どうしてこんなに苦しいのか。頭が働かなくてぼんやりする。
……あれ? 私、どうして肉体の感覚を知覚しているの?
確か、自転車に乗っている時に事故に遭って……あれ? 自転車って何?
頭の中がぐちゃぐちゃする。気持ち悪くて吐きそうだ。
体が言うことを聞かなくて、寝返りすらできない。
ズキズキと痛む頭を必死に働かせて、思い出す。
私の名前。
私の家族。
私の母国。
そうだ。私は、日本人女性として生きていた精神障害者だった。
苦痛ばかりの人生が唐突に終わった――――はずだ。
自覚した途端、頭痛が引いた。吐き気も治まり、呼吸も楽になる。
今、いろいろ考えるより回復に専念しよう。
多少の疲労感を滲ませて、私は再び意識を手放した。