これまでの日常
地球と
人類が住まう人間界と、精霊が住まう精霊界。
人間界は創造神マカリオス、精霊界は女神タイタニアが秩序を守護している。
人間界ではそう言い伝えられているが、実際は三つ=B
精霊達から『混沌界』と呼ばれる、魔神ネルガルが生み出した異次元。
人間界で堕天精霊≠ノ
しかし、混沌界でなら多少は生き
魔法≠ェ存在する異世界に転生して、もうすぐ十年。
私――チハル・サカキは、異世界の人間界の中で最も有名な人族の国、エレフセリア聖王国で公爵貴族として誕生した。
実の父親に
二年後の春に鬼神という最上位精霊が家族に加わり、
「エンジュ! また無断で
……訂正。少し賑やかすぎるかも。
台所で夕飯の支度をしていると、四本の狐の尻尾を持つ青年の怒鳴り声が聞こえた。
前世で妖怪として生きていた、現在最上位の精霊となった
天狐とは、千年以上も生きた狐の妖怪が神格の力を持った
彼は月見酒が趣味。その時は米≠原料とした日本酒を
異世界にも米はあるけれど、それは東の島国でなければ手に入らない。だからヒイラギはわざわざ調達しに行き、我が家≠アと【幻想郷】の
まさか自家栽培するほど好きだとは思わなかったから、外界≠フ天気を連結させて、雨が降るようにしている。
収穫の時期は巻き込まれるけど、私も白米を食べられると思えば協力できた。
こんな感じで、ヒイラギはお酒の中で純米大吟醸酒をこよなく愛している。
でも、それはヒイラギだけではないみたい。
この世界で家族に加わった鬼神・エンジュも。
「
「だからといって大吟醸はやめろ!
「我も米の酒が好みなのだよ。
「だが断る!」
この会話、二週間に一回は聞いている。
本当に
「あらあら、あの二人も
穏やかだけど、内心では
「アズサ……あれが二人のじゃれあいだから……」
「限度があります」
漆黒の瞳を細めて笑う、プラチナブロンドが美しい女性。外見は二十だけど、彼女も長い時間を生きている元妖怪。
基本的に穏やかな気性で優しいが、怒ると誰よりも怖い。我が家のお母さんのようで、お姉さんの立場にいる彼女を怒らせて平気な人はいないはず。実際、初対面で激オコ
「ほどほどにね。特にヒイラギは苦労して作っているんだし。エンジュは何かしら働いたら、ご褒美でひと
エンジュは武器を作るのが得意で、趣味で作成された武器はヒイラギが外界≠ナ売っている。
成果が良ければ好きなお酒をご褒美であげているのだが、あっという間に飲み干してしまう。ひと瓶だけでは足りないようで、ヒイラギも頭を
「これだと田圃を
これ以上田圃を増やしたら収穫の時が大変だ。植える時はヒイラギが【神通力】で簡単に終わらせているけど、
「さて、夕飯もできたことですし、
「うん」
アズサが味噌汁を木製のお
「ご飯だよー」
そんな感じで、本日も楽しく夕飯の時間を過ごした。
「あと少しでチハルの誕生日ですね」
今日の食事に満足して
アズサの発言に、エンジュが
「……そうか。もう一年が経ったのか」
「お前がチハルに負けて家族になった日から、一年と一ヶ月だ」
「やめてくれ。黒歴史だから」
ヒイラギの余計な一言に顔をしかめるエンジュ。
彼にとって黒歴史だけど、私にとってはいい思い出だ。だって、私を理解して受け入れてくれるヒトが増えた日だから。
「今年で十歳。そろそろ外界で働けるな」
ヒイラギの言う通り、誕生日が過ぎれば働きに出られる。
エレフセリア聖王国では、働く年齢が決まっている。
一般的な平民の学園は六歳になる年に入学し、四年間も一般的な
初等部では学費は無料だからいいけど、中等部からはお金がかかる。
だから初等部が終われば見習いの職業に就く平民の子供が多い。
彼らの中には、冒険者になる者もいる。
冒険者は戦闘能力があれば誰でも外の仕事に行けるが、戦闘能力が低いと街中の雑用仕事を引き受ける。お小遣い程度の報酬だが、未熟な子供にはぴったりの仕事だ。
私も子供の部類に入るけど、戦闘能力は
でも、きっと
「そういえば、働く前に住民登録しないといけないよね」
「……ああ。そういえば人間は【
一番重要なことを思い出して話題に出せば、エンジュが人間社会の決まりを思い出す。
正式名称は『Magical Identification Card』。通称MIC。
古代遺跡から発見された古代の人工遺物――アーティファクトで、この世界での身分証明として一般的に
一般人は見習いでも働ける十歳の誕生日に発行されるが、貴族は国立学園に入学する年齢に作ることを義務付けられている。
どうやって発行するのか不明だが、なんでも個人情報が
これは住民登録に必要なものだし、村以外で、小規模な町に入るときでも必要になる。
「うぅー……胃が痛い……」
「そこまで緊張するのか」
呆れ顔のヒイラギだけど、私はじろりと
「だって個人情報で
「……ああ」
重大な現実に、三人が揃って遠い目になった。
通常、契約できる精霊は一体までが常識だ。けれど、私は【式神契約】で三人……否、三体の精霊と契約している。確実に異常で、知られると
初対面のエンジュだって、とある精霊から私の存在を聞いて、私を
名前:チハル・サカキ
年齢:9
性別:女
種族:人族
職業:□□□
属性:無[空・念・霊]
体力:B/12250
魔力:EX/15664050
神力:S/5810050
状態:良好
恩恵:創造神の祝福・女神の祝福・異界の神の祝福
権能:言語理解・
才能:技能獲得・
技能:戦闘[身体強化・格闘術・剣術・棒術・槍術・薙刀術・弓術・
魔法[呪文破棄・鑑定・解析・空間・念能・霊能・結界・付与・創造]
生活[料理・
技術[解体・隠密・
耐性[火傷・氷結・毒・麻痺・石化・混乱・恐怖・呪い・魔障]
能力:
契約:天狐[上位精霊:神位]・鵺[上位精霊:天位]・鬼神[上位精霊:神位]