訓練
ガキンッ、鉄同士が交わる
神社の
そこで私は、ヒイラギと戦っていた。
ヒイラギの得物は【
対する私の得物は、
天皇が正統な皇位継承の証である象徴として、即位の際に三種の神器を身につけるらしいが、天皇を
地球の故郷では有名な神剣・天叢雲剣が、
答えは簡単。私の能力【神宝召喚】によって作り出されたからだ。
【神宝召喚】は、神話や史実に登場する武器を現実に
ただし、普通の武器は作れない。あくまで歴史に刻まれた武具のみ。
天叢雲剣のような武器だけではない。防具の他に神話に登場する神具も含まれる。
を
これまで挙げた三つの武器や装具の効果を説明するなら……
天叢雲剣は、所有者の能力値を底上げして、戦闘能力を
八咫鏡は、飛び道具での攻撃を跳ね返すだけではなく、魔法を吸収して打ち返せる。
八尺瓊勾玉は、単純に魔力障壁より頑丈な結界。所有者の思いによって効果は変わる。
前世から
そんなこんなで、二年目の春。あと一ヶ月で九歳の誕生日を
「大分強くなったな」
「二年も経てばそりゃあね」
剣を振るいながら会話するヒイラギと私。体力もかなり付いたし、かれこれ一時間も戦っているけど息切れは少ない方だ。
でも、そろそろ疲労感が出始める。
「――今日はここまでだ」
ヒイラギが振り回していた大鎌を消す。
【神武天鎌】は鎖鎌のように扱える。しかもヒイラギの意思によって鎖の刺が私に向かってくるから、背後にも気を付けないといけない。
ヒイラギとの心理戦は疲れる。強くなれたから感謝しているけど。
「ところでチハル。欲しいものは決まったか?」
先程も言ったが、あと少しで誕生日。去年と一昨年も二人からプレゼントを貰った。
けど、今年は何がいいのか判らない。
空笑いが浮かんでしまうと、ヒイラギは
「まだか」
「だって外≠ノ出ていないから、何が好きなのか自分でも判らないの」
「……それは、仕方ないな」
最後に外界に出たのは二年前。私が
エレフセリア聖王国の王都コルテスから出て、とある山奥から我が家≠ナある【幻想郷】に入った。それ以降、私は外界に出ていない。
食事はヒイラギとアズサが狩ってきた魔獣を調理している。いろいろ衝撃を受けたけれど、慣れって
衣服は、前世から【
必要なものは、私がライサンダー家から持ち出した物をアズサが売って
近くの町といっても大都市らしいのだけれど。
「……あ。じゃあ、武器の材料が欲しい」
「武器ではなく?」
「うん。私が作りたいのは拳銃。そろそろ飛び道具も欲しかったから」
この世界に銃火器というものは存在しない。飛び道具といえば弓矢や魔法くらいだ。
【神宝召喚】で飛び道具を
「でも、拳銃を外界の職人に作ってもらうと量産されて、戦争が起きる可能性がある。だから私自身で作ろうと思って」
前世の記憶通りに作れるか不安だけれど、やってみなくては始まらない。
「なるほど。ならば
一瞬、何を言われたのか解らなくて「え?」と顔を上げる。
「俺達では必要な素材は判らん。
「……いいの?」
「今のチハルなら危なげなく魔獣と渡り合えるだろう」
今まで外界に出なかったのは、私が敵と戦える強さを身に付けるため。
ヒイラギの判断で合格点を貰ったのなら、今後からは外に出てもいいということ。
「じゃあ、準備が整う三日後に出発ってことで!」
「野営の道具は一通り揃っているから、明日でもいいぞ」
「本当? 楽しみっ!」
満面の笑顔で喜ぶと、ヒイラギが微笑ましそうに
「前世と違い、明るくなったな」
「……! ……うん。今、とても楽しいから。ヒイラギ達のおかげだよ。ありがとう」
改めてお礼を言うと、ヒイラギは小さく笑った。
「礼は不要だ」